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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第六章 相容れぬ壁の向こう ~うずく尊厳の声~
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第76話 お嬢の本気

「ふっ! やぁっ!」


 アーリアが流れるような連撃を繰り出す。一撃ごとに、その手に握られている武器はハンマー、剣、げきむち、鉄球と目まぐるしく変化してゆく。


(瞬間的な得物えものの換装……! しかも小手先こてさきでなく、われの挙動を見て最適解を選び続けているな!)


 間合いとリーチの急変動。よほど各種武器の扱いにけていなければ、かえって隙が生まれるであろう高等技術。だがアーリアはそれを自在に操り、踊るような華やかさをって攻撃の手をゆるめる気配がなかった。このままでは彼女に翻弄ほんろうされると危惧きぐしたノーストは、大きくバックジャンプして距離をとった。


「うふふ、そちらは足元にご注意ですわよ」


「!?」


 着地した瞬間、地面に魔法陣が浮かび上がる。硬直を狙い澄ましたかのごとく発動したその魔法は、一般的に使用されているようなものではなかった。ノーストは咄嗟とっさに効果を判別することができず、甘んじてそれを受けるかたちとなってしまう。しかしピリリとした微弱な感覚が全身を駆け巡るばかりで、特に害はない。


(……麻痺まひの類か? だがお互い、このレベル帯で状態異常魔法など通用するはずが――)


 そう思った瞬間、数十メートル先でロッドとワンドを真上へ放り投げるアーリアの姿が目に入る。二つの杖はまるで生きているようにくるくると複雑な軌道を描いて上昇し、その合間に弓矢を構えた彼女は、追撃で乱れ打ちを仕掛けてきた。


(魔法陣は吾の気を逸らすためのハッタリだったようだな)


 様々なコースから飛んでくる矢は一本一本、異なる属性が付与されていた。さらにどれも吸い寄せられるように急所へと超スピードで向かってくるゆえ、受けきれないと即断したノーストは障壁を展開し、それらをすべてはじき返して不敵に笑った。


「堂にった情け無用の絶技、見逸みそれたぞ!」


「温存してひざをつかせられるほど、あなたは生半可なかたではないでしょうから」


「慎重な娘だ……だがこのバリアはあらゆる遠距離攻撃を無効化する。さて、今度は吾からまい――」


「いいえ、もうひと押しいたします!」


「ぬ」


 落ちてくるロッドとワンドを華麗にキャッチするアーリア。頭上の空間には複数の魔法陣ができ上がっており、刹那せつな強化魔法(・・・・)の雨がノーストに向かって降りそそいだ。彼の張った障壁はあくまでも攻撃を防ぐものであるため、これを無効化することはできない。次々と立ちのぼるバフのエフェクトに、ノーストは顔をしかめている。


(敵に塩を送るつもりか? それとも……)


「そろそろですわね」


「っ……ぐぅ!?」


 急激に全身が痺れ、抵抗できずに膝をつく。アーリアがゆっくりと歩み寄ってくるさなか、彼はいったい何が起きたのか状況の理解に努めた。


(吾の強化が一定の水準に達したところで麻痺が発動したようだが、どういうカラクリだ? 先ほどハッタリと見せかけた魔法の効果が、今頃になってあらわれたとみるべきか……)


 すぐそばまでやってきた彼女はおもむろに刀を装備して、少し遠慮気味(ぎみ)みねの側をノーストの首筋に当てた。そうして困ったように微笑ほほえむ。


「勝負あり……ということでよろしいでしょうか」


「ああ。レベル差を跳ね除け、よくぞ吾を完封したものだ。して、この麻痺は?」


「……先ほどの強化魔法ですが、あなたのステータスを操作する目的で使用したんですの。そして特定の数値でのみ必中となる状態異常魔法を用いて、強制的にしびれていただいた次第です」


「特定の数値……そうか、うぬは古代魔法を有しているのだな」


「あら、ご存知で?」


「いや、ほとんど知らぬに等しい。……ふっ、逃げ場のない多彩な攻め口に加えて、古代魔法まで持ち出してくるとはな。道理で敵わぬわけだ」


 千花繚乱の時代、アーリアは「初心者支援団体(ベラーター)としてふさわしい人間になるために」と高難度のダンジョン巡りを行い、様々な装備や魔法、知識、経験を得る機会に恵まれた。その結果彼女が達したのは、280レベルの魔人でさえ唸らせるほどの領域だったようだ。

お読みいただきありがとうございます。

久しぶりに戦闘全振りの回になりました。


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