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煮え切らない波音羽と優華





「七夏実ちゃん!?」

 優華の呆気にとられる声が聞こえる。


「そうなるんだぁ〜〜」

 白姫さんからは驚きと高揚感を感じる。

 俺は二人の反応を冷静に見ていた、見ているしかなかった。

 目の前で起こっていることに対して、どうしたらいいのかわからないからだ。

 苦みとわずかな甘み、口の中にキウイがあるのだとわかる。

 加えて爽やかな酸っぱさと果汁の甘み・・・・・・おそらくオレンジもある。

 口の中に入っている食べ物の味をいまはとりあえず堪能しよう。

 フォークがまだ口の中にあるため味わおうとすると、必然的にあたって少し痛くはあるが、味は実感できる。

 スポンジとクリーム、その中にあるいくつかの果実。

 フルーツケーキの美味しさが口一杯に広がる。


「・・・・・・」


「なにか反応がほしいのですけどお兄ちゃん」

 考える前にケーキを俺に食べさせてきた七夏実が口を開いた。


「待って七夏実ちゃん。さっきの言葉はどういうことなの。強助は私のって」

 ちょうど理解ができていなかったことを優華が聞いてくれた。

 七夏実は固まって動けなくなる。


「答えずらい質問しちゃったかな、無理に答えなくてもいいけど」

 その様子を見て誤魔化ごまかす優華。

 言葉を聞いて力が抜けたのか、食べさせていたフォークを俺の口の中から抜いて自分のケーキの皿の上に置いた七夏実。

 やっと異物感から解放される。


「だ、だって・・・・・・私だけ仲間外れだったので、私だってお兄ちゃんと仲良くしたいのに・・・・・・」

 モジモジと人差し指を重ねてクルクルと回している七夏実。

 仲間外れ? 仲良くしたい?  

 妹にヤキモチを焼かせるとは、やはり俺は罪な男だ。


「そういうこと〜〜。お兄ちゃんオモイなんだね七夏実ちゃん」

 

「いえ。いや、そうなのかも、です」


「悪そうにしなくて大丈夫。嫌いよりは絶対好きの方がいいと思うから」

 

「そうですか?」


「私が保証する。兄妹仲良い方が絶対にいい」

 顔が曇る白姫さん。

 兄妹や姉妹がいるのかな?

 

「白姫さん」


「なんでもない。それでケーキは美味しかったの?」

 

「あぁー。うん、美味しいとは思うよ。だけど・・・・・・」


「良かった良かった」

 話を逸らしケーキの美味しさを聞いて、無理をしていることがまるわかりな笑顔をする白姫さん。

 さっきの言い方的にも隠している気がする。

 でもなにを隠しているかはわからない。


「糖分補給は大切だから。はい、あ〜ん」

 気を緩めた一瞬それは起こった。

 白姫さんに油断やすきは見せてはいけなかった。

 

「えっ、はふっ!?」 

 考えることを遮られるくらい強引に、ケーキを口の中に入れられる。

 

「白姫さんなにやっているのかな!?」

 

「隙があったから」

 してやったりという笑顔の白姫さん。

 隙があったからでやっていい攻撃じゃないんだけど。

 なんで俺にそんなことをしたのだろう、からかうにしてもいままで一番の行為だ。


「強助嫌がってるのに」

 優華の言葉を聞かず俺に目を向ける白姫さん。


「美味しいからいいでしょ」

 フォークを口の中から抜き優華の方に向ける白姫さん。


「そういう問題では・・・・・・」

 煮え切らないという表情の優華。

 俺を心配してくれている。

 幼馴染の優しさだ。


「・・・・・・なら、私だって」

 うん?

 

「優華?」

 口に入れられたケーキを咀嚼そしゃくしながら向く。

 ショートケーキの甘酸っぱい味で支配される。


「目をつむって」


「え?」


「お願い」

 目を大きくした真剣な顔で言われる。

 優華は覚悟を強く持った顔をしている。


「目をつむると恐怖で体が支配されるんだ」


「ならその恐怖は私が食べてあげる」


「妖精かなにかですか」

 食いしん坊というよりそれはもう超常的な生物だ。


「じっとしてて」

 優華の言葉には強制的に目を瞑らせるなにかがあった。

 というより目が交差して見つめ合っていると恥ずかしすぎて、目を閉じるか逸らすしかなかった。

 

「強助目を開けないで」


「・・・・・・」


「はい」

 唇に柔らかいものが触れた。

 ちょっとでも動けば潰れてしまいそうなものだ。


「わ〜黒妃さん大胆」

 

「優華姉!?」

 

「・・・・・・優華」

 名前を呼んだ瞬間。

 開いた口に、触れられていたであろうものを入れられた。

 食べたことある味が口に広がった。

 

「どうかな?」


「・・・・・・変わらないよ。変わらず美味しいよ」

 よくわからないまま言葉を返す。


「そう・・・・・・」

 フォークを口の中からとると同時に下を向く優華。

 つられるように俺も下を向く。

 いま俺はケーキを食べさせられた。

 なんでだ、なんで優華は二人と同じく俺にケーキを。

 予想がつかない、優華はやめてあげてと止めていた側だった。

 理由はわからない、だけど。

 ショートケーキの甘酸っぱさは消え、どんどんチョコの苦い味が口に広がってきて、俺の心にも起こったことが染みてきた。

 それは悪い気分ではない。

 むしろ恥ずかしいけど、どこか嬉しい気持ちがあることに気づいた。

 

「反応が違う」

 声が聞こえ目の前にいる白姫さんを下からチラチラと見ると、不服そうな表情をしていた。

 こういう白姫さんは初めて見る。

 

「本咲はさ誰に食べさせてもらったケーキが一番美味しかった?」


「なにその質問。円周率みたいだ」   


「どのケーキが・・・・・・違うね。誰が食べさせたケーキが一番美味しかったのか気になってさ」

 俺のボケが無視された、そこは重要ではない・・・・・・誰かを答えるのか!?

 どのケーキかじゃなくて?

 

「答えて」

 七夏実も俺に視線を注いでくる。

 答えを期待されている。

 優華は下を向きながらもチラっと俺の方を見ている。

 

「逃げる答えは許されないから」

 特に誰がというわけでもなかったため、無難ぶなんに三人共と答えるつもりだったのに。

 その答えも絶たれた。


「昼に自分で食べたケーキかな」


「本咲、逃げないで」


「どのケーキが美味しかったかを答えればいいんだよな?」


「誰が食べさせたかも。ちゃんと答えて、ね?」

 

「は、はい」

 圧が怖い。

 ハンターや狩人のような、狙った獲物は逃さない雰囲気だ。

 答えるしかないが、特に誰が良かったというのは・・・・・・。


「まぁ、その、一番とか言われても正直誰が食べさせてくれたどのケーキかはよくわかんない。でも、いて言うなら、俺は・・・・・・」

 スマホのバイブ音が鳴り響く。


「ごめんなさい」

 誰からの連絡かを確認する七夏実。

 

「誰からの連絡だった?」


「お兄ちゃん」


「俺?」

 優華と白姫さんに見られるが俺はここにいる。

 この世に一人しかいない。

 ドッペルゲンガーやクローンがいれは別だけど。


「違います・・・・・・お母さんです!」

 この状況においてもっとも聞きたくない人の名前を聞いてしまった。







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