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第五十八話 自分でやる

 Pさんは以前より流行りのDIYをやってみようと思った。ドゥーイットユアセルフ。自分でやるということだ。

 素人なので、まずは小さい本棚を作ろうと考えてホームセンターで木の板を買い、実家から持ってきたのこぎりで早速切ることにする。


「どうせなら素人が始めるDIYを記録として動画配信すれば、そこから広告収入も得られるんじゃないかと思いました」


 Pさんは一石二鳥と考えてカメラを設置。ベンチに乗せた木の板を切っていく様子を撮影し始めた。

 時間は夕方だったので日中の暑さは少しだけ和らいでいる。家の庭で汗をかきながらPさんは木を切り始めた。

 妻が近くで立って見ており、飼っている犬のコンボイがしゃがんでPさんの様子をうかがっていた。

 ギコギコ。

 素人らしい危なっかしい手つきでのこぎりが前後していく。横幅にして15センチほどを切るだけだが、なかなか切り離すことができずにいた。

 そこへ、急に犬のコンボイが飛びかかってきた。


「ワン、ワンワワン!」


 犬は何かに襲いかかるかのような俊敏さだ。Pさんは驚いて手元が狂った。


「あ、てっ!」


 のこぎりの刃ではないが、板の切断面のささくれだった箇所にPさんは手のひらを突き刺してしまった。血がぽたりと滴った。

 Pさんがその場にうずくまると、コンボイは何事もなかったかのように元の場所に戻り、再びしゃがんだ。妻が救急箱を持ってきた。

 このとき何が起きたのかを確かめようと、Pさんは撮影していた動画を妻と共に見返した。


「特に、変なところはないが……コンボイは何に襲いかかろうとしたんだろう」


「あっ、ちょっと待って、ここに」


 妻が画面に向かって指を指す。

 目だった。

 Pさんが切ろうとしていた木の板の上に、2つの目が並んでいた。

 動画なのではっきりとわかるが、その目はキョロキョロと左右を見回しているように思われた。

 そしてその目が、撮影しているカメラの方をはっきりと睨んだ瞬間、犬のコンボイが木の板に向かって飛びかかったのだった。


「幸い、怪我の具合もたいしたことなく、コンボイも元気です」


 Pさんは笑うが、彼のDIYの歴史はその日限りで終了してしまったとのことだった。

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