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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第六章 相容れぬ壁の向こう ~うずく尊厳の声~
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第83話 適材適所

「っこらしょい!」


 カン、カンとつるはしの音が響きわたっている。このゲームにおける採掘はなぜか現実世界の身体能力が適用されるらしく、佳果と楓也は汗をぬぐいながらバテ気味に一息ついた。


「こりゃ重労働だな……」


「本当だね……ぼく、力仕事は苦手だからけっこうこたえるよ」


「ふっ、これに関してはうぬらのほうがおとっているのだな。シムルの小僧を見てみよ」


 ぼやいていた二人は顔を上げ、ノーストの指さす方向を確認する。そこには小さな身体で、おとな数人分のはたらきを見せるシムルがいた。どうやら彼にはゲーム内のステータスが反映されているようで、豆腐を切るかのごとく岩を削ってゆく。


「すごいなぁシムルは。元々この仕事を手伝っていたのもあるんだろうけど、掘り方は丁寧だし、要領もいいし……もしぼくらにステータスがあったとしても、きっとああはいかないだろうね」


「だな……つーかこれ、ぶっちゃけ俺らいる意味なくねーか?」


 脱力する佳果。

 現在、他のメンツもそれぞれが仕事に従事している。ノーストは力がありすぎるせいで鉱物を壊してしまうため、採掘には参加できない。代わりにフィラクタリウムが放つ特有の波動を感じ取れるということで、どこを掘ればいいのか指示を出すかかりを担当中だ。


 女性陣のアーリア、ヴェリス、零子は掘り出された鉱物を近くのトロッコまで運搬する作業をしているものの、やはりヴェリス以外は終始ひーこら言っている。


「ふぐううぅ、これも奉仕のためぇ……!」


「はあ、はあ……最近ジム通いをサボっていたのがたたりましたわね……」


「だいじょぶ? 二人とも」


 心配そうに覗き込むヴェリス。残念ながら、この場における適任者はシムルと彼女、そしてノーストだけのようだ。彼らの様子を見ていたウーは、気まぐれにアルパカの姿に変身して言った。


「んー。ここは三人に任せて、他のみんなは別々に動いたほうがいいかもね。"法界ほっかいの箱舟"を造るために必要なものは、あと二つあることだし」


「え、そうなの!?」


「うん。みんなで順番にやっていったほうがいいだろうって思ったんだけどさ。このぶんなら適材適所にしたほうが良さそう」


「おいおい、そういうのは先に言ってくれよ……で、あと二つってのは?」


「フィラクタリウムのついとなるものに"夜の水月すいげつ"ってアイテムがあるんだ。これは一つあれば足りるよ。あとは船の設計図だね」


 ウーによると、夜の水月はヴェリスと出会った廃村のずっと奥にある"冥土めいどの湖畔"という場所に存在しているそうだ。レベル無視の攻撃手段をもっている凶悪な魔獣がたくさん巣食すくっており、隠密おんみつけた少数精鋭でなければ調達は難しいとのことである。この説明を聞いて、真っ先に名乗りを上げたのは楓也だった。


「じゃあそこはぼくが一人で行ってくるよ」


「お前だけで……? さすがにそりゃ心配だぜ」


「ありがとう。でもこういうのはむしろ、単独行動のほうが理にかなっている部分が多いんだ。こっちにはシムルのくれた魔除け(フィラクタリウム)もあるわけだし、魔獣が相手なら万一やられても痛くない。だから信じて待っててくれると嬉しいな」


「……わかった。けど、ぜってぇ無理すんなよ?」


「楓也ちゃん。念のためチャットで定期的にメッセージを送ってください。もし連絡が途絶えた場合は、わたくしたちも救援にまいります。それでいいですわね?」


「ええ、わかりました」


「……ではそちらは楓也さんのお言葉に甘えるとして。ウーちゃん、設計図のほうは一体どちらにあるんですか?」


 零子が尋ねる。すると意外な答えが返ってきた。


「現実世界にある神社だよ」


「は……現実世界だぁ?」「えっ……現実世界!?」


「あはは、ヨッちゃんもレイちゃんもいいリアクション! 紆余うよ曲折(きょくせつ)あったんだろうねぇ……今は東京の端っこに流れついてるみたい」


 精霊の口から東京という単語が出てくる不思議。とはいえ、佳果たちはすでに"アスター王国の勲章"を使ってあちらとこちらの通信を体験している上、そもそも旅の目的が夕鈴の救済であるため、双方の世界をつなぐ要素があることに対して比較的おどろきは少なかった。だが零子にとってゲームの枠を飛び越える話は珍しいようで、彼女は興奮気味に言った。


「ほ、ほんとですか! ゲーム内で使うものの設計図が、現実世界にあるってことですよね!?」


「そうだよ~。あんまり詳しくは言えないんだけど、アスターソウルと現実世界は不即ふそく不離(ふり)っていうのかな。まったく無関係ってわけじゃないから」


「…………~~~~っ!」


 零子は両手でほほをおおって目をぎゅっと閉じ、とても嬉しそうな表情をしている。その様子は明らかに尋常ではなく、佳果は何かを察すると、楓也、アーリアに目配せして静かにうなずいた。彼らはえて、深く言及せずに話を続ける。


「ほんと、つくづくとんでもねぇよなこのゲームは。しっかし東京ってなると、必然的に俺が行くかたちになるか」


「あ……佳果さんと楓也さんは、東京都にお住まいの高校生なんでしたっけ」


「そうなんですよ。ちなみに和迩わにさんは……? 差し支えなければで大丈夫ですけど」


「あ~、あたしは福岡なのでちょっと無理そうですね……アーリアお姉さまは?」


「わたくしは北海道ですの。……ここはやはり彼を頼るべきでしょう。佳果さん、お手数ですがお願いできますか?」


「ああ、任せてくれ」


「そっちもがんばれ、阿岸君!」「よろしくお願いします、佳果さん!」


「無事に決まったみたいだね。レイちゃんとアーちゃんは、そうだなぁ……村の方に戻って、フィラクタリウム以外の鉱物で"加工"の熟練度を上げておくといいんじゃない? あのプリーヴって人に目利きしてもらえば、訳ありの部分とか融通してもらえるかもしれないよ?」


「まあ、それは妙案ですわね! ではさっそく、行動開始とまいりましょうか」


 役割分担が決まった陽だまりの風。

 彼らはいったん解散し、それぞれの目的を果たすべく動き始める。

お読みいただきありがとうございます。

ヴェリスとノーストは黒の問題があるため

基本的に距離をとって作業しています。


※よろしければ下の★マークを1つでも

 押していただけますと励みになります。

 たまのpt変動はやっぱり

 一喜一憂してしまいますね……。

 めけずに頑張ります!

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