はい、あ〜ん
「ケーキを片方が用意してる間に、片方が飲み物を用意するって夫婦の共同作業じゃん」
「それは私が昔から強助の家にたくさんきているからだよ! どこにカップや茶葉あるかも把握しているからで・・・・・・」
「ほぉほぉ」
「親しい間がらとか、特別な関係だからとか、そういうのではないの!!」
「へぇ〜〜」
先程から白姫さんと優華が言い合いをしている。
というか優華が白姫さんに一方的に言われている。
それを必死で否定している感じだ。
女の子の言い合いに男は入る余地がない。
「うんっ・・・・・・白姫さん。さっきからその反応はなに、なにか言いたいみたいだけど」
白姫さんがニヤニヤと笑う。
「別に〜〜深い意味はないけどねぇ。たくさん家に行ってて、どこになにがあるかも全て把握しているんだな〜〜と思ってただけ」
「私と強助が幼馴染だからね」
「なにもかも包み隠さず知ってる。本咲の服や秘密の宝物、下着やエッチな物の数々の場所まで全て知って・・・・・・」
「ない!! 知ってない!! 強助の下着やエ、エッチな物の数々は知らない!!」
「下着やエッチな物は、なんだね」
「え、その・・・・・・」
優華の顔が真っ赤に染まる。
内容的に俺も恥ずかしい気持ちになるが、それ以上に優華の反応が激しくて冷静になれる。
俺が自分から二人の会話に入る余地はないため、黙って様子を見守るしかない。
「つまり、服や宝物の場所は全部知ってるんだ。流石は奥様」
「奥様じゃない〜〜!!!」
渾身の叫びがリビングにこだまする。
顔を真っ赤に染めて白姫さんを見る優華。
白姫さんはそんな優華の様子が面白いのか、最初は驚いていたがすぐに頬を上げて笑っている。
「黒妃さんってからかい慣れてない箱入り娘な感じで、凄く面白い」
ニコニコで毒っけのある言葉を呟く白姫さん。
「私は全く面白くないよ〜〜〜」
優華は睨んでいるが力はなく、犬や猫のようなクリっとした目なので恐怖感もない。
顔が赤くて恥ずかしそうにしていることもあり可愛い。
こういうさりげなく出る表情一つ一つの可愛さに多くの人はやられている気がする。
強烈すぎて一時の輝きでは俺も負けている、そう思えてしまう。
「強助もなにか言ってくれないの?」
「あぁ、うん。俺は」
なんて言えばいいんだろう。
白姫さんになに言っても弄られるだけだから無駄って、素直に言えばいいのか。
でもそれを伝えたら白姫さんが弄ってくる、いや怒るかもしれない。
ならさっきから白姫さんが言っていることは全部正しい。
俺と優華はそういう関係だ!!
そう言えばいいいのか?
最悪の未来が浮かぶやめておこう。
「そうだな・・・・・・」
なにを言っても嫌な未来しか待っていなさそうだ。
ということは、詰みだ。
打開する方法は第三の答えを用意する意外にない・・・・・・。
「とりあえずケーキ食べない?」
精一杯の提案だ。
「食べない人がなに言ってるの」
「話をはぐらかすなんてダサい」
毒舌すぎるだろ!!
女の子怖すぎる・・・・・・。
俺でなければ耐えられなかった。
考えて考えて言ったのにここまで言うか。
確かに言ったことは間違いではないかもしれない、俺が不甲斐ないかもしれない。
だとしても言われた言葉の力が強いよ。
「すいません」
二人に形だけの謝罪をした。
「わざわざ謝らなくていいのに」
ダサいと言った張本人が白姫さんだろ!
思わず声に出してツッコミたくなった。
「私こそきつい言い方してごめんね、けどさこんな状況になっているのは強助も関係しているわけで・・・・・・そもそもなんで一緒にケーキを食べる流れになったの?」
優華が真相を知りたそうにしている。
これは話を変える良いチャンスだ。
「俺も気になっていたから聞いてみたいよ」
「私が誘ったんです!」
俺と同じく様子を見守っていた妹の七夏実が会話に入り込み答える。
「どうしても隣にいる白姫さんと食べたくて」
「七夏実ちゃん」
白姫さんがうっとりとした顔になる。
「七夏実ちゃん、そう呼ぶくらいには仲がいいんだね」
優華の目が暗くなる。
ハイライトが消えているように感じる。
姉さんイカついです。
「同じスイーツ好きとしてすぐに気があってさ」
白姫さんはビクともしない。
心臓に毛が生えている系なのか?
「私もスイーツ好きなんだけどな〜〜」
決して出ているわけではないが、優華と白姫さんの間にはビリビリとした電流が流れているように見える。
「優華姉も今度誘おうと思っていたんです!!」
「そうそう。私だけ特別ってわけじゃないから、黒妃さんも怒る必要ない」
「怒ってないけどー?」
棒読みチックに言っているため本心でそう思っていないことは明白だった。
「ならいっか!」
白姫さんの言葉に明らかに怒りが増している優華。
「そういえば気になってたんだけど」
「なんですか?」
優華がさりげなく敬語になっているのが怖い。
「黒妃さんはなんで私が本咲と七夏実ちゃんと話してる所に丁度よくきたの?」
ビクッと驚いた反応をする優華。
「七夏実ちゃんが誘うのを忘れてたわけだしさ、今日ケーキを食べること知らないよね?」
「たまたまだよ」
「ふ〜ん。たまたま、ね」
フォークを持ち標準を定めているように回す白姫さん。
「偶然・・・・・・というよりも、声が聞こえたから。強助と七夏実ちゃんの声が」
「声が聞こえただけで出てくるんだ。お隣なんだから、声が聞こえるなんてことたくさんあるはずなのに」
「それは・・・・・・」
「声が聞こえると毎回外に出てるの?」
「いえ」
「じゃあ今回家から出たのはなにか理由があるってことだ」
優華が苦虫を噛むような表情になっている。
白姫さんは尋問を楽しんでいるようだ。
「どんな理由なの?」
悪徳警官か激論破弁護士か。
そう感じてしまうほど、白姫さんから出る圧は力と怖さがあった。
さっきは、弄ったり笑ったりしていたのに、いまは真面目な雰囲気で圧を強めて問い詰めている。
どんな状態にも一瞬で染まり、切り替えもはやくできる。
白姫さんはカメレオンみたいだな。
「白姫さんに答える必要はある?」
「特にないね」
「なら答えなくてもいいよね」
優華も反撃に出る。
だがそれだけで白姫さんは止まらない。
簡単に言い返してくる。
この二人の戦い。
傍観者である俺の実況と解説が止まらない。
「わかった。いいよ」
いいんかい!
まさかの優華の粘り勝ち、白姫さんの負けだ。
「黒妃さんの言ってることも理解できるから。ただ・・・・・・」
手にずっと持っていたフォークで目の前にあるショートケーキをひとすくいする。
「はい、あ〜ん」
口元にケーキを差し出してきた。
それは俺が傍観者でなくなることを意味していた。




