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「俺たちが生徒会に入れば本当に噂は消えるの?」
生徒会長から約束はされた。
ただ本当かどうかは定かではない、入ったあとにそんな約束なんてしていないと言われる可能性もある。
「私たちが生徒会に入るのなら、絶対に噂は消えますわ。彼らが噂を流しているのですから、噂を消すことも彼らにはできるはずです」
「約束を守ってくれるのかな」
「大丈夫ですよ。彼はあなたがなんとしてでも欲しいようですから」
なんとしてでもか、確かに俺の魅力はダイヤモンド級ではあるけど・・・・・・。
「結果的には思う壺か」
こちらが生徒会に入るという選択は生徒会長からしてみれば、自分たちの取り引きに抗うことができず受けいれられたも同然。
自尊心やプライドというものを大いに保つことができる。
「私たちが行ったことは彼らにとって想定外のことでしょう。私たちの負けではないですわ」
想定外というだけ負けていないというのは無理がある気がする。
「仮定は違えど結局あいつらの取り引きに応えるんだよ。だからサッカー部にも入ることになる」
「それはないですわ。なぜなら、あちらの取り引きではなく、こちらの取り引きですから」
「こっちの取り引き? それって・・・・・・」
「相手の土俵ではなくこちらの土俵に持ち込むのです」
笹野内さんと俺が取り引きを持ち込むということは、相手の土俵ではなくこちらの土俵になるのか。
こちらが望むのは生徒会に入ることで噂を無くしてほしいというもの。
確かにサッカー部に入るという条件は持ち込んでいない。
あくまで生徒会に入るということのみだ。
「笹野内さんと俺の土俵になればサッカー部に入る必要はないのか。もし応じられなくても」
「そうです。応じられないのなら、断ればいいのです」
応じなければ取り引きはしない、俺や笹野内さんは生徒会に断固として入らない。
交渉決裂だ。
そうなればあちらとしては不都合。
俺を生徒会にいれられないから。
いれることのできる答えをもらえたのに不意にすることになるからだ。
生徒会がこの取り引きを拒み決裂して優華や白姫さんを退学させたら俺は絶対に入ることはない。
俺をどうしても欲している生徒会長には望み難い展開。
脅している内容を実行すれば、求めている俺が絶対に手にいれられなくなるからだ。
生徒会の脅しはこちらのピンチではなくチャンスになるのか。
俺が生徒会に入るというチップは、相手に対して絶妙な取り引きを持ちこむとのできる大きな武器になるんだ。
「相手の思惑通りにはいかないというわけだ。こちらとしては生徒会を変えるために、生徒会に入れるのだから、悪手ではなくむしろ最善手。こちらの思惑通りに行くのか」
噂を無くしてもらえる上に生徒会に入れるのだから。
ここまでよんでいたのか笹野内さん。
計画にとって大事なのは俺の可否。
俺が断れば彼女の思い通りにはいかなくなる。
けど断らせないため俺に約束を作ったのか。
笹野内愛、彼女には驚かされてばかりだ。
敵に回したら怖い。
「そうです。彼らの目的を利用して出し抜きます。この取り引きは引き分けに見えて、私たちの目的完全達成。つまり勝利なのですわ」
「だけど、もしかしたら入るように新しく脅される確率もあるよ」
「そのときはそのときです。また二人でなんとかしてみせましょう。ですが万が一、そんなことはありえませんが、生徒会に入ったことでどうしてもサッカー部に入らなければならないとなった場合。すみません、私が本咲くん専用マネージャーとして一緒に入るので許してください」
負けるとは思っていない。
けれど負けても俺に対するフォローはするつもりか。
専用マネージャー・・・・・・多くの人にとっては笹野内さんがその役所についてくれるのはご褒美だろうな。
「なにか特典でもあるの」
「紅一点の勝利の女神が癒してあげます」
「羨ましがられそうな特典だな」
けど、だとしても、やりたくない。
やったところで生徒会長が望むような結果を出せるわけでもない。
するだけ無駄だ。
そのフォローは無意味。
だが了承した手前断ることはできない。
仮にサッカー部に入れられたとしても、笹野内さんに文句を言うことはできない。
まさか・・・・・・彼女はそれすらも狙っているのか。
「サッカーとも向き合いませんか?」
「部活に入ったなら無理にでもそうなるよ」
フフフと笑う笹野内さん。
冗談半分本気半分と捉えられただろう。
俺が生徒会いりを決めた時点で彼女は勝ちが決まっていたんだ。
「気になっていたんだけどさ、笹野内さんはなんで生徒会に誘われたの?」
「学年成績トップですから」
「それが条件なんだ」
「運動神経もありますから」
「それも条件なんだ」
「なにより可愛いですから」
「それは条件なんだ?」
「はい条件です」
「なら俺は余裕で合格だ」
「あなたは本咲強助だからですか?」
「よくわかってるな」
「一緒に頑張りましょうね本咲くん」
「ガン無視ですか!?」
クスクスと笑う笹野内さん。
もっとも信頼をして、もっとも疑わなければいけないのは彼女なのかもな。
これも全て放課後の生徒会次第ではあるけど。
「全てはあとでわかる」
教室に戻ると視線を感じる。
噂に対して違うという噂を流すのはあまり効果がないみたいだ。
今回とは全く関係のない、新しい違う噂を流した方がいいか。
火消しとしては効果が十分期待できる。
けれどそれでは根本的解決にはならないよな。
その一瞬の大きな話題、トレンドではなくなるだけで、噂というのは流されたら一生ついてくる。
消すことのできない印象だ。
だから結局生徒会の人たちを頼らなければいけなくなったわけだもんな。
生徒会長天上帝、副生徒会長西蓮寺春兎。
あの二人はなにをオモイ、どんな考えを持って生きているんだろう。
授業が終わりバックを肩に背負い、席から立ち上がって生徒会室へ向かう。
目前まで迫るその道中、女の子二人が横を通った。
ほんの僅かに俺の方を見てなにかを呟いていた。
助けて、そう聞こえた。
後ろを振り返るが特段おかしな様子ではない。
空耳だったのかな。




