第八十二話 写真は誰が
祖母の家が取り壊される、という話を別の方からもお聞きしたので、続けて紹介する。
Sさんの祖母が亡くなって1月ほどとなる。
彼は住む人がいなくなったその家を片付けるため、週末の休みの日を利用して何度か通っていた。
老人ホームに入所していたが体調を崩し、病院で最期を迎えた祖母。
とうとうかつて住んでいた家に帰ることがなかったため、Sさんはそれを思うと無念さがこみ上げてくる。
長年空き家となっていたために家は傷んでいた。祖母の子どもたちの間で解体するかどうかという話が出ているが、物の整理は必要だった。
「ん、誰か来てたのか」
Sさん以外の親戚も片付けに訪れているのか、玄関には段ボールが積み上がっていた。
封がしてあるため中を改めることはせず、Sさんは自分のできる範囲でゴミ捨てや片付けをしていく。
家全体がほこりっぽくなっており毎回マスクが手放せない。
祖母の寝室だったらしい畳の部屋に散乱していた雑誌をまとめていく。
隣の部屋は仏間だった。
「そういえば、仏壇が残ってるんだったな。業者に持ってってもらえるものなのか?」
疑問を口にしつつ仏壇の回りを片付けていく。
「えっ」
不思議な物をSさんは見つけた。
仏壇の上の長押。
そこに亡くなった親戚の遺影が飾られているが、最も端に祖母の写真があった。
黒い服を着てうつむき加減の顔で写っている。
「な、なんで? いつ撮ったんだ」
Sさんの背筋に悪寒が走る。
この家に住んでいたのは祖母が最後で、それも老人ホームに入る直前までであり時間にして5年ほど前だ。
さらにSさんは混乱に陥ったが、それにも理由がある。
そこにある遺影が、祖母の葬儀の写真と違うのである。確か葬儀からその後の法要までに使われていた遺影では、祖母は正面を見据えていたはずだった。
「これ、誰かが撮って、この家に持ってきたってことか?」
ガタッ
天井で音がした。
「ひいっ」
疑問が解決していないうちに別の心配事が生じ、Sさんはパニック気味に家を後にした。
「お恥ずかしい話、この直後に体調を崩して一週間ほど寝込んでしまいました」
Sさんは言う。
「しかも私が寝ている間に叔父や叔母の間で家の取り壊しが決まったらしいのです。そして遺品はまとめて解体業者が持って行ってくれるから、私は片付けに行かなくてもよいと言われました」
それでも仏間にあった遺影については祖母の息子である叔父が引き取ったという。しかし、祖母自身の謎の遺影については、叔父の手に渡ることはなく行方知れずである。
「あるいは、私の見間違えだったのかもしれません」
果たしてSさんが見たものは見間違えだったのか、それとも実際に何者かが遺影を準備したとでもいうのだろうか。




