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心霊現象?




 優華にギロっと睨まれている。

 あおるようなことを言ったのは白姫さんだが、彼女が俺の腕に抱きつき優華を煽るようなこと言ったため、怒りの矛先ほこさきが俺になっている。

 そんなに怒らなくても俺が白姫さんと恋人のような関係にならないとわかっているはずなのに。

 白姫さんが俺なんかのことを好きになるわけないと理解しているはずなのに。

 なんで優華はこんなに怒っているのだろう。

 幼馴染で心配だからなのか。


「ゆ、優華姉もケーキ食べませんか?」

 

「え?」


「お土産に優華姉にもケーキ買ってきたんです。ただ誘うのを忘れて、いまになってしまったんですけど・・・・・・大丈夫ですか?」

 物腰低くソワソワしながら七夏実が聞くと、優華が七夏実の方に向き直り、睨んでいた視線を和らげる。


「い、いいの七夏実ちゃん?」


「はい! ぜひ来てほしいです!!」

 顔をほころばせる優華。

 さっきの怒りが嘘だったように、嬉しそうに笑っている。

 七夏実のフォローに俺は助けられた、あとでお返しをしてあげよう。

 にしても、優華単純だな。

 妹がいると怒りを鎮めるのか。

 兄としてまた負けるとは・・・・・・クソ。


「私ケーキ大好きだから。ありがとう七夏実ちゃん!!」

 七夏実の手をギュッと握り感謝を伝える。

 食べ物があるとここまで一瞬にして変わるのか。

 恐るべし力をケーキは秘めている、そして優華はやっぱりわんぱくだ。

 口に出して言うと今度こそ怒られそうだから言えないけど。


「みんなで食べた方が美味しさも上がるからとてもいいと思うな」

 うんうんと頷きながら七夏実の提案に同意する白姫さん。

 そこは素直に受け入れるんだな。


「けどいいの、そんな格好で?」


「はい?」


「本咲の家で食べるのに部屋着でいいの?」

 ニヤニヤとしながらまたも煽るように言う白姫さん。

 残念優華にはその煽りが通用しない。

 部屋着なら俺も優華もお互いのを見慣れている。

 わざわざ着替える必要はないんだ。


「そうだね・・・・・・」

 あれ?


「七夏実ちゃん。着替えてくるから待ってもらってもいいかな?」

 あれれ?

 

「はい、私は構いませんよ!」


「ありがとう。じゃあ着替えてくる!」

 ぜんぜん予想と違った。

 普通に着替えるんかい。

 幼馴染だからと偉そうに知ったかぶりしてすいません。

 心の中で謝っていると、優華がこちらを見てくる。

 そしてすぐさま首を逸らし、自分の家へと向かっていった。

 なんだろういまのは。

 それに白姫さんと対面したら、いつもの優華より負けず嫌いになっている気がする。


「お兄ちゃん?」


「なんでもない。戻ろう」


「ありがとです」

 七夏実を先に入れてあげる。


「本咲優しいじゃん」


「これ以上心がイケメンになりすぎたら、流石に困るかな?」


「その発言のせいで一気にブサイク」


「もはやそれもイケメンの一要素かもしれない」

 

「はいはい、本咲はかっこいいよ〜」


「やっと認めてくれたか」

 白姫さんが家に入る。

 呆れられていたな、それも仕方ないか。

 七夏実と白姫さんが家に入ったことを確認して、俺も家の中に入ろうとした。

 すると近くにある公園から視線を感じた。

 扉から手を離し走って敷地の外から出る。

 公園の方に目を向けるが誰かがいる気配はない。

 もしかして・・・・・・心霊的なものだったのだろうか。

 そうなると霊感に目覚めたことになる。

 まさかそんなことがありえるのか。

 

「お兄ちゃんどうかしましたか?」

 家の中に入らない俺を心配してくれたのか七夏実が出てくる。


「あの公園って心霊がいるとか噂あるっけ?」


「そんな噂ないと思いますけど・・・・・・お兄ちゃん、なにか見たんですか!?」

 体をガグガクと震わせながら聞いてくる。

 

「別になにか見たわけじゃない。感じただけ」


「より怖いじゃないですか!!」


「俺の勘違い説もあるから」

 七夏実が泣きそうになっている。

 

「お化け苦手なんだな。いや、この場合心霊だから、幽霊か」


「どっちでもいいですから、早く中に入りましょう!」

 腕を引っ張られ家の中に強引に入れられた。

 

「もうこれからあの公園の前通れませんよ」


「仮にいたとしても、いつでもいるわけではないから大丈夫だよ」


「お兄ちゃん!!」


「ごめんごめん」

 怖さに怯える七夏実を励ますために言ったんだけど、上手くいかなかった。

 ならばと安心させるように七夏実の顔から恐怖が消えるまで背中をさする。

 イケメン兄の優しさだ、かっこいい。

 七夏実が落ち着いたところで玄関から上がり、階段を登って自分の部屋へと向かうことにした。


「なにやっているんですか」


「階段を上がっている?」


「それはわかっています。なんで二階に向かっているんですか」


「これから三人でケーキを食べるんでしょ。俺邪魔だから」


「違いますよ、四人です。お兄ちゃんも食べるんですから」


「はい?」


「白姫さんも待っていますから、お兄ちゃんも早く着替えてください」


「言っていることの意味がわからないんですけど・・・・・・」

 俺は一個しか食べる気がないとケーキ屋で言ったはず。


「部屋着はダメですよ」


「服のことじゃなくて。一緒に食べるってどういうこと?」

 

「みんなで食べた方が美味しいじゃないですか!」

 そういうことではなくて・・・・・・。


「なぜ俺もケーキを食べることになっているの」


「優華姉と波音羽さんが喜ぶからです!」


「いやそんなことは・・・・・・」

 

「波音羽さんはリビングで待っていますから、お兄ちゃんも早く着替えてください」

 了承していないがどんどん話が進む。


「服だって洗濯に出しちゃったよ」

 六月といっても体感はもう夏だ。

 外に出れば汗をかく。

 汗は俺にも抑えることができない。


「まだ回してないですから問題ないです!」

 そういう問題でもなくて。

 てかそれだと結局汗臭くないか?


「でもな七夏実」

 白姫さんとケーキを食べるわけではないから、家に彼女が入ることを特になにも言わなかった。

 でも俺も彼女と一緒にケーキを食べるということになると話は別だ。

 我関せずで俺は生きているのに、もろにトラブルが起きそうなことに関わることになる。

 

「誰かに見られるかもしれない」


「ここは家だから大丈夫ですよ!!」

 それはそうです。


「けど、なんていうか・・・・・・」

 断りを入れたい。

 できる限り妹が傷つかない方法で。


「ダメですか?」

 

「えっ」


「私がお兄ちゃんに了承をとっていなかったことは悪いです。ですけど、妹のささやかなお願い。お兄ちゃんなら叶えてくれると思ったので・・・・・・」

 涙ぐみながら下を向く七夏実。

 そういうのはさぁ・・・・・・。


「ごめんなさい」

 嘘偽りない謝罪の気持ちをかもし出している。

 逃げ道がない。

 こんな風に言われると・・・・・・なかなか断りづらい。

 またこれだよ。

 あざとすぎるよ、これを自然にやったら多くの人が倒れてしまうよ。

 いや俺が弱すぎるだけか。


「わかった着替えてくる」


「やった〜〜!! お兄ちゃんありがとうです」

 うさぎのようにぴょんぴょんと飛び跳ねる優華。 

 そこまで喜んでもらえるなら良かった、でいいんだよな。

 複雑なオモイを抱えたまま着替えに向かった。














 


「危なかった〜〜」

 隠れていた草木から出る。


「チッ、めっちゃ汚れちゃったよ」

 草木で見つからないように寝転んでいたため、泥まみれになっている。


「でもまぁいっか。得られた物の代償としてはぜんぜん軽い」

 手にしているスマートフォンを見る。


「楽しみにしてろよ。地獄に落としてやる」

 公園から立ち去り駅へと向かった。

 

 

 






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