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ソロネ武闘大会

 ――ソロネ武闘大会、当日。


 アーチレギナの南西部にある巨大なコロシアム。

 そこで聖王の婿になるに相応しい武力を持つ男を決める大会が開かれる。

 待ちに待った時間だ。


 武闘大会はあくまでソロネ王選抜試験の一次選考の場にすぎない。

 だが歴代ソロネ王の多くが大会優勝経験者である事実を鑑みると決して疎かにはできない。

 結局のところ、強者でなければこの勇者大国で周囲を納得させることなどできないということか。


「……」


 そして現在――アドラは炎天下のコロシアム前で、長蛇の列に並んでいた。


 大会に参加するには受付でエントリーを済ませなければいけないのだが……待ち時間があまりに長すぎるっ!!


 我こそ聖王の婿に相応しいと自負する猛者たちが全国から雲霞の如く集まるのだからしかたがない。いやしかたがなくはない。


 ――毎年こうなることがわかっているはずなのに、なぜ前日にエントリーできるような仕組みにしておかないんだ!


 そこまで運営のレベルが低いのか。

 それともこれも聖王の与える試練の内なのか。

 始めこそ暢気にしていたアドラも遅々として動かない行列に次第にイラついてきた。


「てめえ今おれの足を踏んだだろ!」

「そういうてめえこそおれの横腹に肘を入れただろ!」


 基本温厚なアドラですらイラついているのに血の気の多い今どきの若者がイラつかないはずがない。すでに行列のところどころでケンカが始まっている。

 飛び交う罵倒。飛び散る血しぶき。吹き飛んだ参加者が飛ぶように駆けつけた救助隊員に次々と担架で運び出される。

 大会前から酷い有り様だがおかげで行列は少しは空いた。


 マジでこれも選考の内で堪え性のない参加者を振り落としているのだろうか。

 いやまさかそんなはずが……。


 武闘大会の運営を仕切る予定のアドラは今大会を参考にしようと思っていたのだが、さすがにここまでブッ飛んだ運営の真似はできない。


 ――だいじょうぶか、この国?


 シュメイトクを筆頭に魔界の国家も大概なのだがそこは棚にあげてアドラは呆れた。

 誰しも自分の故郷のことは甘く採点しがちである。



                   ※



 数時間待たされたものの、とりあえず大きなトラブルもなくアドラは大会にエントリーすることができた。

 途中アドラの結界の発動範囲に入って何人か氷結させたが見なかったことにする。

 エントリーを済ませたアドラは選手用の控え室へと案内された。


「……こんな手際で今日中に、大会の全日程を終わらせられるのかなぁ」


 本日は予選だけとのことだがそれでも参加者は何千人といるはず。

 一人ずつ振り落としていったら夜になっても終わらない。

 いくらお祭り大会とはいえちょっと酷い。

 これは反面教師にするべきだろう。

 自分が主催する大会ではこんな不手際は絶対にしないと堅く心に誓う。


「準備ができました。みなさん入場してください」


 控え室で更に小一時間ほど待たされてから、ようやくお呼びがかかった。

 アドラは嘆息しつつも他の選手たちと共に係員の指示に従う。


「ほら、ちんたらしないで。時間が押してるんですから!」


 ――誰のせいで時間が押してると思っとるんじゃい!


「すいませぇん。急ぎますからどうかご勘弁をぉ」


 内心の怒りをおくびにも出さずアドラはへらへらと笑って対応した。

 これは我慢ではなく抑制と制御である。

 たいした違いはないのかもしれないが、要は心の持ちようだ。


「おおっ!」


 やっとのことで闘技場に入場したアドラは、そこで感嘆の声を挙げた。


 呆れるほどに広い試合会場に八つの大きな正方形リング。

 ソロネの広大な土地だからこそできる贅沢だ。

 狭くて土地が割高な魔界ではこうはいかない。

 こんな広いリングで伸び伸びと試合ができるなら、ここまでの労苦も少しは報われるというものだ。


 アドラは係員に促されて『Ⅷ』と刻まれたリングにあがる。

 同時に満員の客席から拍手喝采が巻き起こる。

 どうやら一番手のようだ。


 衆目に晒される緊張感はルガウ王になったことで少しは慣れた。

 ここからではわからないが仲間たちも自分の雄姿を観戦しているに違いない。

 わずかな期間ながらも必死に努力した成果を今ここで見せる。

 アドラは意気込むが、すぐに違和感に気づく。


 リングにあがったのはアドラだけではなかった。

 控え室で一緒にいた他の面子も全員リングにあがっている。

 アドラが首を傾げている間にも戦士たちは続々とリングインしていく。

 仕舞いにはあれほど広かったリングがすし詰め状態だ。


 ――ま、まさかこれって!


 アドラが気づくと同時に場内にアナウンスが入る。


『深夜まで続いてしまった前大会の反省を生かし、今回はバトルロイヤル形式を採用させていただきました。ルールは単純明快。どんな手段を用いても最後までリングに残っていた一人が予選通過者です』


 ――だからそういう大事なことは事前に伝えておけよぉぉぉっ!!! 


 アドラは怒鳴った。

 抑制も制御もクソもへったくれもない。

 こんな大乱戦では修行の成果を見せようがないだろ。


 だがアドラの猛抗議をガン無視して、試合開始の鐘は無情にも鳴らされた。

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