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一枚の写真






「とりあえず飲み物頼みなよ」


「うん、アイスティーで」

 絵になる男にはこれだろう。

 注文を済ませ向き合う。

 目の前にはギャルの女の子がいた。

 名前を呼ばれたが俺は知らない。

 そのため気づかない振りをしたが、店員さんにお知り合いですかと言われ、ここで否定すれば目の前に座る女の子がまた俺の名前を呼ぶなどして、他のお客さんから視線を集める。

 黙って店員さんに案内されることにした。


「おかしなお客さんだと思われるわけないじゃん」

 目の前に座る制服姿でカーディガンを腰に巻いた女の子は爆笑している。

 店にいるオシャレな格好をした女性や、制服姿の高校生に注目を浴びているため、やめてもらいたい。


「そうかもしれないです」

 完璧に俺は浮いている。

 店の中で明らかに孤高の存在になっている。

 一人だけ良い意味で場違いになっているだけで、悪い意味で場違いになっているわけではない!


「しれないじゃなくて、そうだよ」

 自分の太ももを叩いてさっきよりも笑う彼女。

 静かにしてと言っても笑うのをやめなそうだから、ここは話題を変えたほうがいい。


「自己紹介とかしてもらえますか。初対面ですよね?」


「はっああ!?!?」

 目の前に顔を近づけてくる。


「同じクラスなんだけど名前覚えてないの?」

 地雷を踏んでしまった。

 正直クラスメイトの名前は覚えていない。

 覚えている人は僅かだ。


「それはその・・・・・・」


「は〜〜ん。本咲くんってそういう感じなんだ。よくわからないとは思ってたけど、もっとよくわからないわ〜」

 前のめりになっていた女の子が自分の席に戻っていく。

 その際、たゆんと揺れる。

 戻ったあとも、顔や手を動かしながら不快な反応を示すと同時に彼女の大きなふくらみが跳ねた。

 制服のシャツ越しでもわかる。

 こんな人っているんだ。

 初めてに近い衝撃だった。


「まぁいいや。仕方ないからもう一回だけ自己紹介してあげる。次はないからね! 駒下雅こましたみやび。好きなことはお菓子作りといろんな花を育てること。嫌いなことは勉強と早起き。特技は・・・・・・いろいろ。裁縫さいほうとか折り紙とか、映える写真を撮るとか。まぁ、そんな感じ」

 ピースを横向きにして俺に向けてくる。

 紹介されてみてわかった。

 ノリやテンションが全く合わない。

 もしかすると白姫さん以上に話すことが難しいタイプかもしれない。


「あー」


「反応薄っ!?」


「学校よく休んでる人ですよね。来るとしても遅刻ばっかで、先生に目をつけられている・・・・・・」


「それ以上は言わなくていいから!!」

 口を手で押さえられる。


「意外と私を覚えてるじゃん」

 手を離し不満顔になる駒下さん。

 少し恥ずかしそうにしている。

 このギャップは可愛いな。

 素直にそう思った。


「いらんことばっかりね」

 

「キミを知る上で大切な情報だと思ったんですけど」


「女の子には知らなくていい情報もあるんだよ」

 そうなのか。

 女の子は奥が深いなぁ。


「でもとりあえずありがとう。今日は私が一方的に呼んだのに来てくれたから」


「一方的に呼んだとは?」


「笹野内さんが本咲くんを呼んでくれるっていうから頼んだ」


「俺は笹野内さんが放課後に話したいことがあるって言うからここに来たんですけど」


「えっ!? じゃあなに。嘘ついたってこと?」


「そうなるかもしれないです」

 笹野内さんが来ていないのにはわけがあったのか。

 はぁぁ、騙されたなぁ。

 おまけにクラスで悪い意味で目立つギャル子と対面しなければいけなくなったしなぁ。


「まじか・・・・・・ごめん!! ホントは私が本咲くんを呼んだんだ。なのに、私勘違いして言ってた」

 頭を下げる駒下さん。

 笹野内さんが行ったことでむしろ彼女は被害者なのだから謝る必要はない。

 律儀りちぎで優しい子だ。

 さっきから良い意味でのギャップが多い。

 

「勘違いなら仕方ないですよ。というか勘違いさせたのは笹野内さん。どんな理由があってこの状況を仕組んだのかはわからないけど、駒下さんは悪くないです。お互い騙された側なんですから、頭を上げてください」

 苦手な子だと思ったけど案外優しい子なのかもしれない。


「ありがと。ならさ一つ言わせてもらうんだけど、その敬語やめてくれない。同い年なのにタメ語じゃないのは気持ち悪くて」


「それは、なんというかですね・・・・・・」

 体に染み付いている癖みたいなものだから作為的な理由があるわけではない。

 初対面でタメ口で行ける方が俺的には抵抗がある。


「バカにしているとかでは決してなく、初対面に近い人にタメ語で話すのが難しいだけなんですよ」


「これからも敬語なの?」


「ある程度話したらタメ語になっていきますね」


「そんなに待てません!! いまから私にもタメ語ね。三、二、一、はい!!」


「そちらも敬語使ってません?」


「あ! いや、これは違くて・・・・・・その、ごめん!! 私もしないから、一緒に、ね?」

 強気な子が弱気でお願いするの、やっぱりギャップで可愛い。


「わかりまし・・・・・・わかった」

 半ば無理矢理タメ語にさせられる。


「それでよし。じゃあ話に入るね」

 緩急が凄まじい。

 あと俺は話を聞くとは言っていない。

 優しい子ってわかったから無下にしたくはないとは思うけど。


「今日呼んだのは波音羽のことなんだけど」


「白姫さんのこと?」


「波音羽困っててさ。私にとって、大切な親友だからなんとかしたくて。だから、本咲くんを呼んだの」

 目にかかった薄茶色の前髪を横にはらい、オレンジ色の瞳で俺の目をじっくりと捉えてくる。


「聞いてほしいこと。見てほしいことがあって・・・・・・」

 制服のポケットからスマホを取り出す。

 

「ちょっと待ってね」

 顔の前にスマホを持っていき慣れた手つきで人差し指を動かしている。

 だがそうすることで気になるのはその度に動く胸の膨らみ。

 白姫さんや優華も大きく、男子からそういった点も好かれていると聞くけど、目の前にいるからわかる。

 駒下さんは二人の比ではない気がする。

 重量というか質というか、物が違う気が・・・・・・。


「さっきからなにを真剣に見てるの?」


「べ、別に・・・・・・」


「もしかして」

 ガン見していたことがバレバレだ。

 これは怒られる。


「このヘアゴム見てた?」

 スマホを片手に持ち後ろ髪をこちらに向ける。

 長い髪を一つにまとめているゴムを指差す。


「波音羽から誕生日に貰ったやつなんだ。可愛いでしょ」

 ニコニコの笑顔で言われ無言で数回頷いた。


「わかってるじゃん本咲くん」

 嬉しそうにしている駒下さん。

 本当の理由は不純なため申し訳なくなる。


「って! そんなことしてる場合じゃないんだ。見てほしいのはこれ」

 スマホを横向きにしてテーブルに置く。


「なに、これ」

 そこには土曜日の夜ケーキを食べに来た白姫さんと優華、俺が写っている。


「この写真がメッセージアプリやSNSで出回ってるの」


 

 











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