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来訪の白姫さん





 ケーキ屋から家に帰る。

 夕飯を作り終えたあと、リビングにあるソファーに座り休憩していた。


「SNSか・・・・・・」

 携帯でアプリストアを開き、SNSアプリと睨めっこする。


「やる気になれないな。顔を合わせたことがない人の言葉を見るのも、顔を見るのも、感情や意図がわからなくて怖い」

 たくさんの人に視線を向けられるのは慣れていた。

 でもあるときから怖くなり誰かに見られるということが恐ろしくなった。

 それ以上にSNSは相手の顔が見えないのに、俺のことだけを一方的に見られるからより恐ろしい。


「向いてないな」

 SNSを使ってでも自分のことを共有したいと思える相手が現れない限り一生使わないだろう。

 それは恋人や夫婦になるような人以外では難しい。

 ほぼ使うことがないであろうアプリだな。


「いずれまた機会があれば」

 チャイムが鳴る。

 来訪者を告げる合図だ。


「誰だ?」

 時刻は二十時を過ぎた。

 俺と七夏実以外の家族は帰りが遅い。

 こんな時間に客人か?

 それとも家族の誰かしらが頼んだ物の配達だろうか。

 ソファーから立ち上がり玄関へと向かった。

 扉を開け誰が来たかを確認する。


「すいません・・・・・・って、白姫さん!?」


「お、本咲じゃん!!」


「本咲じゃん、ってなんでここにいるの!? そもそもなんで俺の家知っているの?」

 特定したのか。

 そんなの俺のファンでなければ無理だろ。

 まさか白姫さん俺の熱烈なファンなのか。


「さっき七夏実ちゃんから聞いた」

 ファンなわけないよな。

 俺の希望は勘違いとなりはかなく終わる。


「あ、なるほど・・・・・・じゃなくて! なんでここにいるの?」


「七夏実ちゃんに誘われて来ちゃった」


「はっ!?」

 

「一緒にケーキ食べようって誘われたから」

 白姫さんがここにいる真相は七夏実か。


「お兄ちゃんどうしたんですか、あっ!!」

 二階にいた七夏実が急ぎ足で階段を降りてくる。


「白姫さん来てくれたんですね!!」


「もちろん!!」

 そのまま靴に履き替えずスリッパのまま、扉を開けている俺の横を通り抜けて七夏実は白姫さんの前に立つ。


「嬉しいです〜」


「私も〜〜もう一回会えて嬉しい〜〜」

 七夏実の頭を撫でている白姫さん。

 嬉しそうにしながら白姫さんに抱きつく七夏実。

 ケーキ屋にいたあの一瞬でここまで仲良くなれるのか。

 

「いつ来るかなってソワソワしていて、全然宿題出来なかったんです〜」

 それは宿題やりたくなかっただけだろ。


「わかるわかる。私も七夏実ちゃんと早く会いたいからかいつも以上にバイト疲れた〜〜」

 それは今日が休日でお客さんが多かっただけでは?


「お疲れ様です。さぁ、早く食べましょう!!」

 俺だけ蚊帳かやの外だ。


「うん! あ、その前に七夏実ちゃんの服。大人っぽくて綺麗」

 

「ありがとうございます! 波音羽さんもスタイルがより輝くコーデでとても素敵です」

 お互いの服を褒め合う二人。

 七夏実は白姫さんのケーキ屋に行った時と同じ、薄茶色のスカートと透けているオレンジ色のシアーシャツを着ている。

 白姫さんは水色のショートパンツにフリルのついた白色のノースリーブを着ていて、肌の露出が多い。

 よくわからないがオシャレという部類に入る着こなしな気がする。

 俺としては目のやり場に困るだけなんだけど。


「あれ、どうしたの本咲?」

 白姫さんがこちらを向いてくる。


「なんでもない」


「え、ほんと?」


「ほんとです」


「じゃあなんで急に敬語なの?」


「自然とたまに敬語になるのが俺なんだ」


「そんなことある!? 普通に、私の私服を見て恥ずかしくなったとかじゃないの〜」

 白姫さんがニターと頬を横に広げた笑みをしてくる。


「本咲ってムッツリ?」


「ムッツリじゃないわ!」

 

「そんな本気で言わなくても。冗談のつもりで言ったんだけど、当たってた?」

 確信犯だな。


「どっちかと言えば俺はガッツリだよ」


「うわっ、性欲モンスター」

 自分の体を抱きしめて一歩下がる。

 知らないとしてもビッチと噂をされている人がそれを言うのか。

 だけど、そんな風に欲まみれの男を見下している時点で白姫さんはビッチなんかではない。

 噂はやっぱりデタラメだ。

 ・・・・・・俺が欲まみれってことではないからな?


「扉を開けたまま会話をしていると近所の人に見られるから早く家入りなよ。七夏実とケーキを食べるんだろ?」

 俺の意思は関係ない、七夏実の客人なんだ早く入れよう。


「うん、そうですね。お兄ちゃんごめんなさい」


「いや、七夏実は謝らなくても」


「それってなに、私が悪いってこと?」


「だからそういうわけでも」

 

「じゃあどういうわけ?」

 ジト目で俺の答えを待つ白姫さん。

 どういうわけって言われてもな。

 白姫さんが悪いとは思っていないけど、外で話すのは周りからの目が集まりやすいんだよな。


「説明するとあれなんだけど・・・・・・ってなんかいいにおいする」


「ほんと!?」

 グッと近づいてくる。

 心臓のドキドキが上がるから距離を保ってほしい。

 さりげなく男子と距離を詰めるのはあざといテクニックの一種だろ。

 俺には効くんだやめてほしい。


「バラ。ラベンダー。花のにおいがする。あと、柑橘かんきつ系の爽やかなにおいだ」

 見事に全部言い当てた。

 恥ずかしがるだろうか。


「良かった〜〜」

 更に嬉しそうに顔を緩める。


「えっ?」


「私に嬉しいことしてくれた」


「嬉しいことってなんだ。なんもしてないけど」

 いやなにもしてなくても人が嬉しくなってしまう。

 それが俺なのか。


「いいのいいの。私は凄く心が温かくなれたから」

 急に怒ったり、突然不機嫌になったり、気づいたら笑ってたり、前触れなく嬉しそうにしたり。

 この人だけは全く掴めなさそうだ。


「その・・・・・・中に入りませんか?」

 

「ごめん七夏実」

 いつのまにか俺が家に入らない原因になっていた。

 手を扉から離す。


「白姫さんどうぞ」

 

「お邪魔しま〜す!」

 七夏実と白姫さんが家の中に入ろうとした瞬間。

 隣の家からドタバタと大きい音が聞こえてくる。

 

「なんでここに白姫さんがいるの!!!」

 そこには優華がいた。








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