不穏な接触
学校に着き校舎の中に入る。
「えっ、これ、なに」
下駄箱の前で優華が呆気にとられたような表情をしている。
「どうしたの」
手元の方へと視線を向ける優華。
見るとそこには一枚の手紙。
「黒妃優華様へって書かれてる」
なにがなんだかわからないと不思議そうな優華。
いまどき下駄箱に手紙か。
果たし状か?
なわけないか、答えはほぼ一つしかない。
「手紙に差し出し人の名前が書いていないな」
「開けた方がいいよね?」
「差し出した人は見てもらいたいんだろうけど、貰った側は顔がわからない人物からの手紙は怖い」
「・・・・・・うん」
不安そうに頷く。
「相手に失礼かもしれないけど開けるなら俺も一緒にいるよ」
「ほんと? ありがとう強助」
「とりあえず移動しよっか」
手紙の真相を確かめるために足並み揃えて屋上へと向かった。
「はぁ・・・・・・」
「開けるのはきついか?」
「ちょっと尻すぼみするというか、手紙をもらうことはいまどきないから。おそらくというか、なんとなくどんなことが書かれているのか、予測出来るというか、ね?」
手紙が送られること、しかも下駄箱にいれられるというのはなかなかに珍しいことだ。
逆にいえばそうまでして伝えたいなにかがあるということ。
直接渡してこないということから対面するのが怖いのか、人前では会いたくないんだろう。
「優華の好きにすればいいと思う。開けたくないなら相手には申し訳ないけど、それは優華の選択だから」
「そうだね強助・・・・・・だけど、私開けてみるよ」
ゆっくりと便箋を開ける。
中には折り畳まれた一枚の手紙が入っていた。
目で相槌を打ち優華は手紙を読む。
すると不可思議そうな顔をしたあと俺の前に出してきた。
「好きです。付き合ってください。ベタベタのラブレターだ」
手紙にも差出人は書かれておらず、誰からなのかわからないままではあるが。
「強助」
不安そうになっている。
「誰かもわからないなら、こっちからすることはないしな」
目的は書いてあっても肝心な部分が書かれていない。
どうしようもないっていうのが現状だ。
でもやりようはある。
「調べてみるよ。生徒会でなにかわかるかもしれない」
「・・・・・・」
「この手紙借りてもいい?」
手紙を持っていれば誰か判明させるのに役に立つだろうからな。
「申し訳ないけど相手を判明させるためには必要だから」
「なにからなにまでありがとね。私も強助に必ず返すね」
「いいよそんなの。優華にはずっと世話になりっぱなしだから」
謎のラブレター。
ただの恋文なら良いのだが、仮になにか別の意味があるなら新しい波乱が巻き起こるかもしれない。
「じゃあ行こ強助」
教室へ二人で向かう。
廊下がなにやら騒がしい。
「強助?」
「なんでもない」
教室へ入ると中も騒がしかった。
「優華ちゃん!!」
「黒妃さん!!」
教室に入ると囲まれる優華。
みんな気にしていたんだな。
ただ、気にしてる意味はそれぞれ違う。
優華の友達たちの中には噂を聞き優華を遠ざけていた人も多くいる。
いつか裏切る確率もありえる。
「ゆかっち!!」
「めいっち!!」
休んでいる最中家にも来ていた親友と抱き合う優華。
親友がいればその心配も杞憂に終わるか。
彼女だけはなにがあっても優華の味方だろう。
優華の元から離れ自分の席に向かうと、近くに座っている男子生徒グループが盛り上がっていることに気づく。
「なぁなぁ知ってるか。この学校にさ野球選手の息子がいるかもらしいぜ」
「へぇ〜〜。野球上手いのかな」
「そりゃあそうだろ。友達になりたいな〜野球部に入ってるかな〜」
「入ってたらいいな。てか、こんなの知ってるか。生徒会のある人が五股してるらしいぜ・・・・・・」
ファッション隠キャ、ファッション優等生、ファッションビッチこの三日間学校を賑わせた噂が終わっても、また新たな噂が流れる。
一つがなくなってもまた新しい何個もの噂が流れる。
呼吸のようなもので。
吸ったあとは吐き出して、新たなものを吸う。
その繰り返し、それが噂の本質であり摂理だ。
噂の存在が真に無くなることはない、人は無知であり、誰よりも早く新しいものを知りたい。
誰かの弱みになるものを早く仕入れたいから。
また俺の前に立ちはだかるだろう、新たな傷を誰かに残すだろう、それでも向き合っていかなければならない。
傷つける覚悟、その先にある想い、これらを学べたから、いままでよりも向き合っていける気がする。
そういう意味では俺も僅かにだが、会長が望むように成長したかもな。
「強助ちょっと」
優華に呼ばれる。
「友達はいいの?」
「着いてきて!!」
緊張しているのか、怒っているのかとにかく体は熱いし、心臓もバクバクと揺れている。
普段絶対行くことがないけれど、今回いろんな意味でお世話になったところへと向かっている。
会いたくない、でも会わなければいけない人に呼ばれたからだ。
目の前につき息を整える間もなく扉を押す。
「時間通りに来てくれたんだな。早起きは苦手なんだろ愛しのお姫様」
「遅刻する方が嫌なこと起きると思ったから早く来ただけ。くだらないこと言わないでよ春兎」
「久々の再会なんだいいだろ波音羽」




