第十九話 面接の練習
就職活動中のSさんは、面接のために志望動機を話す練習を自宅で行っていた。
カメラと鏡をセットして、自分の喋っている様子を見たり後で確認したりしてブラッシュアップしていくつもりだったという。
「御社のオシャレな製品に憧れを抱き……」
喋る内容は暗記していたが、ときおりつっかえたりテンポが速くなったりしてしまう。
何度かの練習を繰り返し、カメラで撮影した動画を見返しているとSさんは違和感を覚えた。
画面に幾筋もの縦の線が入るのである。
ノイズが入っているのかとSさんは思った。縦の線は画面の上から下に向かって入り、しばらくすると上へ抜けるように消えていく。
線が生じている間にもSさんの喋る様子は線の後ろに映っている。
ある程度自分の喋り方を確認できたので、線の件は解決していないがSさんは練習を終えた。
夜になり、お風呂に入っているときに突然Sさんは気づいた。
「あれ、髪の毛じゃない?」
Sさんは背筋がゾクッとするのを感じた。
撮影中はもちろんSさん以外に誰もいなかった。
まして画面の前に誰かがいたはずもない。
Sさんはその映像を見返す気になれず、削除してしまったという。




