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学年一位の笹野内愛







 凛とした声、ポニーテールに結び、背中まで伸びたルビーのような鮮やかな赤色の髪。

 

笹野内愛ささのうちあいです。私のことを覚えていますでしょうか?」

 綺麗だ。

 彼女を一目見たとき、戦場に咲く一輪の薔薇ばらのようだと感じた。

 

「え、えっと・・・・・・」


「顔色が優れないようですね。テストの結果を知り戦慄せんりつなされていたのですか?」

 

「そ、そんなことは・・・・・・」

 俺の方にもう一歩近づいてくる。

 顔と顔の距離があまりなく、少しでも動けば唇同士が触れ合ってしまうような距離。


「ちょっ、ちょっと」


「瞬きが増えています。緊張していますか?」


「それはまぁ。学園一位の有名人に話しかけられたら」

 一歩後ろに下がったがまた詰められる。


「テストの結果など些細ささいなものにぎませんわ。学年一位というのも単にテストの点数が高かったというだけです。これによって私自身の価値や存在を決めれるわけではないでしょう」

 俺と似たような考え。

 

「そ、そうだな。確かに、うん、ごめん」


「フフフ。謝る必要はありませんよ。反応が面白くてつい意地悪をしてしまいました。申し訳ありません」


「そんなことはないよ」


「観客の方々が多いですね。こちらでお話を続けても注目を集めるばかりですから、移動してもよろしいですか?」


「あ、え、その。まだ会話を続けるの」


「ご都合があまりよろしくないでしょうか」


「そういう訳ではない、よ。むしろ」

 この場を切り抜けられなくて困っていたため、嬉しいというオモイすらある。

 視線も彼女が集めつつあるしな。


「移動したい」


「良かったですわ。でしたら参りましょう」

 横を通りシャツの腰付近を掴み優しく引っ張ってくる。

 自分についてこいと言っているのだろうか。


「お願いします」


「なんのこと」


「申し訳ありません。本咲くんではなく後ろの彼に」

 振り返ると黒色の髪に真紅に輝く赤色の瞳。

 まつ毛が長く目がキリっとしていてかなり美形な顔つき。

 体型はスラっとしているが身長が百九十くらいあり、冷徹な印象を与える男が俺を睨みながら近づいてくる。


「とっと歩けよのろま野郎」

 肩に強い衝撃が走る。

 勢いよく肩をぶつけられた。


「きゃあ〜〜!!!!! 美冬くんだ!!」


「かっこいい!! 美しいわ〜〜」


「尊すぎる!!!」

 掲示板の周りにいた女子生徒から黄色い声援が飛んでいる。

 女子生徒はほぼ全員男の方を見ていて、俺の方を見ることはなくなっていた。

 おかげで少しずつ落ち着ける。


「うるさい。ギャーギャー騒ぐな」

 乱暴な言葉使いだ。

 だけど、女子生徒達は言葉を聞いて更に騒いでいる。

 これが本物のイケメン男なのか。


「チッ。変わんねぇな」


「天上くん。移動しましょう」

 

「わかった」

 強気だったのに力なく頷く。

 目の前で広げられている会話だけ聞くと、まるで主人と従者、飼い主とペットのように見える。


「さっきからなに見てんだよ」


「なんでもない」

 相変わらず俺には高圧的だ。


「早く行け」

 顔だけで方向を指示してくる。


「では行きましょうか」

 引っ張っていたシャツから手を離し歩みを進める彼女。

 状況を飲み込めずこの場から立ち去りたいのにできなかった俺に対して、救いの手を差し伸べてくれた。

 氷のように固まっていた体は二人が助け舟を出してくれたことで溶けた。


「ついていくよ」


「よろしくお願いします」

 ニコッと微笑む彼女は女神のようだった。


「クソが。早く行けよ」

 

「は、はい」

 禍々(まがまが)しい殺気を感じ、後ろから慌ててついていく。

 一瞬だけ後ろを振り返ると、男は周りにいた多くの学生達に睨みを効かせ牽制けんせいしていた。

 俺が恐れていた怖い視線を諸共もろともせず、一瞬でなきものにした。

 ふてぶてしいな。

 超イケメンかよ。

 前を向く。

 それ以降は一切振り返らず目の前にいる彼女の後ろを歩いていった。


「ふん、弱ってんじゃねぇよ。エセヒーローが」

 なにか言われた気がしたがよく聞こえなかった。










「本日は天気も快晴です。とても綺麗ですわ」

 

「うん、そうだね」

 雲一つない晴れた空に嬉々(きき)としている笹野内さん。


「本咲くんはどんなお天気がお好きでしょうか?」

 

「好きと呼べる天気は特にないけど。強いていうなら晴れている方が好きかな」

 

「だとすると今日はとてもいい日ですね。屋上に訪れて正解です」

 太陽を見あげながら軽く笑う笹野内さん。


「それでさ。なんで俺をここに移動させたの?」


「本咲くんと話したいと思ったからですよ。あの場だと観衆が多く、静かに気持ちを落ち着かせて話せるような場ではないと思いました。ですから人目のつかないこちらに移動させていただきました。あまりよろしくなかったでしょうか?」  

 屋上の手すりを軽く触れながら顔だけこちらに向け聞いてくる。


「いやそんなことない。というか感謝してるよ。人が多いところは苦手だから」

 

「そうでいらっしゃいましたか。どういたしまして」

 優雅ゆうがに笑う様は先ほどから絵になる。

 太陽の光と重なり神々しさをかもし出している。

 多くの人が笹野内さんの美しさに見惚れてしまうだろう。

 実際この学校でも白姫さんや優華に負けず劣らずの美少女だ。

 二人よりも美人という感じの綺麗系。

 男女からの人気でいえば優華と並ぶ。  

 学年を問わなければ一年生の中で一番の有名人であり、人気をほこっているのではないだろうか。

 端正な顔立ちに見惚れてしまう華がある目鼻。 

 心がむような自然を感じる緑色の瞳。

 遠くから見てもサラサラだということがわかり上品さを引き立てる後ろで結んだ赤髪。

 同い年とは思えないほど大人びていて、上背とくびれもあり女の子なら憧れてしまうようなスタイル。

 胸のサイズは白姫さんや優華ほどはないが。

 

「先程からジロジロと見て、どうかされましたか?」

 口調通りのお嬢様で自宅はかなりの大豪邸な日本有数のお金持ち。

 それが笹野内愛。

 同じクラスで、学年一番の頭脳を持っている。


「なんでもないよ。話したい内容を教えて」


「そうですわね。わかりました。単刀直入に包み隠さず言います」

 表情を変えず極めて静かに口を開く笹野内さん。


「ファッションビッチとファッション隠キャ。これらの噂をご存知ぞんじですか?」

 

 

 

 

 









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