第二十九話 廃墟の能面
廃墟を探検する動画を見るのが好きだというMさん。
ホラー関係のDVDや動画投稿サイトでそうした動画をいくつも閲覧してきた。
そんな中で、通常めったに落ちていないある物が、なぜか廃墟ではよく落ちているということに気づいた。
それが『能面』である。
中でも『女』が圧倒的に多い。『般若』『翁』などもその造形がよく知られているが、廃墟に落ちているのは『女』ばかりだという。
「なぜ『女』なのか理由はわかりませんが、この面は穏やかな顔のようで裏に凶暴性を秘めていそうにも見えます」
その後、Mさんはこの面が怖くて仕方なくなったそうだ。
ある日、Mさんはいつものように新しい廃墟探検の動画を見ていた。廃寺へ向かう境内を夜に歩いているところが映し出されている。
そこで彼は気づく。道中の階段の下に『女』の面が落ちている。
撮影者達のライトが基本的には前方を照らしており、ときおり足元付近を照らす。カメラがそれに伴って下の方を映したときに、ライトの範囲外だが一瞬、面が画面内に映り込んだのだ。
動画配信者たちは全く気づいた様子がない。指摘する視聴者からのコメントも付いていないようだった。
もはや廃寺のことよりも面の方が気になったMさん。彼の期待をよそに最後まで『女』の面について触れられることなく動画は終わった。
「この動画の配信者のチャンネルですが、ある日突然削除されてしまいました。彼らがどうなったのかはわかりません」
能面が関係しているかは定かではない。




