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怪しい関係






 白姫さんの家に踏み入れる。

 靴を脱ぎ様々な動物のキャラクターが施されたマットの上に立つ。

 緊張から心臓が揺れているのを落ち着かせるために、鼻から酸素を体に入れ込んだ。

 すると家の香りも一気に入ってきた。

 ミルクのふんわりとした甘い香りとラベンダーのスッキリとした朗らかな香りが鼻腔をくすぐる。

 品が高い内装の家だ。

 

「さっきから聞いてみたいことがあるんだけど」

 どこか怒っているように見えるため、観察されていたかもしれない。

 立ち止まって深呼吸をしながら家の香りを嗅ぐのは、周りから見たらいいようには思わないよな。

 というか、ただの変態だ。


「その怪我なに」

 予想していた言葉と違い戸惑う。


「まさか、私のため?」

 冷たく暗い声をしている。


「違う違う。そんなことはないよ。ちょっと転んで」

 白姫さんのためといえば半分くらいはそうだ。

 だけど無駄な心配をかけたくなくて軽い嘘をついた。


「ほ、ん、と、にーー??」

 距離を詰められ手首を握られる。


「痛っ!」


「ほらただ転んだにしては無理がある」

 

「ちょっとではなくて、盛大に転んだかも。でも心配はいらないよ。貼ってある絆創膏やガーゼの多さに比べて元気そうでしょ?」


「私の目には絆創膏とガーゼの数、少ないように映ってるけど」


「あーえーっと」


「服の中は傷だらけなんだ」

 失言をしてしまった。

 体中に怪我をしているため多くの箇所に貼っている。

 けれど長袖のシャツを着ているため他の人からは見えない。

 見られているのは顔や口の絆創膏とガーゼ、傷だけだったのだが多いと言ってしまった。


「私のせい?」


「違うよ白姫さんのせいじゃない」


「少しでも私が怪我した理由に関わってない?」

 答えられず目を逸らしてしまう。


「やっぱりそうだ」

 白姫さんが玄関から直接続くリビングまで歩き始める。

 普段の白姫さんとは違い元気がなく弱気だ。


「お詫びはするから」


「そんなの別に・・・・・・白姫さんのせいなわけない。俺が勝手に怪我しただけ」

 じっと立ち尽くす白姫さんの元に寄る。


「位置的に不可能な場所を目指して跳んだらこの有り様になった。俺がかっこよくないだけだ」

 優華と強引に会おうとした結果の傷だ。


「つまり・・・・・・のぞきでもしようとした?」

 半分正解なことを言われドキッとした。

 考えてみると部屋に飛び移って相手が出てくるのを待つのは、覗きよりも悪質かもしれない。

 怪我をして当然のことをしているな。

 

「そうですよ。本咲くんは己の欲望に抗えず覗きを行おうとしました。その結果ご覧のような罰を受けたのですわ白姫さん」

 俺を遮り後ろから笹野内さんが助け舟を出してくれると思ったが、破壊するようなとどめの一撃に近いことを言われた。


「だいぶ脚色きゃくしょくしてない笹野内さん!?」


「事実を伝えているだけですわ」


「たとえ嘘でも笹野内さんが言うと事実のように聞こえなくもないから。早めに否定してほしいんだけど」


「命令ということでしょうか?」

 一瞬にして目を潤ませ命令に逆らえないペットのような雰囲気を出す。

 慌てふためていている俺で遊んでいる。

 これではまるで、ペットは俺だ。


「そんなことしないよ。ただ否定していただけるとありがたいというか」


「本咲くんの命令でしたら仕方ありません」


「だから命令ではないよ!」

 俺が焦っているのを見てテンションが上がっている笹野内さん。

 表情の僅かな隙間から見せる彼女の態度で伝わってくる。

 彼女はただのお嬢様ではない。

 ドS令嬢だ。


「じゃあその話を聞く限り本咲くんが笹野内さんのことを覗いた結果、笹野内さんが本咲くんを撃退したの?」


「そういうわけじゃ・・・・・・」


「だけど本咲くんがこの話をすることを許さず、話してはいけないと命令したから、笹野内さんは黙っていた。そういうこと?」


「細かい点は違いますがおおまかに言えばそうですね」

 顔をしかめてドン引きした表情をする白姫さん。


「全く違うよ白姫さん!?」

 本気で勘違いされているのかもしれない。

 早急に否定しないと。


「二人はそういう関係なの」

 そういうとはなにをイメージしているんだ。

 

「どういう関係のことを言っているかはわかんないけど、いままでのは全て冗談だから・・・・・・」


「はい。白姫さんが言うような関係性ですよ」

 腕を組まれ笑顔を作りアピールする笹野内さん。

 明らかにいつもより、こういった状況と俺の反応を楽しんでいる。


「ちょ、ちょっと」


「幻滅されましたか?」

 白姫さんは特に表情を変えず黙って俺と笹野内さんを見る。


「二人がそういう関係だったなんて知らなかったから驚いただけ。でも良かった私が理由で怪我したわけじゃないと知れたから」

 リビングに続くドアへと手をかける。


「詳しくは中で話そう」

 先に部屋へと入っていく白姫さん。


「どうするの絶対に勘違いされているけど!?」


「でしたらあとでしっかりと否定しましょう」

 まるで予想通りとでもいうような態度だ。


「・・・・・・なんで過剰に俺をからかっていたの」


「面白い反応が見たかったので」


「駒下さんと一緒に俺をからかっているときよりも明らかに楽しんでいた。それに俺の反応ではなく白姫さんの反応を探っているようにも感じたよ」

 不可解な点が多かった。


「目的や狙いがなければ変なくらいに」


「流石ですわ本咲くん」

 

「なにを行っていたの」

 組んでいた腕を離し口を開く。


「白姫波音羽さんの真意を探っていました。彼女が本咲くんに対して、どのような感情を抱いているのかを知りたかったのです」

 そういうことか。

 笹野内さんがなにを考えていたのか見えてきた。


「動機を探っていたんだ———白姫さんが・・・・・・噂を流す目的の」

 口角を微かに上げる笹野内さん。


「笹野内さんは白姫さんが噂を流した人物だと疑っているんだな」



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