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嫌な視線






 激動の土曜日が終わり学校が始まる月曜日になった。

 朝ごはんを適当に作り学校の準備を終え家を出る。

 

「優華いないな」

 二人で登校しようと約束しているわけではないが、高校に入ってからは毎日優華が家の前で待ってくれていた。

 友達も多いはずなのに、学校でほぼ一人な俺に気を使ってくれているんだろう。


「優しさに感謝しないと」

 目を瞑り軽く瞑想でもしながら出てくるのを待つことにした。

 だがいつまで経っても出てこない。

 そろそろ学校に遅刻してしまう時間だ。

 俺は最悪遅れてもいいが優華は違うだろう。

 品行旺盛(おうせい)で絵に描いたような真面目、誰からも好かれる優等生代表は学校を遅れることを良しとしていないはずだ。

 なにかあったのかもしれない。

 優華の家のインターホンを押した。

 反応がない。

 誰も家にはいないのだろうか、もう一度押してみる。

 

「・・・・・・はい」

 しばらくしてから覇気のない優華の声が聞こえてきた。


「大丈夫優華?」

 うんと力ない返答をされる。


「体調悪いから学校休むね。ごめんね連絡しなくて」


「それはいいけど体調悪いのは心配だ」


「ふふふ、ありがとう強助。でも安心してすぐ治ると思うから」

 笑っていたが無理していることは丸わかりだった。

 ゴホッゴホッと咳払いしている音が聞こえた。


「早く行かないと遅刻しちゃうから強助学校に行った方がいいよ」


「そうだな。優華お大事に」


「うん、今日はずっと寝てるね」

 会話が終わる。

 いつもの優華とは全然違った。

 胸騒ぎがする。

 俺が原因な気がしてならなかった。

 学校が終わってからお見舞いに行こう。

 優華にはお世話になりっぱなしだ。 

 今日は俺が返す番。

 スマホで時間を確認して学校まで走った。

 ぎる不安を感じないように。

 

「間に合ったよな?」

 校門の前につき時間を確認すると余裕で間に合っていることに気づいた。  

 なにも考えないでただ走っていたら、十分ほどで学校に着いていた。

 

「火事場の馬鹿力ってやつか。いや違うか、俺自身の天性の才能か」

 せっかく早く着いて遅刻したら意味がないため急いで教室に向かう。

 教室の外まで賑やかな声が聞こえてくる。

 その音に隠れるかのように扉を開け中に入った。

 すると、多くの人から一斉に目を向けられる。

 怒っている目、腫れ物を見るような目、笑っている目、様々な感情の視線を感じる。

 なんでなんだ、なぜこんなに見られているんだ。

 高校に入ってからは初めてだ。


「・・・・・・」

 気持ち悪くなってくる。

 そういったものは気にしない、当然関わらない。

 でも向けられる視線が辛くないかと言われたら嘘になる。

 ここまでたくさんだと耐えられなくなる。

 早くどこか違う所を見てほしい。 

 俺を見ないでほしい。

 頼む、頼む、頼むから・・・・・・。


「・・・・・・」

 いつのまにか時間が過ぎお昼休みの時間になっていた。

 購買でパンを買おうと教室から移動する。

 とにかく早くここから出たかった。

 向かう途中、一件のメッセージが携帯に送られていることに気づいた。


『テストの結果を見てきてね、本咲家のスーパースター母さんより』

 ・・・・・・・・・・・・。

 テストか、そういえばこの前、国語、数学、理科、社会、英語、五教科の中間試験だったな。

 わざわざテストの結果を見に行くような点数だとは言えない。

 もちろん良い意味で。

 ある程度点数はわかりきっているからな。

 テスト結果が掲示されている中庭の掲示板には行かなくていい。

 でも、今日は優華が休んでいるな。

 彼女は頭が良く、テストの点数も相当いいはずだ。

 結果を確認して、伝えてあげた方がいいか。

 それに・・・・・・教室にはいたくない。


にぎわってるな」

 靴に履き替え中庭に向かうと大勢の学生で溢れ返っていた。

 人が多い所は嫌いなため遠くの方から結果を確認できないか試したが無理だった。

 大勢の中をかき分けて確認するしかないみたいだ。

 そんなことをするくらいなら人がいなくなったあとでいいか。

 早くこの場を立ち去ろう。

 ここにいると体が保たなそうだ。


「あれ」

 足を動かそうとしたら周りにいた何人かの生徒の視線を感じる。

 それが伝染するように掲示板の前にいた生徒達からも視線を送られる。

 時既に遅し。

 朝の教室と同じように視線を集める。

 なにかがおかしい。

 注目を集める理由がある気がする。

 けど考える余裕がなかった。

 集めた視線に目を合わせないこと、考えないことで必死だったから。

 早くこの場から去らないと。


「・・・・・・」

 体が動かない。

 手も足も震えて動けない。

 なんでだよ、なんでなんだ!!

 逃げたいのに逃げられない。 

 過度な緊張で硬直こうちょくしているのかピクリとも動ける気配がない。

 このままだとずっと視線を浴びせ続けられるだけだ。

 震える体に心でムチを打つと、顔だけは動かすことができた。

 目的を達成しなければならないという意地なのだろうか。

 恐怖を感じているなりの最後の抵抗だ。


「———」

 何人かの生徒が俺を見るために移動したため掲示板が僅かに見えるようになった。

 だけど多くの人と視線が重なることが怖いためテスト結果を一瞬だけ確認した。

 第一位笹野内(ささのうち)あい五百点、第二位天上(てんじょう)美冬みふゆ四百九十点、第三位黒妃優華四百八十九点。

 優華は学年で三位の成績だった。

 流石だ。

 一位は五教科満点の五百点か、化け物みたいだな。


「・・・・・・」

 結果は確認できたんだ、早くここからいなくなりたい。

 足がびくともしない。

 どうすればいいんだ。

 視線がどんどん集まっている気がする。

 ただ一人俺がずっと見られている気がする。

 嫌だ、止めてくれ、見ないでくれ・・・・・・。

 心で願うしかいられなかった。

 コツコツと音が聞こえる。

 靴の音がこだましているようだ。

 こちらに向かって歩みを進めてくる。

 足音が大きく聞こえた瞬間止まった。 

 俺の近くで。


「ご機嫌いかがですか本咲強助くん」

 天使が訪れたのか、そう思ってしまうような衝撃だった。

 

 

 

 

 

 








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