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第70話 勇者パーティ襲撃

第70話 勇者パーティ襲撃


「一人ずつ向かうな!四方から囲い込む様に攻めろ!」


 不審者に認定された女性の周囲に転がる兵士達を前に、兵団を指揮する団長の男が新たに指示を出す。

 単独戦闘では一方的な状況であった為、多勢の利で押し込もうと考えたようだ。


『止水一閃』


 しかし、彼女を取り囲んだにもかかわらず、その後の攻勢を許してはもらえない。

 何より、彼女の剣筋――、斬撃といったものが全く見えないのである。


『止水一閃』


 何度も取り囲もうと配置につくが、直後に切り伏せられて包囲を許さない。

 そして、彼女の剣は一瞬の閃光と共に元の鞘へと収まるのだ。


「くっ!配置はもうよい!一斉にかかれ!」


 煮えを切らした団長の命令で兵士達は次々に斬りかかる。

 しかし、その悉くを彼女の抜刀が弾き返していた。


「相手は一人だ!手を休めず、死角や背後の隙をつけ!」


 団長の声には焦りが出始めている。

 だが、それも仕方のない事だ。

 これまで斬りかかった二十数名が犠牲となり、それでも尚一太刀も触れる事すら許されていない。

 圧倒的な力を前に、只々消耗し続ける状態となっていた。


「もしかして、あれが魔王なのか?」


 これだけ強いということは、魔王である可能性もあるのではないだろうか。

 そう思って出た俺の言葉に、近くの兵士が反応する。


「恐らく別者でしょう。ここは人間領域ですので、魔王自らが単独で攻め入ることはまずあり得ません。」


 なら、あの女性はいったい何者なのか。

 俺は少し興味が沸いた。


「なるほど。ならこれで確かめてみるか。」


 兵士達と同様に、俺は剣を抜いて構える。

 これまで訓練してきたのはこういう時の為だ。

 仲間達が倒されていく中、黙って見ているわけにはいかない。


 初の戦闘――。

 初の殺し合い――。


 意識をすればするほど、緊張が握る剣に伝わってくる。


 自然と額には汗が滲み出ていた――。

 呼吸も荒い――。

 鼓動の音が大きくなり、だんだんと速さが増していく。


〝――到底及ばないとしても、君は行くのだな――″


 どこからか幻聴も聞こえる始末だ。

 どうかしている。

 いや、或いは俺の心の声なのかもしれない――。


「勇者様も戦われるのですね。では、私が先に出て死角を作ります!」


 剣を構えだした俺を見て、隣にいた兵士がそう告げて飛び出した。

 行かなくてはいけない状況に際し、覚悟を決めたのだろう。


 今度は俺の番だ――。


 俺は彼の背を後を追い、不審者との距離を詰めていく。


『止水一閃』


 目の前の兵士が斬り伏せられたと同時に、不審者とされる――、女性の姿が眼前に現れた。

 黒く長い髪とそれを束ねる赤い括り紐に強い印象を受ける。


 そして一瞬――、


『止水一閃』


 余計なことを考えた所為か――、否――、圧倒的な力の差が勝敗を決した。

 気付くと視界が空へと切り替わり、すぐさま土埃と強い衝撃が体に襲い掛かる。

 そして、意識は暗闇へと落ちていった――。









〝――立ち向かう覚悟は英雄のそれだが、勇敢と無謀は違う――″


 ふと幻聴が聞こえ、意識が戻ってくる。


 温かい――。

 そして、何処か心地よい揺れが取り戻した意識を逆流させ、眠りへと誘おうをしている。


 その誘いに負けてはならない。

 何故なら、今は戦いの最中なのだから――。


「……はっ!」


 状況を思い出し、はっと目を見開いた。


 何処かで見覚えのある長い黒髪と赤い括り紐が目の前にあり――、眼前の首筋からはどことなくいい香りが漂っている。

 どうやら俺は、対峙した女性に背負われているようだった。


「……一体、どうなって……。」


 理解しがたい状況に言葉が零れる。


「起きたようね。」


 それに気づいた女性は立ち止まり、俺をゆっくりとその場に降ろしてくれた。


「立てるかしら?」


 頭が整理できていない所為もあり、彼女の言葉の示す通りに行動する。


「どうやら大丈夫みたいね。」


 あまり感覚が分からない。

 だが、彼女がそう言うのであれば、俺はいま自分の足で立っているのだろう。


「私はヨヅキ。ヨヅキ・ミヤシロ。貴方と同じように異世界から転移したの。」


 俺と同じように――、異世界?


 はっきりとしない頭で彼女の発した言葉から単語を拾っていると、無視できない単語に行き当たる。


「……君も、俺と同じ……。」


 感覚に麻痺が残る中、尋ねるには程遠いが、俺は必至で声を絞り出した。


「ええ、そうよ。私の場合は元がつくけれど、貴方と同じ勇者よ。」


 肯定が返ってくる。

 まさか、ここにきて同じ状況の人物に会えるとは思ってもみなかった。


「そう……、か……。なら、……よかっ…………。」


 突然の衝撃から安堵への移行――。

 俺の意識は再び途切れることとなった――。

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