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第六話 ゴミ捨て場

 Kさんはあまり感心できない趣味を持っていた。

 自分の住むマンションのゴミ捨て場のゴミを漁るのである。

 しかもまずいことに、彼が狙っていたのは衣類関係が入ったゴミ袋。


「袋の中にありますが、外からでも衣類と他の生ゴミとかは見分けがつくんですよ」


 それと決めたゴミ袋を開けて、よさそうならば戦利品を持ち帰るそうだった。

 その日も明け方にKさんは動き出した。ゴミ回収の当日だが、前日の夜から出されているゴミ袋はいくつもある。


「半透明の袋越しに、セーターらしき繊維の塊が見えたんです」


 女性が出したのか男性が出したのかはその時点では判然としない。しかし時間的にはまだ余裕を感じており、Kさんは中を改めてみることにした。

 袋の手触りはまさしく中に衣類が入っているのをうかがわせるものだった。

 丁寧に結び目をほどき、袋の口が開いたところでKさんは不可解に思う。

 ひどく生臭いのである。

 開けた瞬間に、生臭さが辺りに立ちこめたように思えた。


「衣類も生ゴミも、一緒の袋に入れたのかと思いました。珍しいことではありませんが」


 そう考えたKさんは、生ゴミで汚れていない衣類はないかと、一番上に入っていたセーターを掴んで袋から出した。


「うわあっ!」


 セーターの下に入っていたのは、人間の首だった。

 血のべったりと付いた黒い髪の後頭部がそこにはあった。

 そしてその首が、少しずつこちらの方を見ようと動いているようにKさんは感じた。


 セーターをその場に投げ出し、慌ててKさんは自室に戻った。

 戻って確かめる気になれず、朝を迎えてゴミ捨て場の方を見ないようにして出勤したが、帰宅してからも特に騒ぎは起きていないようだった。


「帰ってくると、ゴミ捨て場のゴミは回収されていました。あの首のようなものは何だったのか……そういう悪趣味なおもちゃだったのかもしれないですね」


 悪趣味なのはあんただろうと思ったが、こんな目に遭ってもKさんは趣味をやめる気はないらしい。

 彼によると最近そのゴミ捨て場に監視カメラが付いたそうだった。


「マンションの引っ越しを検討しています。内見のタイミングでゴミ捨て場も見せてもらえればいいんですけどね」


 どこまで本気かわからない口ぶりでKさんは言った。

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