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第14話 情美の家へ行く

 一旦、家へ帰って情美の家で徹夜をするための準備をする。


 勉強道具と着替え、あとは歯磨きセットくらいでいいだろうか?

 まあ一晩だけだしこれでいいかと、俺はそれらの荷物をまとめた。


「夜斗、あんた、ちゃんと情美ちゃんのお父さんとお母さんにあいさつしときなさいよね」


 と、部屋に入って来た母さんが言う。


「言われなくてもあいさつくらいするよ。小さい子じゃないんだから」

「そうじゃなくて、将来はあんたの両親にもなるんだから、そういう意味も込めてちゃんとあいさつしなさいってこと」

「いやだから俺と情美はそういうんじゃないって。いつも言ってるだろ」


 違うって言ってるのに、母さんは俺と情美が恋人同士のようにいつも言ってくる。ただの友達だって言ってるのにだ。


「あんたね、あんたとあんなに仲良くしてくれる女の子なんて他にいないよ。情美ちゃんと結婚できなかったらあんた絶対後悔するから。自信あるよ。お母さん明日に食べる予定のおやつを賭けてもいいから」

「いや自信あるならもっと大きなもの賭けて」

「とにかく情美ちゃんとは仲良くしておきなさい。情美ちゃんが娘になってくれるなら、お母さん大歓迎だからね」


 ヤクザの娘だなんて知ったら、真逆のこと言いそうだな。

 実家のヤクザを嫌って叔父さんともほとんど会わないくらいだし。


「それじゃあ行ってくるよ」

「あ、これも持って行きなさい」

「なに?」

「コンドーム」

「息子になに渡してんだこのババアっ!」

「だってできちゃったら大変でしょっ!」

「だから情美とはそういう関係じゃねーって言ってるだろっ! てかなにしに行くと思ってんだっ! 勉強しに行くって言っただろっ!」

「保健体育の勉強だってするでしょっ!」

「しねーよっ! するとしても実技はねーからっ!」

「わかった。じゃあ外に出しなさいよね」

「わかってねーっ!」


 なんてやり取りを母親としてから俺は家を出た。


 家の場所はわからないので、近くの公園で情美と待ち合わせている。

 そこでしばらく待っていると、


「お待たせ」


 情美がやって来た。


「おう。じゃあ行こうか」

「うん。あんまり驚かないでね」

「驚くってなにが?」

「わたしの家を見てさ。高床式だから」

「めっちゃレトロっ! そら驚くわっ!」


 まあヤクザの家だし普通とは違うだろうことは予想できるので、驚愕するってことは無いと思う。


 情美に連れられて数分ほど歩き、やがて足を止める。


「ここがうち」

「ここが……」


 そこにあったのはバーガー〇ングだった。


「驚いたでしょ?」

「驚くわっ! 友達の家がバーガー〇ングだったらそら驚くわっ!」

「アボカド〇ッパー5つください」

「買い物してるっ! 俺の分も買ってっ!」


 買い物して今度こそ情美の家に向かう。


「ここがうち」

「ここが……」


 そこにあったのはドムド〇バーガーだった。


「驚いたでしょ?」

「驚くわっ! 友達の家がドムド〇バーガーだったらそら驚くわっ! てかこの流れさっきもやったっ! もうええわっ!」

「ビッ〇ドム5つください」

「また買い物してるっ! まだ食うのかっ!」


 ハンバーガーを食いながら歩く情美へついて行き、今度こそはと家へ向かう。


「最近、近所にできたの。これでドムド〇バーガー難民じゃなくなった」

「あーそうかい」

「難民申請取り消しとかなきゃ」

「どこに出すのそれ? 教えてほしいわ」


 ため息を吐きつつ、俺はついて行く。


「ここがうち」

「こ、ここが……」


 やって来たのは昔の偉い武士でも住んでいそうな、日本家屋の豪邸だった。


「お前、こんなデカい家に住んでたのか」

「ドムド〇バーガーよりデカい」

「ドムド〇バーガーはもういいよ……」


 緊張しつつ、俺は情美のうしろを歩いて中へと入る。


「ただいま」

「おかえりなさいましお嬢」

「おかえりなさいまし」


 と、怖そうな若いお兄さん数人が深く頭を下げた。


「お、そちらが噂の彼氏っすか?」

「おやっさんとお嬢を鉄砲玉から守ったっていう」

「ひゅー。良い男捕まえましたねー」

「もうキスはしたんすか?」

「馬鹿、高校生だぞ。もうそれ以上やってるに決まってるだろ。ねえお嬢?」


 情美が言っていた通り、勘違いされてめっちゃからかわれる。これはやっぱり違うってことをちゃんと言っておかないとダメだよなぁ。


「ち、違うって。夜斗はその……」


 情美は頬を赤らめて俺のほうを見る。


「わたしのポケ◯ンなの」

「なんでやねん。マサ〇タウンかここは」

「ごめん、ポケ〇ンならモンスターボールに入ってるよね」

「そういうことじゃねーよ」

「そうだね。毛沢東だもんね。ポケモン赤だけに」

「毛沢東いじりはもうええわ」


 そんなやり取りを組の若い人たちはじっと眺め、


「えっ? 彼氏じゃなくて相方?」


 新たな勘違いをされた。


 ポケ〇ン扱いされたり毛沢東扱いされたりした俺は、情美に案内されて家の中へと入る。家の中は外観と同じく広々としており、なんとなく緊張した。


「おお、ひさしぶりじゃねぇか」


 外廊下の向こうから大柄なおじさんが歩いて来る。

 以前の見合いで会った、情美のお父さんだ。


「あ、こ、このあいだはどうも……。すいません。騙してしまって」

「いや、俺ぁおめえに命を助けられたんだぜ? 怒ることぁなにもねぇよ。むしろ礼をしてぇくれぇなんだ」

「いや、礼だなんてそんな……」


 あのときはほとんど無意識で、なぜああなったのか自分でも不思議だ。だからお礼なんてされてもピンとこない。


「お父さん、お礼はわたしがするから大丈夫って言ったでしょ?」

「おめえの礼と俺からの礼は別だぜ。おっとそういやぁ俺のなめぇを名乗ってなかったな。俺は情美の親父の姫路大五郎ひめじだいごろうだ。よろしくなボウズ」

「よ、よろしくお願いします」

「よぉし、それじゃあまずは学校出たらうちに来い。俺の舎弟にしてやる。立派な極道に育てて……」

「子供をヤクザに誘うなんてなに考えてんだいあんたはっ!」

「んごぉっっ!!?」


 横の部屋か飛び出してきたおばさん……情美のお母さんが、おじさんの顔面へ飛び膝蹴りを食らわす。蹴られたおじさんは庭へと転がった。

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