天才と呼ばれる男
「天上帝、あなたが生徒会長ですか」
中央から分かれ、キッチリと綺麗な形を作っている茶色のセンター分け。
制服もシワや汚れ一つなく貫禄が出ている。
美形な顔に細いがしっかりと筋肉がついた体。
なにより力強く鋭さを持つ赤色の瞳。
生徒会長としてどれくらいの実績を残しているのかはわからないが、人としてのオーラやカリスマ性を感じる。
「あぁ」
冷徹な声に宿る強い力を感じる。
「聞きたいことがあり訪れさせていただきました」
「要件を言え」
「現在ある一年生たちに起きている問題をご存知でしょうか?」
「流れている噂のことか」
知っているんだな。
そうなれば話は早いが逆に言えば、黒幕である確率も上がる。
「ご存知でいらしたのですね」
笹野内さんが勘繰るように聞く。
「ここは生徒会だ。天上磨学園に関わる事柄や情報は全て集まる」
「誇り高き生徒会・・・・・・ですか」
「そうだ」
プライドが高そうな男だが、飾りでなく自信から作られていることがわかる。
「ではそんな誇り高き生徒会長さんに伺いたいことがあります」
微笑みを浮かべながら煽り口調で語る笹野内さん。
「噂を流した人物に心当たりはありませんか?」
「生徒会だ。噂が誰に流されたのか知っていて当然だ」
「フフフ、そう仰っられると思いましたよ。なぜなら流した人物は———」
後ろに迫る気配を感じた。
「おっと」
笹野内さんに向かってくる手首を掴んだ。
「やるじゃねぇか」
続けて反対の手から素早い手刀が俺に向かって飛んでくる。
それを払い除けた。
「へぇー、意外と力あるんだなぁ。嬉しいぜぇ〜」
言葉と同時に頭突きを行おうとしてくるが避ける。
それと同じくして、俺が掴んでいた相手の腕も手から離して、体勢を崩れさせた。
だが、体幹の強さを見せ崩れていく中で体を踏ん張り、目の前にいる男は俺に対して更に殴りかかろうとしてきた。
「そこまでにしろ春兎」
動きが止まる。
「もう少し楽しませてくれたっていいじゃないですかぁ、天上さん」
「余興はもう十分だろ」
「供え物ぐらいに思っていましたけど、副菜レベルだったのでもっと味わいたくて」
嘲るように笑っている。
「その陳腐な癖は早く治せ。お前も副生徒会長ならな」
目の前にいるこいつも生徒会なのか。
おまけに副生徒会長。
大部荒っぽい人が任されているんだな。
このような人物が務まるなら、俺も余裕でなれる。
「フッ、そっちの方が可愛げがあるじゃないっすか」
ヘラヘラと声を出しながら生徒会長に答えたあと、俺と笹野内さんの方を見てくる。
「紹介が遅れたなぁ。俺は副生徒会長、西蓮寺春兎だ」
チャラついた雰囲気で高々と語る男。
金色でパーマがかかった髪。
ネクタイを緩く締め制服は第二ボタンまで開けている。
指輪、ピアス、ネックレスと装飾品を複数つけていて、生徒会長と違い派手な見た目だ。
だが生徒会長と同じように目には独特の力を感じる。
違うのは淀んでいるように見える真っ黒な瞳。
生徒会長が突き放すよな瞳だとしたら副生徒会長は引き込むダークホールのような瞳をしている。
「お前本咲強助だな。その傷は最先端のファッションか?」
「生憎オシャレ番長ではありませんよ。それにしても、自分の名前を知ってくれているんですね」
「それはなぁお前は有名だから。ですよねぇ、天上さん」
反応を示さない生徒会長。
俺が有名?
なぜなんだ。
というか、天上か。
「・・・・・・天上って」
「えぇ。天上美冬くんのお兄様ですよ」
あいつの・・・・・・。
「美冬とダチなのか?」
「いえ俺は違います」
「私は仲の良い友人の一人ですね」
「へぇ〜そうかそうか」
「どうしました?」
「知らない仲じゃないんでな」
ハハッと息をこぼす副生徒会長。
「それよりもさ有名人くん。知ってるかお前のクラスに俺の許嫁がいるんだ」
舐め腐った瞳をしている。
「必要な情報なのでしょうか?」
微かに笹野内さんから怒りを感じる。
「雑談さ。どうせ硬い話をするんだ。その前くらい話してもいいだろ」
「やめておけ春兎。話が長くなるだけだ」
右手を軽く振って少し不満を見せるがそれ以上騒ぐことはしない副生徒会長。
こんな雰囲気を出しているが生徒会長には逆らえないんだな。
「要件を言え」
「ありがたいです生徒会長天上帝さん。そして・・・・・・噂を流した黒幕さん」
笹野内さんがストレートに聞く。
ここまで素直に告げるとはオモイも寄らなかった。
「へぇ〜」
乾いた笑い声を出す副生徒会長。
「それを言いにきたのか」
組んでいた手を解き椅子から立ち上がる生徒会長。
背丈が高く、より圧を感じる。
「予想とは異なりましたか?」
「全く考えに及ばなかったな。噂など低俗な与太話を俺が流したと告げられるとはな」
堂々とした態度でゆっくりと歩き出す。
「噂話というのは多くの人が好きですから、特段おかしいことではないですよ。週刊誌やリークといったものが無くならず文化として残っていることが証明しています」
「多くの人という枠に俺が入るのか」
俺と笹野内さんの目の前までやってくる。
「笹野内愛。お前は俺をそのように評しているんだな」
「嫌でしたか生徒会長さん」
生徒会長が腕を少し上げたため、笹野内さんの前に入る。
「お前はボディガードか本咲強助」
「いえパートナーですよ。だから暴力を振るおうとするなら止めなければいけないんです」
「おかしな奴をパートナーに選んだな笹野内愛」
「本咲くんは生徒会の中で有名人なのでしょう。立派な人選ではないでしょうか?」
会話の中に探り合いが見える。
「ところで生徒会長。なぜ俺は有名なんですか?」
後ろから副生徒会長が俺と笹野内さんの肩に腕をかけてくる。
腕が伸びてくる気配がまるでなかった。
俺が背後をとられるとは、副生徒会長にも気は配っていたのだがな。
「お前が・・・・・・天才だからだぜ」
副生徒会長が含みを持たせながら呟いた。




