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第12話 友達になれて嬉しい。けど

「うわお前、そこショーカットできるのマジかよっ」

「ショートカットを征する者が、このゲームを征するのだよ」


 俺の部屋で情美と一緒にレースゲームを楽しむ。

 買ったのはこいつのほうが早かったから、このあいだからずっと負け通しだ。


「くそー全然、勝てねぇ」

「ふっふっふっ、このゲームを征したわたしに勝とうなど3日は早い」

「自分で3日天下宣言? もっと自信持って」


 それからわーぎゃーいいながら、2人で夜までゲームを楽しんだ。


「あ、もうこんな時間。帰らなきゃ」

「勝ち逃げかよー」


 結局、一度も勝てなかった。


「ずいぶん遅くなっちゃったな。外だいぶ暗いし送るよ」

「えっ? だ、大丈夫だよ。柱を一本もらえればそれに乗って帰るから」

「摩訶不思議なアドベンチャーしてんなぁおい。いや、もうちょっと話したいだけだから気にすんな」

「う、うん」


 家の外へ出た俺たちは、情美の家があるほうへ向かって歩く。


「そういえばお前の家って行ったこと無いよな。送るときはいつも近くの公園までだし」

「家がヤクザだって知られたくなかったから」

「そういうことだったんだな」


 今までなんのかんの言って俺を家に近づけなかった理由がようやくわかった。


「……ねえ夜斗。今日、光属性を手に入れるためにって、いろんなことしたじゃん? 光属性は手に入れられそうだった?」

「うーん……ちょっとダメそうかな」


 いろいろやったけど、どれも満足に達成できたものは無く、光属性を得るにはほど遠い気がした。


「ごめん。手伝うって言ったのに、わたしばっかりどんどん光属性になっちゃって」

「最後まで俺の横でごにょごにょ言ってた人が?」

「次はがんばるから」

「いや、けど今日は楽しかったよ。初めてのことばかりだったけど、やっぱりお前と一緒だと楽しいな」

「えっ? あ……そ、そう?」

「うん。情美と一緒だとなにやってても楽しいよ。またなんか一緒にやろうな」

「う、うん」


 情美は俯いてそう答え、俺たちはやがて情美の家から近い公園へと着く。


「こ、ここでいいよ」

「うん? もうヤクザなのはわかってるんだし、家まで送るよ」

「組の若い人たちに見られると、勘違いされてウホウホキーキーからかわれるかもしれないから」

「若い人たちおサルさんなの? まあ、からかわれるのは嫌か」

「……」


 情美はなにも答えない。

 ただ黙って俯いていた。


「……夜斗さ、わたしのこと美少女って言ってくれたじゃん。鼻の下をつま先まで伸ばしながら」

「きっしょい妖怪か俺は」

「もしもだよ、初めて会ったときからわたしが美少女ってわかってたら夜斗はその……わたしのこと好きになってた?」

「俺はお前のこと好きだぞ。だから今でも友達やってるんだよ」

「そうじゃなくて……だから、無堂さんに対する好きみたいな感情を持ったのかなって」

「そ、それはその……難しい質問だな」


 俺はあのお見合いで素顔を見るまで、情美が美少女だとは知らなかった。もしも初めて情美と会ったときから美少女だって知っていたら、俺は……。


「うーん……好きになっていたかも。あのころは他に好きな人もいなかったし」

「そ、そっか。じゃあ、今の夜斗でもわたしのことが好きになる可能性はあるってことだ?」

「えっ? あっと……そういうこと、かな? けどそうなっていたら、こうやって友達にはなれていなかったと思う。恋愛的な意味で好きになってたら、緊張してまともに話せなかっただろうしな」

「うん。あの、わたし、夜斗と友達になれたことはすごく嬉しいよ。だけど……だけどね」


 情美は言葉を詰まらせ黙り込む。

 声をかけようとするも、ひどく悲しそうな表情をする情美に一体なんと言えばいいのかわからず、俺は言葉に迷った。


「……ごめん。わたし帰るね」

「あ、うん」


 悲しそうな表情のまま背を向けて去って行く情美。


 どうして急にあんな悲しそうな表情を見せたのか、俺にはわからなかった。

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