ファミリーテール
月明かりのまぶしい夜。
気がつくと私は、異世界の城の中にいた。
私は神楽なぎ。5人家族の長女で、母は中学のときに他界し、今は高校生の私とお父さんで家事をきりもりしている。
生活は決して良いものとは言えなかったが、家族皆で過ごす時間はとても充実していて、このままずっと同じ日々が続くのだろうと思っていた、あの時までは。
夕食の献立を考えながら、買い物にでていた。一通り買い終わって店を出てから、異変に気づいた。少し遠くで、煙のでている家があった。私はイヤな予感を感じて、走った。その予感は、悲しいことに的中していた。もえていたのは、私の家だった。まだ中には、兄弟たちやお父さんがいたはず。このままでは、皆が死んでしまう。私は無我夢中で灼熱の炎火
の中へ入っていった。案の定、私はそこで酸素が足りなくなりになり、意識を失った。
そして、今に至る。辺りを見回すと、王さまや王女らしい人がいて、立派な城の中にいたわけだ。月明かりが差し込んでいる。どうやら外は夜らしい。
「異世界からの召喚勇者よ、そなたに頼みがあるぜよ。」
王さまは言った。しかし、その視線は私には向いていなかった。王さまの視線の先に男がいた。どうやら私は暗闇で気付けていなかったらしい。その男は言った。
「ええ、何なりと。」
私は驚いた。とても聞き覚えのある声だったからだ。そして、月明かりに照らされ顔が見えたことで、確信に変わった。背が高く、華奢な顔立ち。まごうことなき、私の弟の海斗だった。海斗は私をみて、驚いた顔でいった。
「あ、姉貴?!姉貴も来てたのかよ!」
「何事ぜよ、その女は知り合いか?勇者よ」
王の問いに、自分の姉だと答える海斗。私がいることに気付き、王さまは少し驚いている様子だったので、きっとわたしの存在にすら気づいていなかったのだろう。
「海斗、家族の皆ももしかしてここに飛ばされているの?」
私の問いに海斗は首をふり、
「いや、おれはみてねぇ。おれは3日前、ここにとばされてから一通りこの国の中を探してたが見つからなかった。考えられる可能性は異世界に飛ばされていないか、ワンチャンここじゃない国に飛ばされてるかもしれないってこと。」
「え?じゃあ他の国にとばされてたらやばくない?」
「ああ。俺はこの国の召喚勇者だから、敵対することになっちまう。」
悲しそうに海斗が言うと、追い討ちをかけるように王さまがいった。
「確かに、今は世界情勢がよろしくないぜよな。どの国も召喚勇者をよびだして軍隊にして国を強化してるぜよ。召喚されて勇者の素質があれば九分九厘戦場行きぜよね。」
話を聞いていて、なぎは気がついた。
「と言うことは、わたしも召喚勇者の可能性が!?戦場にいくの?」
「いや、お前は全く魔力を感じないぜよ。召喚勇者どころか、スライム以下の価値ぜよ。」