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白姫さんと黒妃さん





「はっ?」

 目の前にフォークとそこに刺さったスポンジとクリームがある。


「ほら、あ〜〜ん」

 甘美かんびな声と共に、目と頬を緩めた白姫さんの妖艶ようえんな様子を見てドキッとする。


「あ、あの・・・・・・どういう意味ですか?」


「わかってるでしょ。ケーキを本咲に食べさせてあげようと思って」

 

「え、えぇ!?」

 なんでそういうことになる、いまはそんな流れだったか!?

 白姫さんは優華をからかっていたはず。

 急に話を終わらせたと思ったら今度は俺にケーキを食べさせようとしてくる。

 わけがわからない。

 

「驚くことじゃないでしょ。見ればわかるんだから」


「そういうことじゃなくて!!」

 白姫さんはボケなのか天然なのかどっちで言っているんだ。


「どういうこと?」

 わけがわからないといった感じで上目遣いをしてくる。

 もし自然にやっているとしたら天然であざといのか。

 

「なんで俺にケーキを食べさせようとしているの」


「ケーキ嫌いだった?」

 素で驚いた様子をしているが、俺を見上げながら甘えた声と顔をしている白姫さん。


「嫌いとかでもなくて・・・・・・。狙ってやっているだろ白姫さん」

 天然ではない。


「なんのことかわかんない〜〜」

 笑って知らんぷりを決めるがこれは確信犯だ。


「クソ・・・・・・」

 だとしても、狙ってやっているとわかっているとしても。

 可愛いことに変わりはない。

 好きかどうかは関係なくいまの白姫さんは凄く刺激的だ。

 顔が熱く真っ赤になっていることが想像できる。


「ほら早く食べて」

 俺の唇に当ててくる。

 

「口開けて」

 強引に迫られた所で顔を動かしケーキを避ける。

 

「開けないよ。食べられないって言っただろ」


「なら無理やり入れる。一口ならいけるでしょ」

 再び口元にケーキを運んでくる。

 

「入れさせないよ」

 今度はフォークを持っている白姫さんの手を軽く握って動かせないようにした。


「あ、ずるい!」


「ずるいもなにもないよ」

 顔に力を入れてムッーと悔しそうにしている白姫さん。


「まぁ、でもいっか」


「えっ?」


「こっちの話」

 チラチラと優華の方を見る白姫さん。

 段々と優華が愛想笑いのような笑みを浮かべる。

 

「強助が嫌がってるからやめてあげてよ」

 優華が助け舟を出してくれる、でいいんだよな?

 暗かったハイライトがより、よどんだ暗さになっている。

 あねさん怖すぎます。


「ふ〜ん本咲が嫌がってるから、ね」


「うん。強助が可哀想だから」

 

「私にこういうことされるの、嫌?」

 二人の会話を黙って聞いていたが、ここで俺に話をふるのか白姫さん。

 しかも悪意がある聞き方だよ。


「どうなの?」

 さらに聞いてくる白姫さん。

 俺は試されているのか、ここでさばけるかどうかを。

 なら、やってやるしかない。


「嫌というか、さ。好意を抱いていない男にそういうことをするのはあんまり良くないと思っているというか」

 素直な良い答えだろう。

 誰かに食べさせる食べさせてもらうというのは、余程の仲でないと無理。

 付き合っている恋人同士だとしても、なかなかハードルが高い。

 しばらく時間を過ごしてからでなければそういうこと、少なくとも俺はできない。

 恥ずかしいし、恥ずかしいし、恥ずかしいから。

 そういう意思を示せた。


「私は別にいいと思うけどな〜。やって減るもんでもないし」

 捌ききれなかった。

 誤解を与えるような言い方をされて事態じたいはより混沌とする。

 

「たとえ親しい間がらや友達でなくても?」

 優華が白姫さんに聞く。

 

「ときと場合によるけど私はできるかな」

 噂のファッションビッチすぎるだろ。

 いや、それだとただのビッチではないか。

 

「でも今回のことに関して言えば本咲は友達だと思ってるから、二人の言ってることと違うけど」

 友達だとしてもやっていいわけではないだろ!

 白姫さんの価値観がわからない。

 からかっているのか?

 優華も目を大きく開けて驚いている。


「そういうわけで本咲! あ〜〜ん」

 掴んでいない方の手にフォークを持ち替えて、俺の口元に差し出してくる。


「白姫さん!?」

 止めに入るように優華が手を伸ばしてきた。


「黒妃さんこの手はどうしたのかな」

 白姫さんの隣に移動してもう片方の手を止める優華。


「させないよ。強助も嫌がっているから」


「そんなに言うなら黒妃さんもやればいいのに〜〜」

 

「ふへぇっ!?」


「黒妃さんもやればこの問題解決じゃん!」

 名案のように言っているけど全く名案じゃないからな。

 俺の意思が反映されていない。

 そもそも優華だってそういうことは別にしたくないはず。


「優華?」


「はへっ?」


「大丈夫か?」


「う、うん」

 目をパチパチとさせ、食べさせている所を想像しているのかどんどん顔が赤くなる優華。

 恥ずかしいよな。

 俺も恥ずかしい。

 男として情けないかもしれない。

 

「そんなことダメなんだからね!?!?」

 大声を出しながら白姫さんの前まで顔を近づける。

 大部焦っている優華。


「やっぱり〜〜あーんしたいんだ。まんざらでもないね〜〜」


「違うから!!! そういうのではないから!!! 一般的に考えてそういうことをするのがダメというだけだから!!!!!」


「したいことは否定しないんだ」


「・・・・・・したくもない!! あっ、強助、その、違くて、いや、違くなくて、えーっと、その」


「わかっているから大丈夫。気にしないで」

 優華が大慌てで否定する。

 痛い。

 強く否定されるとグサッとナイフが刺さったような痛みがくるんだな、辛い。


「黒妃さんってホント可愛い〜」


「だから違う〜〜」

 涙目になっている優華。 

 そんなに嫌なんだ、俺に食べさせるの・・・・・・。

 

「またまた〜。旦那様も残念そうにしてるけど」

 残念ではない。

 ない、けど、嫌がられているのが心にくる。


「強助?」


「残念とかじゃないよ優華」

 空いてる方の手を振って否定する。

 否定しないと嫌がっている優華からしたら、気分悪いだろうから。


「そっか」

 え、なんでそんなに悲しそうになるんだ。

 俺の発言のなにがいけなかったんだ?

 もしかして優華、食べさせたかったのか。

 確かに俺に食べさせるのはご褒美ほうびイベントではあるけど。

 優華を傷つけないように発言したつもりだったけど、結果的に傷つけてしまった。

 謝っておかないと。


「ごめん優華。悪気はないから」


「謝ることじゃない強助は悪くないからね」

 数秒目を合わせる。 

 怒ってはいない、でいいんだよな。

 やっぱり食べさせたかったのか。

 俺は罪な男だ。


「素晴らしい夫婦愛」


「だから夫婦じゃないから!」


「旦那様って言ったら本咲の方見てたけど」


「それは・・・・・・」

 

「もうそろそろ手離してくれる? 私の手が痺れちゃう」

 白姫さん俺と優華に掴まれてずっと手を上げていた状態だったため、大部キツかったのだろう。

 悪いのは白姫さんであるのだけど。


「ご褒美だと思うけどなぁ・・・・・・」

 冗談を言ってすぐさま俺も優華も手を離した。


「チャンスだ」

 白姫さんがケーキを俺の口元に持ってくる。

 これが狙いだったのか!?

 咄嗟とっさのことだったため俺は避けれなかった。

 口の中にケーキが入りクリームの甘さとスポンジの柔らかさ、どことないフルーティさを感じる。

 してやったりの顔をしているだろう白姫さんの方に目を向けると衝撃を受けたような顔をしている。

 余裕そうな白姫さんでも、男に直接食べさせるのは緊張するのか。

 そう思ったが、ケーキを食べさせているフォークの手元を見たらわかった。

 白姫さんの手じゃない、白姫さんの手は浮いたままだ。

 なら、その手の正体は・・・・・・。


「七夏実・・・・・・?」


「お兄ちゃんは私のだもん」

 伏兵妹の仕業だった。












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