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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第六章 相容れぬ壁の向こう ~うずく尊厳の声~
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第81話 帰郷

("法界ほっかい箱舟はこぶね"か……)


 佳果が凛々(りり)しい顔で思案している。

 ウーの助言によって明らかになった魔境の存在と、そこへ行くために必要な船――正式名称を法界の箱舟というらしいが、この船を造るには大量のフィラクタリウムが必要になるそうだ。そこで一同は、シムルの故郷であるラムスの村を訪れていた。


「お~シムル! 兄ちゃんたちも!」「おかえりなさい!」


「ただいま!」


 シムルの両親であるゼイアとナノが出迎えてくれる。あれからそこまで月日は経っていないが、村はすっかり活気を取り戻しており、道行く人々はみんな笑顔だ。

 一通りのあいさつを済ませた彼らは、さっそく本題に入った。


「そんで、今日はどうしたんだ? 知らねぇ顔も混じっているようだが」


「父ちゃん。実は折り入って相談があるんだけどさ……おれたちにフィラクタリウムを分けて欲しいんだ」


「フィラクタリウムを……?」


「あらあら、またみなさんにプレゼントをつくってさしあげるの?」


「いや、今回はそういうのじゃなくて――」


 シムルがあらましを伝える。ゼイアはうんうんと頷きながら、両腕を組んで鉱山の方角を見た。彼はここでの採掘業における責任者の立場だ。身内とはいえ、鉱物資源を利用するならば必ず了承を得なければならない。


「――ってわけなんだよ。たぶん、莫大ばくだいな量が必要になっちゃうと思う。……ダメかな」


「がはは、恩人を前にしてダメってこたぁねーよ!」


「ええ、わたし達は家族なんですから。困ったときは助け合って当然です」


「ほ、ほんと!? ありがとう父ちゃん、母ちゃん!」


 抱き合う親子を見て、ノーストと零子が目を細める。


(恩人か……あやつが生きていたら、吾らもまたこのような関係を築けたのであろうか。……いや、たらればなど馬鹿馬鹿しい。我ながら柄にもない思考をしたものだ)


(とっても素敵な親御おやごさんです! ……あたしも、いつか絶対……!)


 人知れずため息を押し殺す彼と、心でガッツポーズをとる彼女。

 ウーは空中から、そんな二人をじっと見つめていた。


(レイちゃんもこの魔人さんも、色々と抱えているんだなぁ。でもすでに陽だまりの風の影響を色濃く受け始めている……主様ぬしさま、吾輩なんだかこれからのことが楽しみになってまいりました!)


 後方でそれぞれモノローグを展開する三名。

 つゆ知らず、佳果はゼイアたちにお礼を言った。


「すんません、マジで助かります」


「いいってことよ! ただなあ、俺としちゃ一向に構わないんだが……偽の部隊(あいつら)に占領される前、ラムスは元々プリーヴって商人に採れたもんをおろしててな。あの人に何も言わず、俺の一存でぜんぶ決めちまうのはちょっと乱暴かもしれねぇ」


「プリーヴさん、ちょうどいま宿屋のほうにいらしてますから。旦那を使ってくださって構いませんので、お手数ですが彼にも交渉していただければと存じます」


「わかりましたわ。では、またあとでゆっくりお喋りしましょうね、ナノさん!」


「はい、ぜひ!」


 手を繋ぎ、笑い合うアーリアとナノ。二人はすっかり仲良しのようだ。

 そして一行は宿屋にいるという商人、プリーヴへ会いに行く。

お読みいただきありがとうございます。

シムルのお父さんの名前は、この話が初出です。


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