星がきれい
見あげます。
建物を一歩出れば
かたくて すきとおって
棘のはえた寒さの茂み
黒いスケートリンクなアスファルトから
逃げるように夜空を見あげれば
なんて星がきれい
ぶ厚いレンズごしでさえ
見えないものを増やしてしまった
ふちなしメガネのぼくだけど こんな夜には
まだ見える星が幾つもあるんだってこと
忘れさせてくれないから
氷のつぶてまじりのような冬の夜の空気も
嫌いになれないや
あぁ だけど この夜空にも
ぶ厚いレンズごしでさえ ぼくの目にはもう
見えなくなってしまった星が
どれほどあることだろう?
それでも 満天の星に心を奪われるほど
光の絨毯を敷いていたころより
宝石をひとつずつ ひろいあつめてと
まばらな星たちがころがってる いまのほうが
大切なもの 大切な意味
ちゃんとわかるような気がするし
見えなくなってしまったからって
消え失せてしまったわけではない星に
もういちど目をこらしたり
ふちなしメガネにたよらずに
閉じたまぶたの裏にうつしてさがすこと
こどものころにならできたはず
できなくなったらわけでもないって
耳うちするように思い出させてくれたから
やっぱり どうしても
冷たさのつぶてが ほおに痛かろうと
冬の夜の空気は 嫌いになれないんだよなぁ
空を見ること、忘れないうちは大丈夫。