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第十二話 車の上に

 Oさんは心霊スポットとして知られる廃トンネルを、友人と夜に訪れたという。

 肝試しが目的だ。


 山中にあるそのトンネルに着くまでが大変だった。

 夕方に山道に入り、車のライトと大まかな住所を入れたナビを頼りにずんずんと山を登っていく。

 酒も入っていないのに2人とも不思議とテンションが高かった。


 廃トンネル付近まで着いた。

 木が生い茂っている中にわずかに道が残っており、車を停めて歩いて進む。Oさんは懐中電灯、友人はスマートフォンのライトを携えていた。

 やがてトンネルに着いた。

 だがOさんも友人も肝心なことを忘れていた。


「トンネル内に電気が点かないんですよね。廃トンネルだから当然と言えば当然ですが」


 真っ暗なトンネルを手元の明かりだけで進むが、目が利かず先がどれだけあるのかわからない。

 100メートルほど歩いた辺りで、友人の方が根を上げて来た道を戻ることにした。

 結局トンネル内では何も怪異に遭遇しなかった。いや、遭遇していても気づかなかったのかもしれない。


 2人は道を戻って停めていた車のところまで帰り着いた。

 しかしOさんはおかしなものに気づく。

 縄があった。

 首を吊るために用意されたかのように輪っかの形になった縄が、木の枝から車のボンネットの真上に垂れ下がっている。


「ひえっ、こ、こんなの、あったか?」


「いや、来たときは、気づかなかった」


 うろたえるOさんと友人。とにかく車に乗り込んで、早くそこから逃れたい気持ちでいっぱいだった。

 だが、アクセルを踏もうとしたOさんは気づいてしまう。

 フロントガラスの向こうに、足があった。

 空中から浮かんでいるように、ズボンの膝から下の足がぶらんぶらんと揺れている。

 2人は息を呑む。


「うわっ、うわああっ」


 慌てて車をバックさせたOさん。まっすぐ進むと足がフロントガラスにぶち当たる。それは絶対に避けたかった。

 必死で切り返し、方向を変えてから車をスタートさせた。

 友人は目をつぶって手を合わせ、念仏を唱え続けていた。


 無言で車を走らせ続け、街まで帰ることができた。

 Oさんも友人も、汗でびっしょりだったという。

 その後2人が会っても、あのトンネルについて話題に出すことはなかった。

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