第13話 迫る中間テストに戦慄する2人
「それで、光属性とやらは手に入ったのか?」
翌日の昼休み。
俺と情美は昨日のことを学食で陽介に聞かれていた。
「ご覧の通りだ」
「ダメだったんだな」
「なんでわかった?」
「陰キャのオーラが無くなってない」
まさか知らないうちにそんなオーラを発していたとは。気付かなかった。
「昨日は夜斗が駅前で急にお尻を出して踊りだしたから、これはもうダメだなって思ったよ」
「陰キャのオーラも吹っ飛ぶほど陽気じゃねーか俺。もう陰キャには戻って来れねーよそこまでやれる変態になったら」
「まあその、陽キャになるのは難しいから諦めたほうがいいんじゃね? 別に陽キャのほうが良いってわけでもないしさ。陰キャでも困ってないだろ?」
「いやでも、無堂さんとお近づきになるにはやっぱり光属性を手に入れないと。なあ情美?」
「えっ? あ、うん……」
また昨日みたいな暗い表情を見せる。
なにか悩みでもあるのかな? いやでも、元気なときはいつも通り元気だし……。
「夜斗をスキンヘッドにするって方法も考えたんだけどね」
「物理的に光属性を得てどうすんねん。内面を光らせたいの俺は」
「形から入るのも大切。夜斗は頭の形が良いからスキンヘッドが似合うはずだよ」
「そういう意味での形じゃねーだろ。なんで頭光らせたら内面も光るんだよ。馬鹿か」
「まあ光属性なんやらは勝手にやれよもう。それよりお前ら試験勉強してんの?」
「なんだ試験勉強って?」
「なんだって、明後日から中間テストだぞ」
陽介の言葉を聞いて俺と情美は顔を見合わせる。
「や、やべぇ忘れてた……」
「記憶から消してた……」
「忘れてたはともかく、記憶から消すな。お前らいっつも赤点ギリギリなのに大丈夫なのか?」
「大丈夫なわけないだろ。お前こそどうなんだ?」
「俺はちゃんと勉強してるよ」
「海野くんみたいな陽キャはウォッカでドラッグを身体に流し込みながら遊び呆けるような生活してるから、勉強なんかしてないと思ってた」
「なに俺、ロシアのマフィアかなんかだと思われてるの? あのな、陽キャは遊んでるようでやることはやってるの。無堂だって成績良いだろ?」
「確かに無堂さんは成績良いな」
陽キャ姫と呼ばれる陽キャ中の陽キャである無堂さんは、学年でも常に上位の成績だ。なので陽介の言葉には説得力があった。
「だから無堂と近づきたいなら勉強しろ。馬鹿じゃ相手にしてもらえないぞ」
「うう……。けどもうテストは明後日だしなぁ。あ、そうだ。陽介さ、勉強教えてくれよ。やってるんだろ?」
「俺、彼女の勉強するからダメ」
「あたしと彼女、どっちが大切なのよっ!」
「彼女」
「ちくしょーっ!」
即答された俺は、結局、自力でテスト勉強をすることになった。
「ああ、どうしよ? このままじゃ赤点だらけで、無堂さんが遠のいて行くよ」
帰り道。
俺は遠くの空に無堂さんの幻影を見ながら深くため息をついた。
「毛沢東だもんね」
「いやそういう意味の赤さじゃねーよ。お前は大丈夫なのかよ? お前だって赤点まみれだろ?」
「今度、赤点取ったら太郎君のTシャツを取り上げるって言われた」
「あれお前のお気に入りだったの? 罰がゆる過ぎない? いや、俺は赤点取ったら小遣い減らすって言われてるんだよなぁ。やべーなぁ」
「そうなったら二郎君のTシャツあげるよ」
「いやいらん」
「あ、じゃ、じゃあさ、明日は祝日だし、今日から一緒に徹夜で勉強しない?」
「徹夜でって……うちでか? いや、いくらお前でもさすがに女子を男の家に泊めるのはなぁ」
「大丈夫だよ。わたしなにもしないから」
「俺がなにかされる可能性のある側なんだ」
「だったらうち来る?」
「えっ? けどお前んちは俺が行くと組の若い人たちからからかわれて嫌なんだろ?」
「まあ、緊急事態だし、しかたないかなって。からかったら指を詰めさせるから」
「いや、お前の赤点にくらべて、組員たちへの罰が重過ぎるっ! まあ、お前がいいなら俺は構わないけど」
「じゃあそういうことで」
そう言ってなんとなく嬉しそうに微笑む情美。
俺と徹夜で一緒に勉強することがそんなに嬉しいのかなと思った。
お読みいただきありがとうございます。
中間テストの脅威がお馬鹿な2人を襲う。
家にお呼ばれした夜斗は情美に誘惑されてしまうかも?
作品を気に入ってくれた方、続きが気になるという方はぜひ評価、ブクマをよろしくお願いします。感想もいただけたら嬉しいです。
次回は情美の家に驚く夜斗。




