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オモイがこもったプレゼント





 七夏実が家族にお土産で買っていくケーキを吟味ぎんみしていた。

 

「本咲は選ばないの?」

 七夏実がケーキを選ぶのを見守っていると、ショーケースを挟んで向かい側に立っている白姫さんに声をかけられた。


「こういうのうといんだよ。人が好きなやつとか喜ぶやつを選ぶセンスあんまりないから」

 そもそも誰かにあげる物を選ぶっていう経験自体が少ない。

 いくらイケてる男でも無理なことはある。


「センスって・・・・・・フフフ」

 白姫さんが口を手で押さえて笑っている。


「おかしかった?」


「いや、だってそんな小っちゃいこと気にしてるんだな〜っと思って」

 

「気にするよ。人に物をあげるんだったらセンス良いものをあげた方がいいに決まっているから」

 

「人に物をあげるならセンスが大事って言ってるんだ。やっぱ小っちゃくない?」

 会計するための台に手を乗せ少し前のめりになる白姫さん。


「相手のこと気にしすぎでしょ」

 笑うのをやめ不機嫌そうにこっちを見てくる。

 なんで白姫さんが不機嫌なんだ?

 よくわからない、なるなら俺の方だ。


「相手に物をあげるんだから。相手のことを考えないでどうするの」


「それは本当に相手のことを考えてるっていえるの?」


「えっ」

 どこが考えていないんだ。

 相手が喜んで嬉しい、ありがとうと思うものを渡すべきだろ。


「本咲の言ってることは相手にしてあげることの正解を探しにいってるだけじゃん」


「だからそれを考えているっていうんじゃ・・・・・・」


「相手が思う正解を本咲があげるの? それだったら相手自身が自分で買えばいいじゃん。本咲から貰わなくたって別にいいでしょ」


「それは・・・・・・」


「相手が望む物や事じゃなくて、本咲が相手のためにあげたい物やしてあげたい事をしてあげな。そうすれば相手は自分が望む物を貰ったりされたりするより、もっともっと嬉しいはず」

 頬を上げて優しそうに笑う白姫さん。

 でも、だけど、白姫さんが俺のなにを知っているんだ。

 なぜ俺にそんなことを言うんだ。

 わからないくせに、いやわからないから偉そうにズケズケと言えるんだ。

 

「話は終わりましたか?」

 

「とっくに終わってるよ。七夏実ちゃん決まった?」

 しかも勝手に話を切り上げる。

 人の心を荒らすだけ荒らして。


「はい! これとこれとこれと・・・・・・」


「たくさん買うね〜」


「私の家大家族ですから!」

 七夏実と白姫さんが楽しそうに会話を弾ませている。

 俺は白姫さんから言われた言葉で頭がいっぱいだ。

 

「・・・・・・お兄ちゃん」


「・・・・・・」


「お兄ちゃん」


「・・・・・・」


「お兄ちゃん!!」

 妹が大きな声を出したことでまた店内から一気に視線を集める。

 さっきも注目を浴びたためこれではお騒がせ兄弟だ。


「お客様すいません」

 白姫さんが謝っているが、ことの発端はキミが・・・・・・。

 クソ、それは単なる言い草か。

 俺も白姫さんと同じようにお客さんに向かって、何回か頭を下げた。


「ごめん七夏実。それでどうしたの」


「私もごめんなさい。その、お願いがあるんです」


「お願い?」


「ケーキを買っていたら、優華姉にも買ってあげたいなって思ったんです」

 昔からよく交流していて、七夏実は優華のことを本当の姉のようにしたっている。

 それもあり優華のあとを追うように中学校では生徒会長を務めた。


「いいと思うよ。優華も喜ぶと思う」


「ですです!! だから、あの」

 ショーケースを指差すと勢いよく俺の前に出る。


「お兄ちゃんが選んであげてください優華姉のケーキ」


「俺が!?」


「その方が優華姉も嬉しいはずなので」

 お願いですとまばたきを数回しながら俺の返答をうかがってくる。

 こういうのは出来る限りやりたくないんだけどな。

 昔優華にあげたプレゼントは自分の中で上手くいった自信があるやつはかなり少ない・・・・・・。

 白姫さんが視線を俺に向けてくる。

 無言で口だけ動かす。

 口の形だけ見たら、だいじょうぶ、と言われた気がした。

 なんだよ大丈夫って。

 そんな簡単な話では・・・・・・。

 

「うん・・・・・・」

 俺が食べたチョコレートケーキが目に入る。

 あれはかなり美味しかった。

 優華も食べたら絶対喜ぶと思える。


「その、チョコレートケーキ。あれなら」


「チョコレートケーキですか?」

 頷いた。


「わかった!! 白姫さん特製チョコレートケーキお願いします!!」


「は〜い。お買い上げありがとうございます!!」

 嬉しそうにニコニコと笑いあう二人。

 心にモヤモヤとヒリヒリした痛みが湧いた。


「外にいる」

 店の外に出て七夏実がお会計を済ませるのを待っていた。


「お兄ちゃんお待たせです!」

 

「買えた?」


「みんなの分買えました!」

 手にはたくさんのケーキが入っているであろう箱を持っている。

 

「持とうか?」


「いいですいいです。お兄ちゃんはさっき買った食材の買い物袋を持っているので」


「それくらい大丈夫だよ。俺は筋肉があるからな」

 買い物袋は片手で持っているため、もう片方の手はあいている。

 そっちで持てばいいだけだ。


「持つよ」

 七夏実の持つケーキの箱を手にとる。

 意外と重さがあるな。


「あ・・・・・・わかりました。ありがとうお兄ちゃん」

 

「どういたしまして」

 あいた手を開いては閉じ、開いては閉じと手持ち無沙汰ぶざたになったのか何回も繰り返していた。

 

「白姫さん、ほんとに優しいです」


「優しい、か」


「話していて凄い気を使ってくれました。ケーキもプレゼントしてくれたんです」


「それは優しいというのか。どうなんだろうな」


「優しさですよ!」

 

「プレゼントをしてくれた。確かにそこだけ見ると優しい」


「ですです!!」

 

「だけどたいして仲良くもない、最近出会ったばかりの男にケーキをプレゼントするなんて・・・・・・それは優しさなのか。単純なお節介せっかいだろ」


「お兄ちゃん?」


「・・・・・・ごめん。なんでもない。白姫さんは優しいと思うよ」

 七夏実は白姫さんのことを好きになっている。 

 それはそうだろうな。

 一面だけを見たら、可愛がって優しくして美味しいケーキをくれた可愛いお姉さん。

 嫌いになる理由がない。

 でも、俺は逆だ。

 そういういろんな面を持っている。

 自分の本当の姿を隠しているような人は苦手だ。

 要らぬ善意と気づかぬ悪意を無意識に振り撒くからだ。

 

 まるで俺のような・・・・・・。

 

 











「お疲れ波音羽ちゃん。今日は上がっていいよ」


「はい! ありがとうございます。先に上がります。失礼します」

 更衣室でケーキ屋の制服を脱ぐ。


「う〜ん・・・・・・」

 下着姿になり、体を覆う物がほぼなくなる。

 歪んだ私を隠してくれるものはなにもない。


「私なに言ってるんだろ」

 偉そうに・・・・・・。


「本咲に言える立場じゃないじゃん」

 私は・・・・・・私も・・・・・・。


「嫌だな。ほんと」

 自分が嫌い。

 でも嫌いなままではいたくないから無理に自分を好きになろうとしてるだけ。

 なのに綺麗事を並べてる。


「よし! これから予定がある。ゆっくりはしてられないな」

 フリルがついた白色のノースリーブと水色のショートパンツにさっと着替える。

 今日はかなり忙しくて汗をかいたから、いつもより制汗剤を多めに塗る。


「つけすぎて匂いがキツくなってもあれなんだけど・・・・・・流石に男の子に会うからな」

 持ってきた香水を軽く首にかける。


「うん、これで大丈夫」

 身支度をして、最後に鏡で自分の姿を最終チェックしてから更衣室を出た。


「楽しみだな〜〜」

 私の中にある自分への嫌悪を心の奥にしまいこんだ。



 










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