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第六十六話 撮り鉄対死者

 趣味で列車を撮影しているというEさん。

 彼の手法はある地点で列車を待ち、現れてから通り過ぎるまでを動画撮影するものだという。

 動画撮影中に列車の他に幽霊が映ったりすることはないのかと尋ねてみると、意外な回答をもらった。


「映ったことはありますよ」


 列車の窓に顔のようなものが映ったり、列車の向こう側に一瞬だけ人の姿が現れてまた消えたりしたことがあるのだそうだ。


「最も印象深いのは、あれかなあ」


 Eさんは思い出しながら語ってくれた。

 その日は天気があまりよくなく、Eさんや他の撮影仲間は雨合羽や傘を準備しながら草むらに陣取っていた。

 言うまでもなく近くに線路が通っており、現れる列車を撮影する予定であった。

 2時間ほど待ってようやく目当ての列車が登場した。普通客車である。


「おお、来たぞ」


 わずかに歓声が上がるが、それよりも皆がカメラを構えて撮影に集中する。

 列車がこちらに向かってくる。すでにEさんはカメラ越しにそれを見ていた。


「えっ?」


 線路に、何かが生えてきた。

 木でもない。草でもない。人間の上半身だった。

 髪の長い女のようだ。紫色の服を着ており、列車の方を向いているので顔は確認できない。

 それが地面からニュッと上半身だけ伸び、背中を反らせるように動く。

 列車が女にぶつかるまでもう数秒もない。

 Eさんは目をそらすか見続けるか一瞬迷ったが、結局そらさなかった。

 もうぶつかる、ぶつかる……

 そして悲惨な事態になる、そう思った瞬間に女の姿がフッと消えた。

 列車は速度を緩めることもなくEさん達の前を通り過ぎていった。

 仕事を終えたかのような雰囲気が少しその場を包むが、Dさんはそんな気分にはなれなかった。


「見たか?」


 口には出さず、Eさんは撮影仲間に目で問いかける。

 何人かから頷きが帰ってきた。

 あの、地面から生えるように出てきた女は何だったのだろうか。ことによると列車の事故の犠牲者の霊が出てきたとでもいうのだろうか。


 なお、Eさんはこの動画を公開することはなかった。

 霊が映り込んでしまったからなのかとも尋ねたが、返ってきた答えは異なっていた。

 他の人も同じものを撮影しており、自分の動画が珍しくなくなってしまったからというのがその理由だった。

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