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第二十七話 トンネルで霊を呼びだして

 あることをすると霊が出現すると言われるトンネルに、Jさんは彼女と男友達の3人で訪れた。

 トンネルのちょうど真ん中の壁に目印があり、そこで柏手を3回打ち、懐中電灯の電気を消して再び点けると霊が姿を現すというものだ。

 深夜1時に山中にあるそのトンネルに3人はやってきた。


「ほとんど使われていないみたいだな」


 水はけが悪いのかトンネル内部の地面は濡れており、ところどころで水たまりができていた。

 Jさんの彼女は底を歩くのを嫌がり、トンネルの入口に停めた車の中で待つことになった。


「何かあったら、声を出して俺たちに知らせてくれよ」


「うん、わかった」


 彼女を残してJさんと友人はトンネル内部へ入っていく。

 水はトンネルの壁からも漏れているように思われた。ひび割れた壁が涙を流すように水が垂れている。

 トンネル内の照明は消えており、Jさんの持つ懐中電灯の明かりだけを頼りに2人は歩いていく。

 全長500メートルほどあり、真ん中にあるという目印を見逃さないように注意深く歩いた。目印というのは、スプレーによる落書きだ。誰かが遊び半分で描いた、ある漫画のキャラクターだという。


「おっ、これだ」


 右側の壁を見て歩いていた友人が前方にそれを見つけた。壁の落書きと、トンネルの床に真横に線が走っているのが見えた。


「じゃあ、ここでやるか」


 友人が動画投稿用にスマホのカメラを構えた。Jさんは霊を呼び出すために柏手を3回打つ。

 パンッ、パンッ、パンッ……

 トンネル内にJさんが手を叩く音が響く。


「よし、次は……」


 Jさんは持っていた懐中電灯の電気を消す。辺りが暗闇に包まれた。

 カチッ。


「あれっ、電池は変えたんだけど」


 電気が点かなくなってしまった。にわかに緊張感が高まる。

 カチッ、カチッ。

 何度かスイッチのオンオフを繰り返す。

 そしてようやく懐中電灯の電気が点いた。光がトンネルの中を照らす。

 人の輪郭を持った白いもやのようなものが、Jさんたちの前方に立っていた。


「うわっ!」


 Jさんは慌てて後ずさりし、懐中電灯を地面に向けてしまう。


「えっ、おいっ!」


 戸惑う友人の声がしたが、Jさんはそのままトンネルを元の方向へ駆けだした。

 あとから友人らしき足音もついてくる。

 トンネルを抜け、友人も少し後にトンネルから出てきた。


「おい、お前、走って逃げるなよ」


 息を切らしながら友人が言う。


「すまん。なあ、もう帰ろう」


 Jさんは彼女が待っている車へと急ぐ。

 車まで着いたが、中にいるはずの彼女の姿がない。

 ドアを開けて中を確かめ、車の周辺も探したJさんだったが、彼女の姿は消えてしまっていた。


「やっぱりか」


 友人が呟いた。


「どういうことだ?」


 詰め寄るJさん。友人は目をそらしながら言った。


「トンネルの中で、電気が点いたらお前の彼女が立ってて……こっち見て、笑ってた。ニヤッとした嫌な笑い方だった」


 友人は、Jさんも同じものを見たのだと思い込んでおり、その恋人であるJさんが逃げていったので彼女を置いていくしかないと判断したのだという。

 Jさんたちは再びトンネルの中へ戻って彼女を探したが、見つからなかった。

 現在まで、彼女の行方はわかっていない。

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