噂を流した犯人
女の子と女の子の部屋に二人きり、普通ではいられない状況。
だけど、甘い雰囲気は一切なかった。
鋭い緊張感がひたすら漂っていた。
「噂を流した人がわかったの?」
確信めいた表情をする白姫さん。
「この前の金曜日、教室に入ったときに話してる女子二人組がいたんだけどね、その二人がファッションとか言ってた」
目に圧を込める。
「あの二人が怪しい」
許せないオモイが伝わってくる。
「二人が白姫さんに恨みを持つようなことに心当たりでもある?」
「わかんないな。あんまり会話したこともないし、顔と名前だけ覚えてたって感じ」
なにかしらの逆恨みってとこか。
もしくは快楽的な人物で特に意味もなくやったのだろうか。
「白姫さんは噂を流した人物を知りたい?」
「知りたいな」
「そっか。なら判明させよう」
流した人物を見つけるなら白姫さんの意思が大切だ。
俺自身は誰が流したかにこだわりがなかった。
噂を無くすために動くだけだ。
けど彼女が望むのであれば探す。
噂を止めると、優華と白姫さんを助けると決めたから。
「白姫さんが怪しいと思うその二人はクラスでどういう立ち位置だった」
「クラスメイトだよね。本咲は知らないの?」
「興味ないから」
「興味とかそういう問題!?」
「俺のことは話と関係ない。白姫さんの話を続けてほしい」
言ったことに嘘偽りはないが信じ難いよな。
「そだよね。確か・・・・・・いつも二人で固まって教室の隅で話してる女の子達だと思う。他に仲良い人がいる様子でもなさそうだし、話しかけたら言葉は返してくれるけど、話を発展させようとはしてくれなかったかな」
明るい系のグループではない。
ということは明るく賑やかな白姫さんグループに日頃から怒りが溜まっていたのだろうか。
なにか引っかかるな。
「写真とメッセージを送ってきた差出人の名前はなんて書いてあった」
「なんにも。空白で名前欄になにも書かれてなかった。全く知らないアカウントから突然送られてきたの」
誰かわからない謎の人物からの脅迫。
優華に送り、SNSに流した人物と同じだと見て間違いないな。
正体は白姫さんの言う通り静か系のグループに所属している二人・・・・・・聞いている情報を集めるとそうなるのか。
けどそれは単純な気がした。
「おそらく流したのは二人かもしれない。でも、噂を流した人物は他に・・・・・・真の黒幕は他にいると思う」
「嘘でしょ」
「信じられないかもしれないけどおそらく」
「どうしてそう言えるの?」
驚いた様子で聞いてくる。
「噂を流したのが仮にその二人なら、ここまで広がっていないと思うんだ。噂には拡散する側も必要だと思うから。けど聞く限りでは拡散できるほど交流している様子はないし、無理矢理ネットに載せても、そう簡単に載せてから一日二日でたくさんの人の目につけられるとは思えない」
写真の広まる早さが不自然だ。
実は裏ではたくさんの人と交流していたとなれば信ぴょう性も上がるが・・・・・・そう都合よく捉えていいものなのだろうか。
もちろんそうであれば、犯人探しもすぐ終わることになるから、こちらとしても楽ではあるのだけど。
「意外と見られるものなんじゃないの。それにバズるときって一瞬だし」
多くの人に見られることを言っているんだよな。
妹の七夏実から聞いた言語だから自信がない。
「だけどコミュニティが狭すぎるよ。この学校に所属している人にしかわからない写真だよ」
大した需要がないのにたまたま目にした人が拡散するとは思えない。
「そうだけど・・・・・・」
言い淀む白姫さん。
「気になることでもある?」
「ない!」
身を乗り出して言ってくる。
隠していることがあるかもしれない。
「白姫さん?」
「ホントにない。ただ私のことを知ってる人には、この写真わかるなって」
「それはそうだよ。けどそれがなにか関係してくるの?」
「だから言いたくなかったの!! 当たり前のこと思っただけだから!!」
白姫さんが口を真一文字に結んでムスッとした顔になる。
「ごめん。強く言いすぎた」
「私こそごめん。気にしないで。本咲は犯人を見つけるためにいろいろ聞いてくれてるんだから、私に謝ることなんてしなくていい・・・・・・」
言い淀む白姫さん。
普段なら聞かないけど。
傷つける覚悟。
また持つべきなんだろうか。
少なくともいま持つべきだよな。
「もし傷つけたらごめん。だけど聞かせてほしいんだ」
しばらくしたあとうんとゆっくり頷く白姫さん。
「隠していることない?」
「ほんとにないから、ほんとにない。ただ・・・・・・不安になっちゃったの」
ポツポツと言葉を吐き出す。
「本咲と話して今回のことが計画的なものだったとわかったらさ、誰が私のことそこまでするくらい良く思ってないんだろうなって。私のことそこまで嫌うんだなーと思って」
追い込んでしまったのか。
でも笹野内さんと、駒下さんと、優華との約束なんだ。
それを受けてここで止まれない。
「白姫さんは噂を流されても気にしない。あくまで自分は自分。いつでも自分を貫き通す女の子なんだと正直判断してた。だけど今回学校休んでた。もしかして精神的にかなりきつかった?」
「それはそう。当たり前。怖くて。噂を流されたり、悪口を言われたりすることはいままでもたくさんあったから気にしない。でもさ、写真と一緒に拡散されるっていうのは初めてで。それで、たくさん嫌な言葉を吐かれるのも初めて。ホントにきつかった。気にしないのは無理だったな」
普段なら気にしないことも、状況を変えるなにか大きなことがあればそうも言ってられなくなる。
「だから学校にもいけなくて。周りのみんなからの視線が、どんなオモイで誰がなにを知って私を見ているのかわかんなくて。私がなにを言っても信じてもらえなそうだし・・・・・・」
震える声と口。
揺れる目。
そして崩れていく表情。
あのときの、四年ほど前の俺と同じ。
「普段は気にせずいられるんだけどな・・・・・・写真があると本当に怖いや」
不安と共にポロポロと流れる涙。
そっと拭うと俺の胸元に寄りかかってくる。




