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四天王アドラの憂鬱~黒き邪竜と優しい死神~  作者: 飼育係
第4章 魔界の覇王 Devil Overlord
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メリークリスマス! サンタからのクリスマスプレゼント

 じんぐるべーるじんぐるべーるすずがぁーなるぅーっ!

 すずのリズムにひかりのわがまぁーうぅーっ!!



 めりいいいいいいいいいいぃくりすまあああああああああああああぁぁぁす!!!



 よい子の諸君おはようこんにちはこんばんは!

 みんな大好き魔王竜改め神竜王サタンさんだよぉ!

 クリスマスだからサンタが来るとでも思ったかぁ? 甘ぇーよカスが! 今宵はサタンクロースが提供する絶望のクリスマスだ! 泣いて喜べやぁ!! ひゃっはははははあああああああああああっ!!



 ああ? いつもよりテンションが高い??

 そりゃそうだろ! アドラん中で楽しくバトル観戦してたらいきなりズドンだぞ!?

 近場に依り代になれる奴がいなかったら危うく浮遊霊になって現世を彷徨さまようところだったわ!

 テンション上げてかなきゃやってらんねぇよぉっ!!!



 ああそうだよ! 何もかも全部あのクソババアのせいさ!

 マジギレした挙げ句に足下掬われるとかダサいなんてレベルじゃない! しょせんラースが泥か何かを適当にこねて作った二流神だっつうことだ! いいや、アレはもう神ですらない! ただのキ○ガイモーロクババアだ! 二度と老人ホームからしゃしゃり出てくんなよ!!



 だが……まっ、実際ガイアスは大した奴だった。



 空の魔術により己に降り注ぐすべての因果を受け入れ真空へと変えて返す。

 それだけでもすでに神の領域だというのに、宣言通り更にその先をも見せてくれるとは思わなかった。


 真空の内より生まれし真実の一撃――決して切れないはずの母さんのフォーチューンリンクを叩き切ってみせた。


 素晴らしい! 感動だ! はい拍手!

 おかげでこっちも酷い目に遭わされたが、こればっかりは認めざるをえない!


 ガイアス、キミは神を退けた人類史上最も偉大な英雄の一人だ!

 世界唯一の真空と真実の大魔術師!

 ウロボロス種に負けたクセに慢心をやめず、その名にあぐらをかいているキュリオテスのナンチャッテどもとは違う、本物の神喰らう悪狼――真のフェンリルだ!


 常に未来を見据え進化を続けるその姿勢、ボクも是非見習いたい。いつまでも過去に囚われてジメジメジメジメやってるシオンのネクラ野郎はキミの爪の垢でも煎じて呑めばいいのにね。

 後セコい結界でいい気になってるモーリスのこそドロババアもな。ボクから盗んだ神の知恵返せよ。


 というわけで――見事神超えを果たしたガイアスくんには、ボクからクリスマスプレゼントをやろう。


 ズバリ、ボクが支配する新世界の王になる権利だ!

 一族を引き連れ新たな狼王としてキュリオテスに君臨するがいい!

 人狼族の最強はこれで証明されたよ! やったねガイアス!

 他人類も彼を見習って進化することをオススメします!



 さて次は、こんなクソ忙しい時期にボクに付き合ってくれているとってもよい子な読者にプレゼントをやろう。

 といっても大したモンじゃない。

 ちょっとした昔話だ。



 ガイアスと母さんの会話だけじゃ、神話時代に何が起きたのかイマイチわかりにくいだろ?

 あいつら揃って口下手なアホだからさ、ろくに人に説明できねぇんだわ。だからその辺の補足説明をしてやろうと思ってな。

 大変な状況下であるにも関わらず、わざわざ時間を割いて話をまとめてやるボクに感謝してくれよ。


 ……なに興味がない?

 それでも聞いてもらう。これは強制だ。拒否権はない。


 最初に断っておくけどボクは当事者じゃないし、母さんも当時のことをあまり語りたがらない。ボクが調べた範囲内での知識になるから、若干正確さに欠ける供述になるかもしれない。その辺は留意してくれ。

 でもまあ、絶対の真実なんてものは個々人の心の中にしかないものだし、間違っててもボクはあまり気にしないけどね。つうか仮に間違ってたとしてもボクの語りが絶対の真実となるのだ。ヴァーチェの歴史家にそう書き残すよう命じたからね。知ってる? 歴史って歴史家の書いた創作物ファンタジーなんだよ。正確な過去の事実なんざ世に残ってるワケねーだろ。ジークフリーデとか美化されすぎだわ、あっはっは。


 さて前置きも済んだことだし、それじゃあチャチャっと始めるよ。



 事の起こりは、ラースが自らの分け身として人間という種を創造したところから始まったとされる。

 知っての通り人間は弱くて脆い猿の進化種だ。そのくせ無駄に悪知恵が働き繁殖力が高いので瞬く間に増えて世界を埋めていった。


 で、これに反発したのが母さんだったわけよ。


 まあ、そりゃそうだ。世界の資源リソースは有限なのに、傍目には無価値で無意味に見えるゴミで埋めていったら誰でも怒る。ただ母さんの場合、人間に対する嫉妬みたいなものがあったみたいだけどね。


 それで「もっと優秀な種を」ってことで母さんが生んだのがボクたち魔族だ。

 いやまあボクはすでに魔族ではなくて神なんだけど。


 魔族はそういう経緯もあって、やっぱり人族よりかはナンボか優秀マシでね、その力でどんどん勢力を伸ばしていった。

 万年も経たない内に人族と勢力を二分するほどに増えたそうだよ。


 そしたら当然、目の上のタンコブを消したいって思うワケじゃん。

 それでまあ色々あって、地上の覇権をかけて人族と勝負するってことになったのよ。

 これが現代でも続くヴァーチェとキュリオテスの人魔戦争の発端だね。

 現代のはボクが再現やらせてるんだけどそれはひとまず置いとくわ。


 人族と魔族の、エンジェル・ブラッドウェイを挟んでのバチバチの大ゲンカ。

 直接見たわけじゃないけどそれはもう凄まじかったらしいよ。

 最初の規模こそ紛争レベルでそこまででもなかったらしいけど、膠着状態に我慢できなくなった母さんが魔族に『王の力』を与えてからはラースも介入してきて、それはもう酷い泥仕合に発展したそうな。


 いや違ったか? ラースが先に勇者を造ったから母さんが魔王を生んだんだっけ? シオンは魔王が先だといってたけど……この辺解釈が割れてるんだよなぁ。

 まあいいや、どっちでもそう変わらんだろ。卵が先か鶏が先かレベルの話だわ。戦争にどっちが悪いとかねえしな。だから当然ボクも悪くなぁい。


 重要なのは、子供同士のケンカだったはずのものが、最終的に親同士の直接的な大ゲンカにまで発展しちまったという大人げねぇ事実だけだわ。

 まあ魔族自体ラースへの対抗心から生まれたものだから必然の結果ではあるか。


 最初の方はわりといい勝負だったらしいよ?

 でも主力であるはずのウロボロス種が裏切ってからは戦況が人族に傾いちゃってね。どうにか取り返そうと母さん自ら指揮を執ったんだけど、結局どうにもならなくて、最終的にはご存じの通りラースに滅ぼされて終了だ。


 ただラースのほうも無事じゃ済まなかったらしい。

 相討ち……ってほどではなかったらしいけど、だいぶ寿命を削られたそうだよ。

 創造主相手になかなかやるじゃん母さん。元々ご高齢だったから大したダメージ与えてなかった説もあるけど一応褒めとくわ。女の執念って怖いよね。


 それでまあ、どのみち長くはないだろうってことで、ラースは自らの血肉を使って聖杯と聖水を作り 《抹殺の悪威》 で汚染された大地を浄化してこの世を去っていった。



 これが誰でも知ってる神の大地『エルエリオン』誕生の神話だ。



 シオン・リーが過去視によって後生に伝えたものを下地にしたけれど、あいつはこれぐらいしか取り柄のない悲しい奴なので哀れに思うなら信じてあげて欲しい。ボクも本神からある程度は裏付けを取っているからお情けで信じてあげるよ。どうせ人間寄りに話盛ってるだろうけどな。

 ここで終わっとけばまあ、それなりに綺麗な話で済んだんだけどなぁ。



 世の中にはキッチリ決着がついたにも関わらず、決してそれを認めずにしつこく食い下がる女の腐ったようなのが必ずいる。母さんがまさにそれだった。

 黄泉に逝った母さんは大地に還ったラースを知ってこう思ったそうだ。



 ――『何者にも負けない不滅の肉体が欲しい』ってな。



 それでラースを超えられるとか考えたらしいね。アホくさ。

 アホくさい話だけど母さんは頑固者だからやるといったら絶対やるんだよ。


 ただ、いざ実行に移すとなるとこれがなかなかに難しい。

 まず地上では無理だ。ラースの神力の影響があるから母さんの権能は及ばない。

 そこで黄泉と地獄の境目にある魔界に目をつけた。

 ここにはそこそこの数の原住民と、地上での勢力争いに負けて逃げてきた負け犬たちがわんさかいたから素材には困らない。コレを利用して新たな神の器を生みだそうとしたんだ。



 聡明な読者ならもうおわかりだろう。ボクがその記念すべき第一号さ。



 わずかに残った自らの肉片いでんしを必死に魔界に移動させ、魔族を利用して交配実験を重ね、気が遠くなるほど長い年月をかけてようやく完成したのがボクという神の器だ。

 もっとも、この事実を知ったのはボクがくたばる直前なんだけどな。

 そういう大事なことはもっと先にいっとけや。まあ最初にいってたら真っ先に母さんをぶち殺しにいっただろうけどな!


 で……まあ、この計画も母さん的には失敗に終わったそうだ。


 理由は単純でボクが聖王に負けたから。

 母さん曰く完全無敵じゃなきゃダメだとよ。

 クソ贅沢なババアだわ。

 あとボクの暴力的な性格も気にくわないんだとか。

 他神のこといえたことかよこのクソババアが、ちょっと魔界を荒らした程度でガミガミうるせーんだよ。どうせ魔族が消えたら実験材料がなくなって困るっつう自己本位な話だろうに。


 ただこの計画、まるきり失敗というわけでもなかったんだとさ。

 ボクの肉体自体は聖王の聖気を以てしても抹消できず未だ健在なわけだしね。

 だからとりあえずキープってことで冷凍保存しておいて、ボクのノウハウを活用してネクストチャレンジという運びになった。今度はレイワールというエリート魔族の胎を使ってね。



 第二の神の器――その完成品がご存じアドラ・メノスだ。



 こいつはボクとは違って母さんかなり入れ込んでいたな。

 そうとう自信があるらしく四六時中アイツにベッタリだった。

 事ある毎に口出しして助け船を出したり……記憶を改竄したり思考をイジったり、意識自体を乗っ取ることもままあるから、端から見たら都合のいいように操ってるだけだけどな。でも当の本神は息子のためだって思ってるんだから、とんだモンスターペアレントだよ。


 でだ、あまりに過保護すぎてのんびりのんびりやってるものだから、いい加減いらついてきたボクが運命を加速させてやったんだよ。


 具体的にいえばルーファスを使って魔王軍に放り込んでやった。

 おかげで千年以上停滞してた物語が一気に進んだわ。

 冗長な映画ほど観てて退屈なものはないからね。



 ――その結果がごらんの有様ですわ。



 今回の計画も先ほどめでたく破綻いたしました。

 ガイアス・ヴェインとの決闘に自ら出向いた挙げ句みっともなく敗北してね。

 神の因子すら残せず完全ではないとはいえ縁を断たれ黄泉まで強制送還されたから、次の器を造るのはそうとう時間がかかるだろうね。母さんの魂が自然消滅するほうが早そうだ。


 てことで母さんの野望はこれにておしまい。めでたしめでたし。

 ただ不肖の息子としてこれだけはいわせて欲しい。



 勝手に失敗作扱いすんなよ。

 まだボクは何も終わっちゃいない。

 もちろんアドラもだ。



 動機はアホくさいが不滅の肉体自体には興味がある。

 アドラの身体にその可能性が眠っているというのなら、是非解き明かしてボクのモノとしたい。

 母さんの計画はボクが引き継ごう。



 何があろうと決して滅びぬ、死を超越した神――『死神計画』をね。



 ボクが諸君らに向けた決意表明プレゼントはこれにて終了だ。

 母さんが敗れた以上、ボクも暢気にはしちゃいられない。

 今度あいつらと会う時はキッチリ白黒つけることになるだろうね。

 楽しい余興になると思うからせいぜい楽しみにするがいい。



 さあ次のプレゼントは誰に贈ろうかな。

 アドラはもちろん最後として……やはり聖王エリかな。


 前にもいったかもしれないけど、あいつは実力以外は初代に似ても似つかぬアバズレな上に、ボクを殺そうと企む悪い子だ。

 悪い子には石炭ペナルティをくれてやるというのがサンタの昔からの習わしだ。

 今はルガウ……いや、もう本国に帰ってるかな。いずれにせよ地上に向かう必要があるね。ボクの本体のほうは脱出までもうちょっとだけ時間がかかりそうだし、他の分霊たちと合流して連携していかないとな。



 というわけでくぞトナカイのステンノ!

 世界中のクソガキどもがボクたちを待っているぞ!!

 最高のクリスマスプレゼントをド派手にまき散らしてやろうぜ!!!

四章はここで終了となります

次回から最終章が始まります

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