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第73話 妖魔領域の遊戯邸

第73話 妖魔領域の遊戯邸


 鬼手の異名を持つ、妖魔種のユナ。

 レイラが言っていた通り、妖魔種である彼女は強力な精霊術を扱える。

 それに付け加え、高い身体能力と戦闘センスを持っており、それは自分を遥かに凌ぐとヨヅキは語っていた。

 そんな危険人物――、今は味方である事が頼もしい限りだが、彼女の所属する遊戯邸には、更に強い人物が2人いると、道中――、と言うか海上になるのだが、ユナの口から聞かされる。


「とんでもない所だ……。」


 強力な力を持つ種族、妖魔種を束ねる魔王――。

 自分なんかとは比べ物にならない剣技を有する、元勇者のヨヅキ――。

 そのヨヅキが敗れたと言う、とてもけしからん格好の鬼手のユナ――。

 そのけしからんユナの所属する遊戯邸――。

 引っ切り無しに現れる強者に対し、最早恐怖よりも呆れの方が勝っていた。

 何なら、魔王は2人いると言われても、もう驚かない。

 また一つ、自身の常識が上書きされていくのであった――。




 ユナの操縦で大海を渡り、俺達は妖魔領域の大陸に上陸する。

 そこで見た町の風景は、この世界の人間領域と特に変わりのない、住人たちが普通に生活を営んでいる光景だった。

 身体的特徴の違いがないだけに、ここが妖魔領域であると言われなければ人間領域の辺境地だと錯覚するだろう。

 しかし、その認識は、彼女の所属する遊戯邸の屋敷の門を潜り抜けた途端に改めさせられる事となった。


「あら、おかえりなさいユナ。それと、ヨヅキさんはお久しぶりですね。」


 ブルーブラックの長髪に浅葱色の瞳。

 ヨヅキをリンゴ、ユナをグレープフルーツと例えるなら、彼女のそれはメロンとたとえるに相応しい。

 その特徴的な部分を慎ましやかにしつつ、凛としたメイド服を着こなす女性が出迎えてくれた。


「あー、ただいま。」


「こちらこそご無沙汰しております。エルさんこそお元気そうで何よりです。」


 そっけなく挨拶を交わすユナと、対照的に律義なヨヅキ。

 各々が挨拶を交わす中、初対面の俺だけが取り残される。


「ユナが返ってきたのであれば、珍しく全員揃いましたね。メーディス様とリーネも昨日戻られたので。」


「あー、それじゃ今日は報告会か。できればゆっくりしたかったんだけど……。」


 身内同士の会話に入ることもできず、只々待ち惚けを余儀なくされるが、目の前の果実を堪能するには十分な時間だった。


「二人とも身内同士の話はその辺にして、まずはお客様をご案内してはどうかしら?」


 そんな事を考えていた矢先――、二人の会話に割って入るようにして、屋敷の方からもう一人女性が姿を見せる。

 ミディアムロングくらいのライムグリーンの髪にアンバー色の瞳。

 彼女もまたお淑やかなメイド服姿ではあるのだが、エルと呼ばれた女性とは違い、絶対的破壊力を有する、スイカサイズの豊満な胸元が強調されていた。


「メーディス様、これは失礼いたしました。」


 失態にこうべを下げるエル。

 同時に揺れ動くメロン――。


「身内が大変失礼いたしました。私はメーディス・ラ・フランと申します。」


 メーディスと名乗った女性も深く頭を下げ、それによって風光明媚な渓谷が映し出された。


「メーディスさんお久しぶりです。」


「は、はじめまして……、レオルド・オブレイオンと申します。」


 あまりの景観に少し緊張気味で挨拶をする。

 自身でもおかしく思う程に、ここまで動揺するのは初めてだ。

 第一印象の為にもバレないようにしなくてはいけない。


「お久しぶりです、ヨヅキさん。はじめまして、レオルドさん。立ち話もなんですので、屋敷の中へご案内いたしますわ。」


 律儀に挨拶を返し、メーディスは俺達を屋敷へと案内するのだった――。




 屋敷の応接室のような部屋に入ると、そこにはもう一人――、淑女と言うよりは少女と呼ぶ方が合いそうな女性がソファーに腰かけていた。

 白藍しらあいの髪をツインテールに結い、無表情と言うか儚げと言うのか――、表情の乏しさがガーネットのように赤い瞳をより特徴的に見せている。

 衣装はエルやメーディスと同じメイド服だが、梨ほどの重量はあるだろう胸元は、二人とは対照的に殆ど露出がない。

 隠れているからこそ探求心をくすぐられるというものである。

 これはこれで良い。


「紹介しますわ。彼女はリーネ・フレイン。ヨヅキさんも話をするのは初めてになるかもしれませんね。普段リーネは隠密として動いていますので、屋敷に長く滞在することは珍しい事ですの。」


 メーディスから紹介を受け、リーネは何か話そうとしてかこちらに視線を向ける。


「……。」


「……。」


 ジーっと見つめられるが、言葉を掛けられることはなかった。


「はじめまして……、になるのかな?リーネさん、以前見かけたかもしれませんが、私はヨヅキ・ミヤシロと言います。」


 沈黙を破るように、ヨヅキが挨拶で口火を切る。


「ん……。」


 すると、分かったと言わんばかりの短い頷きが返ってきた。


「俺はレオルド・オブレイオン。よろしくな、リーネ。」


「……。」


 負けじと俺も挨拶をしてみたが、俺には頷きすら返ってこない。

 そもそも俺の事を見てすらいない気がするのだが――。


「あー、まぁリーネはいつもこんな感じだ。あんま気にすんな。」


 咄嗟にユナのフォローが入る。


「そんなことより、リーネ。ドランクはいないのか?」


 フォローしてくれたというよりは、自分が聞きたいことがあっただけのようだ。

 あっさりと別の話に置き換わる。


「……寝室にいる。……ユナが帰ってきたら起こせと言っていた。」


 ユナの質問に坦々と返すリーネ。

 どうやら会話自体はできるらしい。


「あー、そういうのは早く言えよ……。あたしが起こしてくるからみんな待っててくれ。」


 そう言葉を残して、ユナは奥へと消えていった――。

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