序章
「強助ちょっと」
優華に呼ばれる。
「友達はいいの?」
「着いてきて!!」
優華が教室から出る。
その後ろを追いかけるように出た。
「どこに行くの」
「中庭」
「掲示板?」
優華は急いでいるのか、振り返らずに進んで行く。
急なお知らせでも貼られているのだろうか・・・・・・ある、もの凄く心当たりがある。
生徒会の新メンバー加入について。
最高のイケメンが加入、うん、ありえるな。
用意が早い気もするが天上帝なら・・・・・・昨日の放課後すぐに用意させたかもしれない。
「強助早く」
だけど優華がこんなに急いでいるのは何故だろう。
俺が生徒会に入ったことを知っている。
わざわざ生徒会いりが掲示板に貼られているくらいで呼ぶはずがない。
だとしたら違うことが掲示板にあるのか。
それにここまで急かすということは、見てもらいたい大きなお知らせが載っているということだ。
この目で確認しなければいけないほどのものが。
「たくさん人がいるね」
掲示板の前には人だかりができている。
内容について話していて辺りはザワザワしている。
「私もさっき掲示板に書かれていることを聞いたの。だから強助と確認しようと思って」
「確認したいほど急を要するんだ」
無言で頷き一緒に中庭を歩く。
人が集まってはいるが、掲示板は高いところにあるため、載っている内容を確認することができた。
「・・・・・・・・・・・・」
よくわからなかった。
「ほんとだ。ほんとに書かれている」
いやわかろうとしなかったのかもしれない。
一言一句読み飛ばさないようにゆっくりと見た。
書かれている文字は少ない。
学校に在籍している人の名前とたった三文字の言葉。
「なにが起きているの強助。《《退学者》》ってなに?」
一年生から二人退学者が出ていることを知らせる掲示板だった。
大きい空間で頭を空っぽにして考えたい。
意外と落ち着いたまま静かに屋上へと移動した。
「大丈夫なの?」
「・・・・・・あぁうん」
とりあえず落ち着かせないと。
ベンチに腰掛ける。
「飲み物買ってくる?」
「ありがと。でも喉乾いていないからいいや」
冷静にあの三文字を考える。
退学者。
見間違いはしていない。
確かにそう書かれていた。
けれど何故そんなことになった。
阻止したはず。
取り引きを交わし約束を結んだ。
口約束なんて安易な相手の信用に頼る選択をしたことが間違っていたのか。
生徒会長がそんな約束を無視することをなぜ念頭に入れなかった。
プライドなんてものに賭けたのは俺の見積もりの甘さだ。
「クソ」
自分に怒りが湧く、それと同時に、もし仮に生徒会長が約束を破ったのだとしたら、あの人は想像以上に見下げた男になる。
そんなものは言い訳か。
あれだけ簡単に人を退学させられる冷徹な男だ。
プライドのカケラも無い行為を平然とできる。
弱いのは俺だ、甘いのは俺だ、考えが足りない、その見積もりの脆さこそが、こんな事態を招いた。
「———本当にそうか?」
才について語った生徒会長が自分自身を裏切るようなことをするのか。
勝つことよりも勝ち方にこだわりそうなあいつが?
記憶を辿れ。
あの日、二人の退学を止めさせてください。
そう言った。
噂を流した二人の退学を止めてくれと言った。
なにか言葉に誤りがあったのか。
間違えて記憶しているか。
そうは考えたくないが・・・・・・。
「退学を止めろ、あの二人の退学を止めろ、あの二人の・・・・・・そうか」
他の人を退学させてはダメと言っていない。
生徒会長は取り引きを破っていないんだ。
取り引きで交わした約束を踏まえた上で、手を打ったのか。
「だとすると目的はなんだ」
「強助?」
「最初からこれを狙っていたのか。俺がサッカー部を断る。それすらもよんでいたのか。じゃあ本当の狙いはなんなんだ。俺のサッカー部いりすら目的ではないとしたら・・・・・・いや違う。サッカー部にいまはいれられないと判断したから、狙いを変えた。つまり俺に才能を見せつけるため?」
「ねぇ、強助」
「なんのために俺を生徒会にいれる。なにが目的でサッカー部いりを勧めた。どこまで生徒会長が仕組んだ。どこまでが計画なんだ。あの人の目的はなんだ!」
「強助!!」
大きな声が聞こえた。
「優華?」
「早口すぎてなに言ってるかわかんないけど・・・・・・一回落ち着こう。強助は退学した人についてなにか、知っていることがあるんだろうけど・・・・・・気が入りすぎたら怖いよ。なにが起こっているかもわからないけど、強助が・・・・・・無理しすぎるのが一番怖い」
震えていた。
そうだよな、優華も普通でいられるはずがない。
優しい女の子なんだあんなものを見たあとに、平気を装うのは大変だ。
なのに俺の様子を見て平然を保ってくれたんだ。
「ごめん優華」
取り乱してしまった。
その結果、優華に負い目を感じさせてしまった。
一番避けたいことなのに。
いや負い目を感じさせるようなことをすでにしてしまっただろ。
俺が原因で全く関係のない人を退学させることに白姫さんと優華を関わらせてしまった。
二人には申し訳ないことをしてしまった。
「教室に戻ろう」
優華から返事をもらい移動する。
生徒会に入るんだ、生徒会長と顔を合わせる。
そのときに考えよう。
いまここで答えを出さずとも生徒会に入ればもっと見えてくるだろうから。
あの人が俺を欲している理由も、この学校の異常さも、全部知っていくことができる。
学校で特にしたいことがない俺にも、興味のあることができた。
そこで答えを、想いを出せばいい。
感じたままに紡げはいい。
ある種の敗北を知った。
だがそれで生まれた。
俺の目的、生徒会に入る意味、この学校でなにをしたいか。
俺が生徒会にいる限り退学者を出させない。
生徒会を知り、学校を知り、いろんな人を知りたい。
俺は俺を知りたい、俺のオモイを知っていきたい。
第一章読んで頂きありがとうございます。
第二章に入る前に、話と話の間の補足となる話を、次の話から少し連載させて頂こうと思います。
読んで頂けると幸いです。




