優華の親友めいっち
第40.5話
笹野内さんと別れたあと帰路に着いてから、ある人物に連絡を入れた。
時刻は夜だが会って起きたかった。
優華のお見舞いで俺の家の近くに来ていたから、移動せずとも会えることになった。
「きょっしー、おは〜〜!!」
家の前に立ち俺の存在に気づくと急ぎ足で迫ってくる。
独特のあだ名で呼ぶのはこの世でただ一人。
「もう夜だよ。めいっち」
優華の親友佐奈川芽衣だ。
俺と優華と小学校が一緒の女の子。
「光が見えない? 月が照らして明るいんだから朝や昼となんら変わりはないよ!」
「確かに、俺という存在が光を出しているんだ。そのせいで朝だと錯覚してしまったのかもしれないな」
「まさかのきょっしーが犯人!?」
「そこはツッコんでくれよ!」
陽気な掛け合いをするが、めいっちはきっと俺がふざけたことを言っている自覚がない。
馬鹿ということではなく、天然というか、ズレている。
「優華は大丈夫そうだったか?」
「うん! ちょっと元気は無さそうだけど、ウチとの絆があれば、ゆかっちは笑顔、ガオガオガオ、だよ!」
両手をライオンのようにガオッーと顔の前で半開きにしてこちらに向けてくる。
無邪気な姿は疲れた心に力をくれる。
「めいっちワールド全開だな」
ライオンポーズをめいっちが長く行っている間を使って、携帯で時間を確認する。
時刻は夜二十一時を過ぎていた。
夜遅い。
このままここで話していればもっと遅くなる。
聞きたいことは少しで終わる。
移動しながらでも十分だ。
「歩こう、駅まで送るよ」
「話すんじゃないの?」
「歩きながらでもできるだろ」
「それもそっかー! じゃあ帰ろ!」
暗い夜空を弾け飛ばす明るさを纏っている。
俺よりもめいっちが太陽に近いかもしれないな。
くそっ、負けたか。
「なんか残念そうだね」
「気にするな。それよりめいっち、さっき連絡で送ったこと、読んでくれたか?」
噂を無くすための作戦を提案した。
流されている噂に対して新たな噂を流す、噂対抗作戦。
乗ってくれるならめいっちはこの作戦の大エースになる。
「う〜ん、ウチには無理かも、ごめんね。噂広めるの乗れなくて」
あっさり失敗に終わる。
直接、断られると心にくるな。
「広めなくても大丈夫だぞ。めいっちが過度に優華を庇いすぎれば、怪しく思われ、かえっていま流されている、俺と優華と白姫さんの噂の信ぴょう生が上がる場合もあるんだ。そうなれば逆効果。嘘を事実にしてしまっては、取り返しがつかなくなるからな」
だからといって、めいっちの力が借りれないのは残念だが。
「えっ? 噂なら広めてるよ」
「広めてるの!?」
予想外の言葉が返ってきた。
「うん。何人かの友達には言ってるんだけど、友達を守るなんてめいっち優しいな〜って、そう言われるだけで聞き耳もたれてない。みんな、なぜかわからないけど、優華っちの噂を真実にしたがってる気がする。そんなことないことは、優華っちと過ごしているならわかるはずなのに」
悲しそうに語るめいっち。
だが、本能的には気づいていそうだ。
人は意外と簡単に他者の意見に染まると。
優華の親友でも、そうでなくても、優華が噂をされれば全員簡単に信じる。
そっちの方が面白いから。
抱えた妬みも嫉みも、憎しみも恨みも、優華が苦しめばスカッとできる。
人間心が弱いんだ。
優華の事実はどうでもいい。
反吐が出るぜ。
「けど、ウチもウチなりに頑張るよきょっしー!」
「めいっち・・・・・・」
ほんと前向きだな。
氷のような世の中の事柄も、めいっちの熱があれば溶けるのかもしれない。
強く感じる。
「ありがとな」
「お互い様だよ!」
親指を立てグットポーズをこちらに向けてくる。
反射的に俺は同じポーズで返していた。




