気になる点
白姫さんとの一幕を終え長い一日いや、三日間を終えた。
長いようであっという間の日々だった。
この三日間だけで俺を取り巻く状況は大きく変わった。
全く交流のなかった白姫さんと駒下さんと関わることになり、高校に入ってから話していなかった笹野内さんとも大きく絡むことになった。
生徒会長や副会長とも話すことになり、話したことのなかったクラスメイトとも会話をした。
そしてなにより生徒会に入ることが決まった。
触らぬ神に祟りなし、我関せず。
この生き方は生徒会に入ると難しくなるだろう。
自分自身もそのような生き方とは違うような生き方の可能性も学び、新たな生き方を模索していくことになるかもしれないな。
だけど、白姫さんが教えてくれた。
どんな考えもでいい、決めなくてもいい、その根底にある自分の想いを大切にしろと。
彼女の言葉を忘れないで胸に刻んでおきたい。
白姫さんはファッションビッチではなかったな・・・・・・。
俺に関してはファッション隠キャと噂をされたが、今回の件である意味ではそう捉えられてもおかしくない状況に変わった。
ただのクラスメイトから生徒会に変わってしまったからな。
隠キャをファッションにして孤高の存在で、いつづけているやつと思われるかもしれない。
そうなっても否定しないが、噂通りになるのは癪だなぁ。
まるで嘘から出たまことだ。
いくらかっこいい俺でも真実になるのはモヤモヤするなぁぁぁ。
「・・・・・・起きろ・・・・・・起きろ・・・・・・・・・・・・起きろぉぉ!!!」
耳元で大きな声が響く。
瞼を開けるとそこには妹がいた。
「遅いんだよ起きるのが!! なんで私がクソ兄貴のことを起こさなきゃいけないんだ。ふざけんな!!!」
考えごとをしながら寝ていたらしい。
言葉を吐き散らし部屋から出ていく妹。
「ご立腹だな」
携帯を見るといつも起きる時間より遅かった。
だから起こしてくれたんだな。
今日は学校だというのにゆっくりしていられない。
「あっ! やべぇ、朝ごはん作ってない!」
急いで作らなければとベットから立ち上がると香ばしい・・・・・・いや焦げ臭い匂いが鼻腔を擽り、問題は解決していることを知った。
「まじか・・・・・・」
顔を洗い制服に着替えて学校の準備をする。
階段を降りて食卓に向かうと母親が作った料理が置いてあった。
他の家族はもう食べ終わっているみたいで一人もいなかった。
「苦い」
トーストは焦げた味がする。
目玉焼きもウィンナーも全部黒い。
切り方は雑でも生野菜であるサラダは食べられるかと思ったが、かけられているドレッシングが美味しいとはとても言えないものだった。
おそらくコーヒー、ケチャップ、蜂蜜を混ぜ、隠し味にニンニクを使っている。
飲み込むことも難しい。
「レシピ見ないで作っただろ母さん」
はぁ・・・・・・大きなため息が溢れる。
最近料理教室に通っているはずなんだけどなぁ。
作ってくれたことには感謝だ、ありがとうございますと伝えたい。
だけど俺が作らないと俺と他の家族の身が保たないな。
改めてそのことを知る。
水で流し込み、そそくさと食べ終えた。
もうすぐ優華との待ち合わせの時間のため、食器を洗い、一度部屋に戻る。
カバンを持って家から出た。
家の敷地の外に優華が待っていた。
「ごめん遅れた」
「待ってないよ、私もいまきたとこだから。おはよう強助」
いつも待ってくれている学校の人気者で幼馴染の優華。
「おはよう優華」
セミロングの紫色の髪が靡いて、艶を放っている。
リップを軽く塗った唇と笑顔いっぱいな顔は、迷いがなくなった清々しい顔で可愛い。
元気な様子で良かった。
「体調は大丈夫?」
「うんおかげさまで」
優華が苦しいんでいるのを見るのは耐えがたいからな。
「安心したよ」
「エヘヘありがと」
感謝する優華はいつもとどこか違う気がする。
声、顔、姿は特に変化がない。
着ている制服も特段おかしなところはない。
「あっそのペンダント」
違和感の正体。
着けているところをあまり見ない物を今日は持っていた。
「これ強助から貰った物だよ」
紫色の五枚の花びら、その中央雄しべと雌しべのところに水色の輝く石。
「スミレの中で水色に輝くラリマー。強助がいろいろと調べて送ってくれたみたいだね。嬉しくて調べたよ」
「だいぶ前にあげた物なのに、まだ持っててくれるんだ」
「宝物だから」
「た、宝物って・・・・・・・・・・・・ちょ、ま、き、急すぎるって・・・・・・」
「強助の恥ずかしい顔ゲットしたねぇ〜〜」
あざとい、あざとい、あざとい!!
やられた、不覚だった。
優華に言われた一言はむず痒い。
なのに、大切にしてくれているのは嬉しいなぁ。
「———学校に行こっか」
恥ずかしさを噛み殺すように言葉を吐いた。
「うん!」
休んでいる間にあった事件、親友めいっちと遊びに行ったこと、最近ハマっているゲームのことなどいろんなことを優華が話してくれた。
話しながら俺は昨日解決していないことを考える。
なぜ副会長は俺を殴ったのか。
その際指輪を渡され、あの指輪があったおかげで比較的楽にことを運べた。
だからこそ指輪を渡すために必要な行為だったのだと考える。
でもなぜ俺を殴った。
「強助なにか考えごとしてる?」
「ごめん優華。気になることがあってさ」
「話してみて」
名探偵の助手の雰囲気でお願いされる。
話してみたら疑問も解けるかな。
「今回の件。俺は優華と白姫さんを救うために、重要な指輪を副会長に渡された。そのとき殴られんだ。でも理由がわからない。副会長はなんで俺のことを殴ったと思う?」
う〜んと考える優華。
こんなこと急に言われてもなに言っているんだこいつとなるよな。
「生徒会の人だから意味のないことはしないと思う。強助を殴ったことで自身の評価をあげる。もしくは強助の印象が悪くなることを防ぐため・・・・・・なんておかしいよね」
副会長が自分の評価を上げるためか。
だがそれは考えにくい。
あそこまで俺を欲した会長が、俺が殴られることを望んでいるとは思えない。
それで評価することは到底ないはず。
なら会長からの俺の印象が悪くなるのを防ぐため?
逆にいえば殴られていることで印象が良くなるってことだ。
そんな暴力や教訓を推進している会長だとは、話を聞いた感じ思えない。
なんでもありの生徒会だとはいえ、なんでもありだからこそしっかりしているのが生徒会長。
「それともなにかを欺くために、とか」
欺くか・・・・・・なくはないな、誰かを欺くために行った確率はありえる。
一体誰を・・・・・・生徒会長一択だな。
だとすると会長を欺くためにわざわざ部屋に行った理由は?
会長が見ているわけでもないのに、部屋に行く必要があるのか?
この仮説なら会長が俺のことを監視していなければいけない。
「謎は解けそう?」
心配そうに顔を覗く優華。
「まだ無理かな、でも前進は出来たかも。あのさ、もう一つ気になることがあって。部屋に行くまでも、変な動きをしていたんだ。廊下の端を歩いたり、急に斜めに歩いたり、普通に歩くってことをしていなかったんだ」
意図があるとしか思えないおかしな動きを行っていた。
「優華はなんで副会長がそんな動きを行ったんだと思う?」
「う〜ん・・・・・・そうだね。なにかに追われていた、その動きが逃げるためには最善手だった、とか?」
追われる、逃げる。
あのとき後ろに迫る人影はいなかった。
追えるとするとなにがあるか。
人ではないもの。
それでいて俺と副会長を追うこと、見ることができるもの。
監視ができるもの・・・・・・。
「そうか、わかった、わかったよ優華!」
「えっ!? そ、そうなの?」
「監視カメラだ。監視カメラに映らないよう歩いていたんだ」
「なるほどね? 良かった良かった。強助の謎が解けたみたいで。少しは私役に立てたかな!!」
「少しどころじゃないよ。ありがとう優華」
「どういたしまして!」
優華のおかげで一つ謎はとけた。
あの変な動きは監視カメラの死角を歩いていたのか。
だけどそれにしても理由がわからない。
わざわざ監視カメラの死角を歩く理由が。
そこまでしてあの部屋に行く理由が。
会長に見られたくないんだとしても一体なんのために。
そもそも会長はなんで俺を監視しているんだ。
もしかすると監視したかったのは俺ではないのか。
となると・・・・・・候補はただ一人副会長になる。
笹野内さんにも意見を聞いてみよう。
それでも無理なら・・・・・・。
最後は会長達に直接聞いてみるしかないな。




