夜の学校
今回私は助けられた。
自分一人じゃなにもできなかった。
大事なときは甘えてばかりの私。
もっと自分でなにかを変えられるようになるためにこの学校に入った。
けどなにも変えられない。
それどころかまた誰かを頼ることしかできなかった。
私は、
白姫波音羽は、
醜い女だ。
優華と会ったあと俺は学校にもう一度やってきた。
ある人物と約束したからだ。
夕陽はとっくに消え暗闇が広がる。
普段と違って学校に続く道も街頭があるだけで辺りは見えづらい。
「暗いなぁ」
待たせているため早くいかなければならない。
大きな明かりが見えてくる。
学校は夜でも明るいな。
目的地へは迷わずいけそうで良かった。
「夜の学校なんて久しぶりだな」
高校に入学してからは初めてだ。
敷地の中へと入り校舎へと進む。
「校内は暗いのか!?」
校舎の中は暗かった。
廊下には灯りがついていない。
非常口のランプしか光っていないのだ。
「学校に入る前はあんなに明るかったのに・・・・・・校門だけ明るいなんて不思議だ。俺の方が輝いている」
切り替えて昇降口を上がり約束した女の子に指定された場所を目指す。
そこに行くためには階段を四階分上がらなければならない。
窓から照らす月の光を頼りに登っていく。
四階に着くと廊下を進む。
目的地が見えてきた。
窓から外のテラスを覗き込む。
そこに待ち人はいた。
夜空を眺めながら・・・・・・泣いている!?
だけど———申し訳ない。
月夜に照らされて金色の髪が光を灯し、黒色の大きな瞳はブラックダイヤモンドのような高貴さを醸し出している。
絵になるような美しさだと感じてしまう。
しばらくの間、見惚れていた。
「え、えっ、えぇ!! 本咲!?」
「白姫さん」
涙を拭い慌てる白姫さん。
「いるんだったら声かけてくれればいいのに!!」
「・・・・・・」
かけられるはずかない。
だって、だってさ。
言えない、言うことはできない。
「キミが美しくて見惚れていたなんて伝えられるわけがない」
「ちょっ!? なに言ってるの!?!?」
驚きの表情を浮かべながら顔を紅潮させる白姫さん。
「はい?」
「記憶失くしてる!」
「失くしたのかなぁ」
「私のことめちゃくちゃ褒めてたよ」
「そう、なんだ」
まさか思っていたことが口から出ていた!?
嘘だろ言っていたなんて。
だとしたら、つまり、白姫さんに美しいと言ったのか?
そんなの恥ずかしすぎる。
「顔赤いよ本咲。私が可愛かった〜〜??」
自分も赤かったくせに立場が変わればこれだ。
「ちゃんとか言うなよ。あと顔も赤くない」
「ホントに〜? 写真撮って見せてあげたいな」
スマホを取り出すフリをする。
「やめてよ白姫さん」
白姫さんの手を握って阻止する。
もう写真はこりごりだ。
「恥ずかしがってるじゃん」
空いている方の指で頬をプクっと押される。
あんまり痛くない。
指の感触がしっかり伝わるだけだ。
「ほれほれ〜」
指をクルクルと回している。
頬に振動が伝わるがそのことより、無邪気に行っている白姫さんが微笑ましくその姿を追ってしまう。
「あっ」
手を握っていない反対の手で、頬をクルクルとしている手を止めると声を出す白姫さん。
「少しは元気になれた?」
「当然。少しどころか、超元気になれたよ」
鮮やかな笑顔をする白姫さん。
「ちゃんと伝えなきゃ」
見上げるように瞳を見てくる白姫さん。
「どう本咲、似合う?」
白姫さんは制服でなく私服だ。
青色のショートパンツに茶色の落ち着いたリネンシャツを合わせている。
いまをときめく女子高生というような着こなしだ。
「爽やかで白姫さんらしい。似合っているよ」
意図した本心だ。
「素直に似合ってるっていうのは嬉しい。だ、け、ど」
俺の手から離して、自身の腰に手を置く白姫さん。
「爽やかなのが私らしいなの?」
「らしいもらしい。最上級のらしい」
「なにそれ。でもね、似合ってるっていうのが嘘じゃないのはわかる。私はなに着ても似合うもん」
うわっー自分で言うんだ。
「自信高いな」
「本咲が褒めてくれたんだよ!?」
「そうかそうか」
「急に他人事!」
怒っているような口調だが、全く怒りは感じない。
むしろどこか嬉しいと感じてくれている気がする。
「学校があんなに暗い理由知ってる?」
「あぁ〜」
引きつった笑みを浮かべる。
「私がお願いして校門以外はできる限り暗くしてもらったの」
「またなんで」
「夜の学校ってさ、なんだか楽しくない?」
「は、はぁ・・・・・・」
「いけないことをしてるみたいで、暗ければ暗いほどよりそそるよ」
アドレナリンが出ているのか?
「お化けとか平気なタイプだ」
「肝試し、お化け屋敷、怪談話、なんでもこい!」
元気一杯だなぁ。
だけど精神的に苦しそうだったから、ここまで元気に回復しているみたいで安心する。
「ねね本咲。夜の学校にしかも私服なんてなんか危ない匂いがする」
「イケメンとあざとい女。危険すぎる組み合わせだ」
「本咲の私に対する評価はわかった」
ムスッとしている、悪い意味ではないんだけどな。
「俺は私服じゃないよ」
「いまから私服に着替える?」
「着替えを持ってきていないよ」
「じゃあ買いに行こ」
「アグレッシブすぎない!?」
急に服を買いに行くなんて発想が俺にはない。
「今回はありがと」
「突然だな」
「しっかり伝えたいから」
「感謝されるようなことはしていないよ」
「本咲はやるときはやる男だ」
強く宣言してくれているが、俺は・・・・・・。
「やれなかったからいまこんな結果になっているんだよ」
「自虐じゃん」
ニヤニヤと笑う白姫さん。
「辛いことでもあるの」
「・・・・・・ど直球だな」
「答えて本咲」
逃さない離さないという目だ。
優華や笹野内さんよりも、捉えて話すまで解放しないという蜘蛛の巣のような強さがある。
夜風が吹き、辺り一面が静寂の世界だ。
白姫さんの姿、声しか捉えることができない。
「オモイは口にしなければなにも伝わらないよ」




