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第27話 2人で遊園地へ

「遊園地のチケット?」


 次の日、学校へ行くと、情美がネズミで有名な遊園地のチケットを見せてきた。


「草野球の試合で活躍した褒美に2人で行って来いってお父さんが」

「これ1日遊び回れるなんとかパスポートってやつじゃん」


 買えば1枚1万円くらいはするんじゃないだろうか?

 ずいぶんといいものをもらってしまった。


「これ……あげるからさ、無堂さんを誘って行って来なよ」

「えっ? いや、俺とお前で行って来いってお父さんからもらったんだろ? だったら俺たちで行こうよ」

「けど……」

「無堂さんと一緒じゃ緊張して楽しめないだろうしさ。な?」

「……うん」


 ということで、今度の日曜日に俺と情美でネズミの遊園地へ行くこととなった。


 そしてあっという間に日にちは経って日曜日。

 俺と情美は電車に乗って遊園地へ向かった。


「さあて、それじゃあいっぱいシジミを獲るぞー」

「いや、潮干狩りに行くんじゃねーよ」

「あ、違ったネズミ狩りだった」

「狩るな狩るな。狩っちゃダメなネズミだから」

「うー電車に人が多くて吐きそう」

「お前ここで吐くなよ?」

「どこでならいい?」

「いや、どこでならって……」

「ネズミに吐きかけていい?」

「お前、あのネズミになんか恨みでもあるんか……?」

「しょうがない。酔い止めを飲むかな」

「酔い止め持って来たのか?」

「うん」


 そう言って情美が鞄から取り出したのは食べるラー油だった。


 えっ? なに? どういうこと?


 情美は食べるラー油の中身を豪快に口の中へ放り込むと、それをムシャムシャと咀嚼してゴクリと飲み込んだ。


「オッケー」

「なにがっ!?」

「なんか知らないけど、これ一気に食べると酔わなくなるの」

「どういう身体してんだお前は……」


 まあ身体能力とかいろいろデタラメな奴ではあるけど……。


 花の女子高生が朝の電車内で食べるラー油を一気食いとか、隣にいるこっちが恥ずかしかった。


「あー口ん中、食べるラー油でいっぱいだぁ。げっぷー」

「うわにんにく臭っ! 電車内でゲップすんなっ! てかお前、一応は女なんだから口臭とか気にしろよちょっとは」

「今だけ男ー」

「男子トイレに入るおばちゃんかっ!」

「あ、遊園地見えて来たよー」

「うん? ああほんとだ」


 これから行く遊園地が窓の外に見える。

 それを情美は楽しそうに眺めていた。


「やっとついたねー」

「ああ」


 電車を降りて遊園地の入り口へとやって来る。

 日曜日なのでカップルとか子連れの親子で人がわらわらだった。


「わー人がいっぱい。もう1個くらい食べるラー油を流し込んでおこうかな」

「いくつ持って来てんだよ……」

「鞄に3つと懐に2つ。腰にも2つ。あと足首にも1つ」

「特殊部隊の装備かっ!」

「いつでも食べられるラー油」

「んなもんいつでも食べられるようにいくつも持ち歩いてるのはお前だけだよっ!」

「食べるラー油を専門に研究してる大学教授の木下さんはわたしの倍は持ち歩いてるよ」

「誰だよそれっ!」

「自分のことを大学教授だと思い込んでいる近所の変な人」

「大学教授じゃなかったっ!」

「そんな大学教授いるわけないじゃん。ぷくくー」

「腹立つわこの女ー」

「まあふざけるのはこのくらいにして、中へ入ろうよ」

「うん。ふざけてたのお前だけどな」


 遊園地なんてひさしぶりだな。

 そう思いながら、情美とともに入場ゲートへと歩いて行く。と、


「お、なんだお前らも来てたのかよ」

「えっ? あっ」


 不意に声をかけられ、誰かと思って振り向くと、そこにいたのは陽介であった。


「おっす」

「なんだ陽介も来てたのか」

「ラーメン食べに来たの?」

「なんでここにラーメン食べに来んだよ。遊びに来たに決まってんだろ」

「ひとりで来たのか?」

「んなわけないだろ。彼女とだよ」


 日曜日に彼女とネズミの遊園地に来るとは、さすが陽キャだ。俺なんて口からにんにく臭を吐き出す、食べるラー油女を連れてるというのに。


「海野君の彼女っていつ刑期終えたの?」

「なんでムショ入りしてることになってんだよ。俺の彼女は真っ当な美少女なの。汚れのない太陽みたいに光り輝く存在なんだ」

「ハゲてるの?」

「ぶっ飛ばすぞ」


 なんてふざけた会話をしていると、そこへ女の子が小走りで駆けて来た。


「ごめーん陽ちゃん、トイレでバスフィッシングしてたら遅れちゃったー」

「なんか変なこと口走りながら美少女が走って来たーっ!」


 赤く明るいセミロングヘアーの綺麗な女の子。

 その子が側へ来て俺と陽介を交互に見た。

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