表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/69

会長の狙いと副会長の狙い






「行ったか」

 相変わらずうるさい奴だと春兎は思う。

 けれどそんなところもいい、余裕のある彼氏面を浮かべながら、ソファーにどっかり座る。


「あいつは、一年の駒下雅。あいつを使えればことを上手く運べるかもな」

 生徒会長と自身の父親を浮かべる春兎。


「いまは仲良くやっとくんだな波音羽」

 自身と波音羽の逃れられない運命をオモイ笑う。

 

「しかしあのバカ会長はいつくるんだ」


「呼んだか春兎」


「タイミングがいいなぁ全く。狙っていたんですか?」

 扉を開き部屋の中へ入ると、無言で自身の席へと向かう帝。

 腰掛け春兎の方を見る。

 春兎は意図的に偽の敬語を使うことにした。


「お前の目的はなんだ?」


「急にどうしたんです」


「昨日は本咲強助や笹野内愛が帰宅したあと、お前もすぐに帰宅したから聞けなかった。答えろ」


「なんでそんなことを聞くのかをうかがっているんですが」


「監視カメラに突然映らなくなり、映ったかと思えば傷が増えた本咲強助。生徒会室に戻ってくる春兎。なぜあのようなことをした」

 監視カメラを一通り見た帝が春兎に聞く。


「わざわざ聞かなくても気づいているんでしょ?」


「お前が自分の口から言え」

 冷たい視線が春兎を襲う。

 がさないという縛り付ける圧だ。

 春兎も言おうと思っていた。

 だが生徒会長のいつもとは違うものを感じて、探りたくなっていた。


「会長にはバレたくなかったんですよ。生徒会の指輪を渡していること。そうしたら、俺の思惑に気づいて対処したでしょうから」


「カメラの死角を歩いていたな」


「お見事ですね」

 皮肉っぽく返す春兎。


「わざわざ本咲を殴った意味は?」


「俺が本咲を殴ったかどうかをわからせないために、死角を歩いているとあなたに思わせたかったからです」

 春兎は帝の思考を誘導ゆうどうしたかった。


「カメラに映った本咲に新しい傷があったら、どこかで俺に殴られたとあなたは思うでしょう。だが殴っている場面がカメラに映っていない、だから証拠にはならない。それを俺が狙ったとあなたは推測すいそくするはず。つまり指輪を渡していたとは予想しないでしょう?」

 監視カメラに映らないところで殴っていたと、帝の推測を固定させるために春兎は動いていた。

 強助に傷跡さえあれば見えない所で春兎が殴っていたと帝は推測を終える。

 殴ったところが監視カメラに捉えられていたら、一度映らなくなった理由が説明できない。

 そうすると部屋に移動して指輪を渡していた時間が不自然で、そこから、その時間強助と春兎が消えた理由となにをしていたかの目的。

 帝なら答えを導き出す確率がある。

 なにより監視カメラに殴ったところが映っていたら、生徒会長が証拠を元に春兎を問い詰めてゲームオーバーだ。

 だからカメラのない場所で殴る必要があった春兎。


「目的をカモフラージュするためか」


「殴ったのは死角を歩いていた理由にするため、殴っている場面を映したくなかったのは死角を歩いた理由が殴るためだけだと確固たる事実にするため。全てはあなたの裏をかいて本咲に指輪を渡すためですよ」

 映っていない理由は強助を殴っているから。

 全ては帝にそう思わせるために春兎は動いていた。


「そこから指輪をどうするかはあいつ次第ですがね」


「なぜあいつが指輪を必要になるとわかった」


「あいつに才があるとするなら、指輪が必要だと思ったんですよ」


「俺のやり方を否定したかったか」


「天上帝の土俵どひょうで戦うことで、その土俵はあんたの十八番ではないと思わせたかったんです」

 

「面白いことをしたな」


「俺にも成し遂げたいものがありますんで」

 春兎は帝に力を証明したいと強く目で訴える。


「全てのからくりがわかったとしても、お前が協力するとは予想外だ。あいつに魅了みりょうでもされたか?」


「協力したんじゃねぇっすよ。勘違いしないでください。あいつがあんたの近くにくることが気に食わねぇだけだ」

 それはある種嫉妬のようなもの。

 春兎は強助に対して無自覚に抱いていた。


「しょうもないやつだと思っていたからだ。けどいまは違う。試してみてわかった。才能があいつにはある」

 強助を脅威きょういの一人であると思っている。


「俺があんたを潰すんだ。なのに、あんたの近くにめんどくさい奴をこれ以上おきたくねぇ」


弱腰よわごしだな」


「チゲぇよ。あんなやつにあんたが手のひらで踊らされでもしたら、倒す目標がなくなるだろ」

 天上帝の才能を知っているからこその、万が一の可能性。

 帝が強助に出し抜かれる。

 春兎はそれがありえるかもしれないと、今回起こった一連のことから感じている。


「俺を随分と過小評価しているな。本咲に操られるような俺ではない」


「リスペクトはしてるぜ。でもな期待はしてねぇ。あんたは裏切る逸材だからな」

 ヘラヘラと笑いながら帝を見る目をより強める春兎。


「生徒会のメンバーも、許嫁も、あんたは裏切り続けているんだろ。いつ後ろからサクッといかれるかわからないぜ」

 帝は表情を一切変えずただ聞くのみ。


「だからいまあんたをこんなにも俺は倒そうとしているんだよ。いつ死なれるかわからんからなぁ」

 勝ちたいから認めているからこそ、勝手なとこで帝には死なれたら困る。

 それが春兎の想いだった。


「春兎提案がある」


「あぁ?」


「お前の考えを聞けばわかる。いまもっとも邪魔なやつは俺と同じだな」


「なに言ってんだ」


「質問に答えろ。お前は目的のためにあるやつを退学させたい、そうだな」


「偉そうにブツブツと言いやがる。指図されるのは気に食わねぇ!」

 テーブルを力強く叩く春兎。


「だが———あぁ・・・・・・いるぜ」


「ならそいつを退学させるために次は動くぞ」


「同じやつかどうかはわかんねぇだろ?」


「二度も言わせるな」

 帝の狼と死神を混ぜたかのような黒くて一点の獲物を狙う目を見て、違うわけがない、そう確信した。


「あんたと協力するのは出来る限りしたくはないんだがなぁ。だけどあんたと同じくらいそいつも邪魔ではあるんだよなぁ」

 あごに手をつき数秒考えてから答えを出した。


「いいぜ」


「決まりだ」

 フッと鼻息を出してからニヤリと頬を動かす春兎、手を組み直し生徒会の証である指輪を輝かせながら天上を見る帝。


「笹野内愛を退学させるぞ」


「笹野内愛を退学させる」

 二人同時に言葉を放った。

 動き出す生徒会、次の標的は笹野内愛。


「本咲強助の弱点になりえるのは黒妃優華だと考えていたが違った。笹野内愛こそ本咲強助に致命傷を与えられる存在だ」


「俺は違いますよ。幼馴染の黒妃優華を血眼ちまなこになって救ったんです。あいつにとって大切なのは黒妃優華ですよ」


「現時点で最も大切な存在は黒妃優華だろう。だが大切と弱点は違う。自分にとって最も大切なだけでは大きな弱点になりえない。自分自身が引きずっているもの、後悔しているものこそが人の弱点になる」


「あの三人の中学校時代のことを言っているんですか? だったらいい加減教えてくださいよ。あの三人になにがあったのか。笹野内愛がなぜ本咲強助の弱点になったのか。そして本咲強助にとって黒妃優華が大切な理由も」


「知りたければ自分で調べるんだな」


「そう言ってるくせに資料を隠蔽いんぺいするのはあなたじゃないですか?」


「過去の資料がなければ調べることができないのか。思っていたよりお前を過大評価していたみたいだ」

 笑うのをめ、頬をり上げて怒りに変える春兎。


「煽ってくれますね。だったら知るために()()()()()()()でやってもいいってことですか?」


「目をつむろう」

 手を握りしめる春兎。

 武者むしゃ震いする体、湧き上がる高揚こうよう感、春兎は楽しみになってきた。


一旦いったん、笹野内愛を潰すために動いてあげますよ」

 脅し、いじめ、屈辱、精神を攻撃することを春兎はひるまない。


「燃え上がっているみたいだな」


「笹野内愛という存在は俺の目的のために邪魔だ。今回も立ちはだかってくる存在として本咲強助よりもあいつの方が脅威だった。それに波音羽ともなにかあるみたいだからな。あいつの邪魔になる者も排除しておきたい。つまり一石二鳥」

 ソファーから立ち上がる。


「組んではやるがそれはつまり手を出すなということだ。わかったな会長」

 途切とぎれ途切れだった偽の敬語を完全に無くす春兎。


「フン、失敗は許さないぞ」


「チッ黙っとけ」

 新しい敵に湧き上がる感情。

 ウズウズして仕方のないオモイ。

 西蓮寺春兎は自身の目的のためまた一歩踏み出した。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ