第三十六話 横から見たら
主婦のBさんは視聴者投稿のホラードキュメンタリーを観るのが好きだった。
これまでに多くの作品を観てきて、それなりに知識も得てきたつもりだったという。
そんな彼女には投稿映像に対する、ある疑問があった。
ときおり、撮影しているカメラに向かって襲いかかってくる霊がいる。そういった霊は正面から撮影しているとまさしくこちらに向かってくるようで怖いが、横から撮影したらどう映るのだろう?
霊が出てくる様子を横から撮影していたら、やはり横向きにぱっと現れて、そのまま画面の端の方へ移動していくのだろうか?
想像するとちょっと間の抜けた映像になりそうだ。
そんなことを日々考えていたが、あるとき同好の士とSNSで会話する機会があり、Bさんは疑問をぶつけてみた。
「うーん、なるほど……」
性別不明の相手はしばし考え込んだようだったが、意外とすぐに返事が来た。
「実はそういった、2方向から霊を撮影した映像を見たことがあるよ」
「えっ、どうだった?」
Bさんは興味津々で続きを待った。
「それがね、片方のカメラには霊が映ってるんだけど、別方向から撮影したカメラには霊が映っていなかったんだ」
「そうなんだ。つまり1台のカメラにしか映らないってことになるんだね」
なんとなく納得したBさん。その後、同じSNSでまた新たなホラー好きの人と会話していた。
雑談のネタとして、霊を横から撮影したらどうなるかという話題を振ってみたところ、相手も話に乗ってきてくれた。
しかしそこから先はBさんの予想していなかった内容が展開された。
「私は心霊スポットに行って、複数台のカメラで同時に撮影したことがあります」
これまた性別不詳の相手が話し始めた。
「期待通りに霊は映ったんですが……」
少しもったい付けられているような気がして、Bさんは先を促した。
「全部のカメラに向かって、同じ霊が襲いかかってきたんです。一斉に」
Bさんはそれを聞き、背筋がぞくりとしたという。その映像が残っていないのだけは残念に思ったそうだ。




