第二十八話 謝罪動画
怪談集として発表してきた今作ですが、百話を越えそうですのでここで百物語としてまとめていくことにいたします。
それに伴い、タイトルも「百物語 厄災」と改めます。
動画配信サイトで暇つぶしにいろいろな配信者の動画を見ているというBさん。
彼はYさんという女性の動画をよく観ていた。Yさんは胸や足が見える露出の多い服装で動画配信をし、『投げ銭』と言われる類の収益を得ていたそうだ。
彼氏がいないという設定で日々の愚痴などをカメラの前で話し、視聴者からのコメントに返事したりといった配信方式を採っていた。
しかしあるときの生配信で、同じ部屋から彼女を呼ぶ男の声がしたことが発端で彼氏バレしてしまった。
後日、Yさんは生配信で視聴者に謝罪を行うことにした。カメラの前で座って神妙な顔をしたYさんが、経緯について話し始める。
「このたびは、私の軽率な行動により皆さんの信頼を裏切ってしまったことをお詫びします」
謝罪に対して、画面に表示される視聴者のコメントはさほど荒れてはいなかった。
しかし、日本語ではない言語でのコメントが入ってきた。
『no name』という名前のその人物は、Yさんのわからない言語で長文のコメントを何度もしてくる。
Yさんはいわゆる荒らし対策として、『死ね』『殺す』などといった罵詈雑言は事前に表示されないようブロックしていたが、日本語以外については無警戒だった。
謝罪が済んで、視聴者からの質問コメントに答えようとするYさん。上から順に答えていき、謎の言語のコメントの番になった。
「これは、なんて書いてあるんだろ、no nameさーん、よければ日本語で……」
Yさんがそこで止まる。
そしてそのまま真横に倒れた。
Yさんが倒れ、黒い影のようなものが上に向かって立ち上っていったようにBさんには見えた。Yさんを心配するコメントが画面に流れる。
そしてそのままブツッという音と共に、配信が終了してしまった。
5分後にYさんのアカウントが消され、彼女の動画は見ることができなくなってしまった。
「配信が終わる直前に、誰かのコメントにこうあったのが気になってるんです。『ルーン文字だ』と」
ルーン文字とは古代文字の1つで古文書などに使われていた。現代でも占いなどに使用されているが、完全に解読されてはいないという。
「Yさんが倒れたのは、何か文字で呪術をかけられたのが原因ではないかと考えています」
Bさんはあの謝罪動画を保存しておかなかったことを悔やんでいた。
今でもときおり、誰かがたまたま保存したものをネットにアップロードしていないか、期待して検索しているそうである。




