華の女子高生
俺も噂は違うと数少ない知り合いに連絡を送った。
というか一人だけだ。
たった一人の男友達に連絡をした。
だから俺に関してはほぼ効果がないだろう。
友達が少ないのはこういう所に支障が出るな。
笹野内さんも複数に連絡を送りますと言っていたが誰に、何人に送ったのかは結局わからなかった。
俺はそのこと以上に、笹野内さんが反応していた生徒会について気になっていたが、聞けずじまいになっている。
タイミングを見失い、いまは白姫さんの家に向かうため電車に乗車中。
揺られる。
遠いみたいだ。
それは仕方ない。
なにも問題はない。
だけど・・・・・・乗っている最中に問題が起こるとは思わなかった。
「お腹減った〜〜」
左隣から断末魔に近い声が聞こえてくる。
「空腹こそ一番のスパイスだ」
お腹が減れば減るだけ次食べるご飯が美味しくなる。
「困り事でしょうか」
右隣からからかいが含まれた心配の声が聞こえる。
「なにもないよ」
嘘です。
今起きていることが問題です。
人によってはご褒美であると思う、両手に花と呼べる人が隣にいる。
だけど心が落ち着かないため、あまり喜ばしいことではなく、勘弁してほしい気持ちがあった。
なんで隣に座っているかといえばわからない。
自然と駒下さんと笹野内さんが俺を間にして座った。
他の座席に座ろうとすればなぜ、という顔で見られ、逃げ場はなくその場に腰を下ろすしか選択肢はなかった。
「笹野内ちゃんって電車乗ったことあるの?」
「ありますよ」
「へぇ〜イメージなかった」
「ですが乗り慣れてはいませんから掴まらせてください」
左手をそっと出し俺の右手に重ねてくる。
わざとやっているのかあざといなぁ。
「手すりがありませんから」
ギュッと重ねた手を閉じる。
柔らかくて温かいものに包み込まれる感触が右手を襲った。
なにかいけないことをしている気分になる。
「そっか本咲くんに掴まればいんだ!」
「なにを・・・・・・っ!?」
左腕に感触がくる。
より強い力と暖かさ、そして柔らかさがあった。
刺激的すぎて耐えられそうにない。
「このまま行くの?」
「なにか問題でもありましたか」
大アリなんですけど!?
笑みを浮かべる笹野内さんにニヤニヤしている駒下さん。
二人ともわかってやっている。
俺がこういうのに慣れていなくて、照れるのを面白がっている。
ここで負けてはいられない、そう感じて仕返しを図ることにした。
「問題ない。捕まっていなよ」
「頼もしいですね。でしたらこのまま行きましょう」
「ゴーゴー! 目的地まで行こう!」
二人共恥ずかしくないんだ!?
俺の見積もりが甘かった。
仕返しのはずがよりダメージを受けることになる。
「この三人で一緒に電車を乗るなんて想像してなかった〜。今回のことがなければありえなかったんだろうな〜」
駒下さんが腕を離す。
だが緊張は終わらない。
右隣の人は手を離していないからだ。
「笹野内ちゃんってどれくらいのペースで電車に乗るの? まえに車で送り迎えされてるのを見たから、学校には電車で通ってないよね?」
「通学は車での送り迎えが多いですね。なので、稀ではありますが、休日の際使用させていただいています」
どんなにお嬢様でも電車には乗る。
言葉にこそしていないがそういう意思を感じた。
「だったら今度一緒に出かけよ!」
「構いませんよ。私も華の女子高生ですから」
「華って古臭い」
面白い冗談だねと笑う駒下さん。
「本咲くんも一緒にですわ」
「俺も?」
「祝勝会というものです。聞いていただけますよね」
有無を言わせない女王のような圧に恐怖を感じる。
「良かったです。了承していただけて」
「していないけど!?」
「目が肯定していましたよ」
怖がっていただけなんだけど。
ただ、ここで否定すると良くないことが起きる気がする。
現に右手がものすごく痛い。
目を向けると強烈につねられていた。
まぁ痛い姿も絵になるけどな。
「良かったですわ。喜んでいただけて」
喜んでいない。
むしろ痛くて抜け出したい。
絵になるからといって決して喜びはない。
あったら俺はど変態だ。
「・・・・・・」
より力を強められる。
華奢な体にここまでの力があるなんて恐ろしい。
そんなこと言っている場合ではないな。
どうにかしないと笹野内さんは離してくれなそうだ。
「駒下さんがいいなら」
「私はいいよ!」
別の人に助けを求めてはいけなかった。
「決まりですわ」
痛みからは解放されたが、行くことは決まってしまう。
「断るのは・・・・・・」
「酷いことを仰られますね本咲くん。乙女を裏切るとあとが怖いですよ」
いま既に十分怖いです。
「本咲くん覚悟決めよ」
その一言が終わりの合図だった。
白姫さんの最寄り駅に着くまで駒下さんと笹野内さんがどこに行こうかと盛り上がっていた。
波乱が起きないと良いけどな。
「よーっし、駅についたね。ここから少し歩くよ」
改札から出て、促されるまま駒下さんの後ろをついて行く。
「噂のこと連絡を送った人から返信きた?」
「何人かはね」
「どうだった」
頬を上げてむず痒そうな表情だ。
「なんとも言えない感じ。噂は違うって伝えたら、わかりきってるわ!! みたいな風に返信がきたから、噂は違うことを拡めてって伝えた。できる限りやってるみたいなんだけど・・・・・・あんま上手くいかないみたい」
顔を下に向けて落ち込む駒下さん。
「時間がかかるのはわかるけど不安だなぁ」
「簡単には上手くいかない。でもその行動こそが大事なんだよ」
駒下さんはなにも悪くない、むしろ良い行動をたくさんしている。
言葉をかけたあと、笹野内さんの方を見ると軽く微笑んでいた。
「うん!!」
駒下さんの満開の笑みは向日葵のように明るく感じた。
その後も返信のなかった人達から駒下さんに、徐々に連絡が返ってきたが上手くいっていないみたいだった。
他にも連絡できそうな人がいないか駒下さんに確認をしてもらっている間に、俺と笹野内さんも携帯を確認したがまだ誰からも返事はきていない。
笹野内さんと噂を無くす案を少し練り直していると、白姫さんの家についていた。




