特別な才能
「お前が・・・・・・天才だからだぜ」
ヘラヘラと笑う副生徒会長西蓮寺春兎。
「隣にいる女笹野内愛もだ。仲良くテメェら二人は生徒会に知られている有名人ってことだよ」
「天才だから有名。どういうことなんですか?」
「生徒会に入るべき存在。簡単に言えばそういうことだ」
生徒会長天上美冬が口を挟んだ。
「本咲強助。生徒会に入れ」
それはあまりにも突然に、淡々と告げられた。
「あまりにも急ですね。天才だから生徒会に入れと言いたいんですか」
「あぁ」
「いま突然誘おうと思ったというわけではなさそうですが・・・・・・前々から生徒会に勧誘しようと思っていたんですか」
「そうだ。そして偶然お前が今日ここにきた。だからいま誘った」
「偶然ですか。俺には必然のように思えますけど」
おそらく生徒会長は俺がここにくることを予測していた。
「残念だが偶然だ」
動揺一つ見せないその姿からは嘘をついているかどうか見抜けない。
ただ偶然ではないと強く感じる。
「黒妃優華を生徒会に勧誘したこと、白姫波音羽と繋がりある人物が生徒会にいること、本咲強助を知っていたこと。今回の噂に関わる全ての人物の存在を初めから認識していたんですよね。なら今日ここにくるということを想定していてもおかしくはありません」
「なんと言おうが偶然ということに変わりはない」
頑なに姿勢は崩さないか。
「私と本咲くんに生徒会入りしてもらいたい。そのことに嘘はなさそうですね」
いつのまにか副会長に組まれた腕から離れている笹野内さん。
生徒会長の方に向かって進む。
「ですがその前に、天才だからといってなぜ生徒会に入らなければいけないのか。私たち二人が天才だと判断を行った理由。それら二つの説明をお願いしますわ」
「いいだろう」
机に戻っていく生徒会長。
「春兎椅子を出せ」
「人使いあらいなぁ〜天上さん。俺はメイドじゃないんだぜ?」
「あらそうなんですね。メイド服姿似合うと思いますよ」
「確かにな。俺はなんでも着こなすし、愛ちゃんよりも似合うだろうなぁ〜」
笑顔だが明らかに怒っている様子の笹野内さん。
副会長は俺から肩を離し目の前にいる彼女を一瞥したあと椅子を取りに行った。
明らかに副会長が言っていることは間違っているな。
笹野内さんのメイド服はたぶん副会長よりも似合うと思う。
というか単純に見てみたい。
「なにを考えているんでしょうか?」
「なんでもないです」
「顔を逸らさないでください。やましいことを考えていた訳ではないのですよね?」
考えていたこと全てわかっているではないか。
「本咲くんだったら別に見せてもいいですよ」
大きく見開いた目をウルウルと揺らしながら顔を若干傾けて提案してくる笹野内さん。
やっぱりわかっている。
それにそういう顔は反則だって。
「生徒会室で堂々とイチャついてんじゃねぇよ」
パイプ椅子を二つ投げられる。
重量があり距離も結構あったが凄い勢いで飛んできた。
並の力じゃない。
「・・・・・・可愛げねぇな。なに平然な顔でキャッチしてんだ」
不機嫌そうな副会長。
「これが噂の天才さんか」
「・・・・・・」
「俺は忘れ物したから取りに行ってくるぜ天上さん」
手をヒラヒラと振りながら生徒会室をあとにする副会長。
その様子を見たあと、パイプ椅子を生徒会長のいる机の前まで持っていき二つ共広げ座る。
「これを見ろ」
副会長を気にした素ぶりも見せずタブレットを机から出す生徒会長。
パネルをタッチしてあるファイルを提示する。
「この天上磨学園がどのような学校なのか知っているか」
首を横に振ったが隣を見ると笹野内さんは全く反応していなかった。
「笹野内愛。お前はわかるだろ」
知り合いなのだろうか。
先程から距離感が近しい気がする。
「天上磨学園。様々な分野で秀でた才のある者だけがこの学園からの推薦で入れる高等学校」
笹野内さんが機械的に呟く。
「故に天才が集まった学校だ」
この学校はそういう学校なのか。
担任の先生と母さん。
古い知り合いだという二人に決められて入った学校なため、事前知識はなく学校の概要について知らなかった。
「つまり入っているからには、なにかしらの才能があるということだ。おまえにはなんの才がある本咲強助」
「特にありませんね」
「才がないとしたらこの学校に僅かにある一般枠だが、あれは試験で高い点数を取らなければ入れない。なのにお前は学園のテスト上位にいなかった。一体どういうことだ。あえて点数を取らなかったのか? いや違う。お前は一般枠ではない、推薦枠だ。そして、その推薦というのは・・・・・・」
ファイルが開かれる。
そこには昔の俺の写真。
「全部知ってんだよ、お前のことは。下手な嘘はつかない方がいいぜ」
なにかを投げられる。
避けると投げられた物を生徒会長が掴んだ。
「お前には特別な才能があるだろ。なのになぜその力を発揮しない。才能あふれる者がなぜ約束された地位を手に入れないんだ」
「申し訳ないですが、才能について話したいわけではありません。俺と笹野内さんはあなたが噂を流した黒幕なのかどうかを聞きにきた。そして噂を止めてもらうために」
才能だという曖昧なものについて話す気はない。
俺にはそのようなものはないしな。
「取引をしよう」
「どういったものですか」
本咲くんと隣から声をかけられる。
でも気にせず聞いた。
「噂が事実ではないということを広め、噂を否定するために生徒会が動こう。二日三日あれば終わる」
とんでもないことを口にしたな。
簡単に噂を否定するか。
影響力が絶大すぎる。
だから嘘ではないのだろう。
ただ・・・・・・それはもう自分たちが噂を流したと認めているようなものだがな。
「その代わりお前は生徒会、そして、サッカー部に入れ」
手にあったサッカーボールを俺の目の前に置いた。




