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第八十四話 動画で恐怖体験

 動画配信者のFさんの話である。

 妻と2人組で動画をネットに投稿して広告収入を得ているということで、そのためにいろいろな企画を立てて挑戦しているそうだ。

 このときは妻に、ネット配信されている投稿系ホラー番組の中の一本を見せてその反応を撮影、ネット投稿する予定であった。


「ちょ、これ、嫌なんだけど」


「まあまあ、俺一回通しで観たけどそんなに怖くなかったよ」


 怖がる妻に対してFさんはそう言うが、実は嘘であった。詳細は差し控えるが、ホラーDVD好きのFさんがこれまでに視聴してきた中でもこれは最恐クラスの動画だ。ネット上でも評判がいい。

 廃墟探検の動画である。夜に撮影者がわずかな手元の明かりだけを頼りに、殺人事件があったという廃屋の中を探索していく。

 投稿動画が流される最中にバックでおどろおどろしいBGMが入っている辺りは脚色もあるが、うまい具合に恐怖感を煽っている。

 いよいよ問題のシーンに近づいてきた。Fさんはほくそ笑む。

 この投稿動画のキモは、廃墟に幽霊が出現するという出方ではないところにある。

 およそ脈絡がない話だが画面にノイズが走り出し、ついにはそれが画面いっぱいに広がってしまう。無数の線が画面に広がったと思った瞬間、真っ暗な背景に突然女の顔が画面いっぱいに映し出されるのだ。

 そしてその瞬間が来た。

 ノイズが走り、女の顔が画面にでかでかと出た。


「きゃああっ!」


 妻が大声を上げて驚く。

 なかなかいい反応だ。そう思ったFさんだったが、同時にひどい頭痛がした。


「うっ、ぐうっ……」


 片目だけを開き、妻が映るカメラの映像と動画が流れているモニターの様子を交互に見る。

 口元に手を当てて驚きながら動画の続きを見ている妻。

 そして問題の動画だが、こちらには異常が起きていた。女が画面に登場した瞬間のまま、フリーズしているようだ。

 記憶では数秒の間だけ女を映したところで動画が終わり、リプレイへと進むはずだった。しかし女の顔が出たまま止まっている。


「いて、頭、ぐっ」


 頭を抱えたままFさんは撮影を止め、モニターの方の動画を止めてくれるよう妻に頼もうとした。

 その瞬間、画面の女の目だけが動き、Fさんと目が合った。


「ひっ」


 心臓に強い痛みを感じた。

 Fさんはその場でもんどり打って倒れる。


「えっ、ちょっと、大丈夫!」


 妻がようやくFさんの様子に気づき、席を立つ。

 しばらく横になっていたFさんだったが、しばらくして呼吸を整えて起き上がった。しかし頭の痛みが続いており、耳の辺りに違和感がある。


「ごめん、ちょっと、動画を止めてもらえるか」


 そう言うFさんだったが、すでにモニター画面は真っ暗になっていた。後から確認すると異常終了していたらしい。


「いて、いてえ、耳が……」


 耳の違和感が次第に痛みとなってきた。


「ねえ、これ、どうしたの?」


 妻がFさんの耳に手をやる。そして何かを掴むようにして、自分の方に引き寄せた。

 長い黒髪が、Fさんの耳からずるずると出てきた。


「うわあっ、なんだこりゃ、気持ち悪っ!」


 出てきた髪の毛は10本以上に及んだが、妻の協力でそれらを全部出したところでFさんの頭と耳の痛みは治まった。

「撮影できた動画は自分のところで使うよりも、動画投稿DVDへの採用を目指していくつかの映像制作会社に送ってます。そこで自分のチャンネルの宣伝もできればと」


 Fさんはしたたかに言った。問題の投稿動画については、内緒にされてしまったのが惜しまれる。

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