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第22話 無堂さんとカラオケへ

 放課後になり、陽介や無堂さんたちとカラオケへとやって来る。


「いえーいっ!」

「わーわーっ!」

「歌下手すぎーっ! あははっ!」


 カラオケは陽キャたちの歌で最高潮に盛り上がる。

 そんな中、俺と情美は部屋の端っこで縮こまり、なにを歌うか迷っていた。


「お前、なに歌える?」

「校歌と国歌、あとビートルズのイエスタデイ」

「なんで校歌国歌と来てビートルズのイエスタデイ? 英語苦手なのにそれ歌えるの謎過ぎるだろ?」

「ビートルズはキリストより人気だから」

「ジョン・レノンかお前は」

「ビートルズはエルビス・プレスリーと会って話したこともあるんだよ。たぶんマリ〇カートでもやって盛り上がったんだろうね」

「なんで偉大なロックスターが集まってマリ〇カートやってんだよ? なんかもっとあるだろ? 音楽のこととかさ」

「モーツァルトとかバッハのモノマネで盛り上がったかもしれないね」

「居酒屋に集まったおっさんかっ! ロックの話をしろっ!」

「エルビスにヘッドロックを食らったポール・マッカートニーがその痛みで思いついた歌がイエスタデイだったとか」

「嘘を吐くな嘘をっ! そういうロックじゃねーよっ! なんでビートルズとエルビスが会ってプロレスしてんのっ? 昭和の中学生かっ!」

「リンゴ・スターは夕方の再放送でやってたタッ〇を見たいからって先に帰ったよ」

「平成だったっ!」

「ジョージ・ハリスンはプロレスに参加しないでひとりでマリ〇カートやってたよ」

「いるいるそういう奴っ! みんながやってることに参加しないで、ゲームひとりでずーっとやってる奴いるーっ!」

「遊びなのに本気出しちゃったジョンの延髄切りを食らってマジギレしたエルビスの2人がガチの殴り合いを始めて、お母さんに怒られたとか」

「かっこ悪っ! 世界のロックスター2人ともお母さんに怒られててかっこ悪っ! いや、そんな話はどうだっていいんだよ。なに歌ったらいいかなぁ……」

「2人でなに話してるの?」


 と、いきなり隣へ無堂さんが座って声をかけてくる。


「む、無堂さん。えっと……」

「陽介君から聞いたよ。夜斗君はアニメ好きでよく見てるんだって」

「ま、まあ……うん」


 あいつ余計なことを……。


 陽気に歌っている陽介へ俺はチラリと視線を送った。


「わたしもアニメ見るよ。今期のアニメとかほとんど見てるし」

「そ、そうなの?」


 陽キャな無堂さんが意外である。


「夜斗君はなんのアニメ見てるの?」

「え、えっと……」


 思った以上に無堂さんはいろんなアニメを見ており、俺とも話が合った。まさか憧れの無堂さんとアニメの話で盛り上がれるとは思ってもいなかったことだ。


「あたしと夜斗君って、アニメの趣味が合うかもね」

「う、うん。そうだね」

「ねえ、あたしと一緒にこのアニメの歌を歌おうよ」

「えっ?」


 リモコンの画面には今期アニメのオープニング曲が表示されていた。


「ほらほら」

「わっと」


 無堂さんに手を引かれて俺は室内の小さなステージへ。

 その際、一瞬だけ見えた情美の表情は暗かった。


 ……緊張しながらなんとか歌い切り、俺は情美の隣へと戻って来る。


「ははっ、なんか結構、歌えたよ。無堂さんのおかげで」

「よかったね」

「お前もなにか歌って来たら?」

「わたしはいいよ。うん。夜斗が無堂さんと仲良くなれてよかった」

「大丈夫か? なんか浮かない顔してるけど? 具合悪いのか?」

「ううん。あ、いやその……ちょっと具合悪いかも。わたし帰るね」

「えっ? あ……」


 立ち上がった情美は他のみんなへ頭を下げ、部屋から出て行く。


「あれ? 姫路さんどうしたの?」

「なんか具合が悪いって。ごめん。俺、情美を送るから」


 そう言って俺も部屋を出た。


「情美っ」


 カラオケボックスを出た情美の背へ声をかける。


「夜斗? どうしたの?」

「送るよ。具合悪いんだろ?」

「ダメだよ。せっかく無堂さんともっと仲良くなれるかもしれないのに……」

「お前が具合悪いのを放って置いて俺だけそんなことしてられないだろ」

「夜斗……」


 振り返った情美の目尻には涙が浮かんでいた。

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