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第七十話 揺らしていたのは誰

 Iさんはバイト帰りに、家の近くの公園でバイト仲間のAさんと話をしていた。

 時間はすでに夜の20時を過ぎていたが酒を飲むでもなく、話し疲れたら帰るつもりだった。

 Aさんがベンチに座り、Iさんはときおり体を動かしながら立って話していた。

 他愛のない話の途中で、Iさんがあることに気づく。


「なあ、今って風吹いてないよな」


「あん? どうしたんだ急に」


 Aさんは、何を言い出すのかという顔をする。風はIさんの言うとおり、吹いていなかった。


「あの左側のブランコだけ、揺れてるんだよね」


 Iさんが言い、Aさんもブランコの方を見る。

 2つ並んでいるブランコの、左の方だけがゆらゆらと揺れている。

 勢いこそ弱いが、前後に少し振られている。何かの力が加わっているような動きだ。


「え、これ、なんだろ」


「ちょっと俺、動画撮るわ」


 Iさんがスマホで撮影を始めた。

 それでもブランコは揺れたままである。

 着座部分を繋ぐ鎖が振動しているように思われた。


「これって、あれじゃん、子どもの霊とかだよ」


 心霊ドキュメンタリー映像に詳しいAさんが言う。


「近くに寄ったら子どもの顔が出てきたりとかしないかな」


 そう言ってAさんはブランコに近寄り、周りを一周したが飽きたように戻ってくる。いつしかブランコの揺れも収まっていた。


 家に帰り、Iさんたちは撮影してきた映像を見た。


「あっ、ほら、ここだよ、ここでブランコ揺れてる」


 しばらくブランコが風もないのにかすかに前後に揺れている場面が続く。

 近くによって確かめようとしたAさんがカメラの前を横切る。


「えっ?」


 Aさんが画面を横切り、再びブランコが映ったときに異様なものが映り込んでいた。

 子どもではなかった。

 ブランコの支柱の上から、首を吊っている半透明の男の姿。

 黒か紺のスーツ姿で、足元に靴はなく白い靴下を履いているらしい。

 その足が、ロープで首を吊った体が揺らされるのに合わせてブランコの着座部分の板に当たる。

 ブランコは、そうやって揺れていた。

 突然、映像は終わる。撮影を止めたのだ。


「撮影してたときはそんなものが撮れてたなんて知らなかったから、まあ当然ですよね」


 Iさんは残念そうに言う。

 また、この公園でサラリーマンが自殺したという話は聞いたことがないそうである。

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