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第28話 ダブルデート

「ちょっと待った陽ちゃん、影分身は禁術だから使っちゃダメでしょ」

「いや、影分身じゃねーよ。前に話しただろ? そっくりないとこがいるって」

「ああ、確かえっと……ギ◯ゾンビ君だっけ?」

「どう聞いたらそういう間違いになるのっ!? 俺は四文夜斗っ!」

「あ、ちょっと違ったね」

「全然、違うわっ! いてっ」


 情美に軽く蹴られる。

 なんか知らんけど、不機嫌そうにしていた。


「そっちの人は四文君の彼女?」

「い、いや、彼女じゃないよ」

「そうなの? 仲良さそうだけど?」

「小学校からの友達だから仲は良いよ」

「ごにょごにょ」

「田中角栄と中曽根康弘くらい仲良しだよ。わかりづらいっ! なにその例えっ! てか仲良いんだかなんだか俺にもわかんねーよっ!」

「あははっ、おもしろいねー。角栄康弘ギャグ」

「なにその角栄康弘ギャグってっ? 流行ってんのっ? 昭和かここはっ?」

「わたしは日出天陽ひのであまひ。陽ちゃんから聞いてるよ。四文君の友達で女の子ってことは、姫路情美さんでしょ?」

「ごにょごにょ」

「破壊の衝動、魔界からの使者、デーモン姫路ですって、デスメタルかお前は」

「あははっ、よろしく。って、なんか夜斗君のうしろに隠れちゃってるね」


 情美は俺の背後に隠れて日出さんを見ていた。


「うん?」


 日出さんが顔を覗くと、情美は反対方向へ顔を出す。

 日出さんがそっちを覗くと、今度は完全に隠れる。


 覗こうとする日出さん。

 隠れる情美。


 情美が腰を落とすのに合わせて俺が立ち上がり、情美が左右へ動くのに合わせて俺はその反対へ動く。その動きはどんどんとぐるぐる丸く速くなっていき、


「うわああっ!? なんかエ〇ザイルのぐるぐる回る動きみたいになってるぞお前らっ!」

「えっ? うわっ!? なにやらせてんだお前はっ!?」

「あ、つい」

「ついで俺をボケに巻き込むなっ!」

「あんまりおもしろくなかったけどね」

「俺がスベったみたいに言うなっ!」

「あははっ。陽ちゃんが言ってた通りだね」

「言ってた通りって……」


 陽介は一体、俺たちのことをなんて言っていたのだろう?


「ねーよかったらダブルデートしない? ね? いいでしょ?」

「いや、だから俺たちは付き合ってるわけじゃないから。なあ?」

「えっ? あ……うん」


 と、なぜか情美は力無く返事をした。


「夜斗、お前さ……」

「なに?」

「……いや、なんでも無い。ああお前、無堂さんと仲良くなるために光属性とかなんとかが必要なんだろ? だったらデートがどんなもんか知るのもいいんじゃね? 陽キャと言ったらデートだろ?」

「それは……そうかも」

「なら姫路と仮のデートしてみろよ。そしたら陽キャに近づくかもしれねーよ?」

「いやでも……」


 見ると、情美は困ったように視線を逸らしていた。


「まあとりあえず入ろうぜ」

「あ、うん」


 陽介を先頭に、俺たちは入場ゲートから遊園地の中へと入る。


「さあてまずはどこから行くかなー? 天陽はどこ行きたい?」

「陽ちゃんが行きたいところでいいよー。ギロチン広場とか。屠殺場とか」

「そんな悍ましいアトラクションはねーよっ」


 なんて陽キャカップルは楽しそうに行き先を話す。

 俺と情美はなんとなくパンフレットを開いて2人で眺めていた。


「この辺に罠を仕掛けて待伏せしようか」

「モ〇ハンじゃねーよ。狩りをしようとするな。狩りを」

「じゃあわたしはここへなにしに来たんだ……」

「アトラクションを楽しみに来たのっ!」

「なるほど。そういう楽しみ方もあるんだね」

「遊園地にそれ以外の楽しみ方は無いだろ……」

「ネズミの中身を暴くって楽しみ方もあるよ」

「やめろやめろっ。子供の夢を壊すなっ」

「じゃあアヒルにするわ」

「一緒っ! てか真面目にお前どこ行きたい?」

「あんまり知らないからなんとも言えない」

「俺もよく知らないんだよなぁ」


 小さいとき親に連れて来てもらったことはあるけど、あまり覚えてなかった。


「お前らなんか行きたいアトラクションあるの?」

「いや、俺も情美もあんまりここに詳しくないから迷っちゃって」

「俺たちはもう2人で何度も来てるからな。一緒に行こーぜ」

「あ、うん。そうだな」

「やっぱりダブルデートになったねー」

「いや、そういうわけじゃ……」

「いーじゃんいーじゃん。光属性だっけ? それゲットのために四文君と姫路さんで仮のデートしたらいいじゃん。きっと楽しいからさー」

「う、うん」


 なんだか押し切られるようにそうなってしまう。

 情美はなにも言わず、なんだかもじもじしている様子だった。


「それじゃ行くか。うん? お前ら仮でもデートなんだから手くらい繋げよな」

「て、手を繋げって……」

「ほらこうだよ」


 と、陽介は日出さんと指を絡めて手を繋ぐ。

 所謂、恋人繋ぎである。


「い、いやそれは……ちょっと、なあ?」

「……夜斗がいいならいいけど」

「そ、そっか? じゃあ……」


 差し出された情美の手を恋人繋ぎで掴む。

 柔らかく温かい手の感触に、鼓動が少し早くなった

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