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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第六章 相容れぬ壁の向こう ~うずく尊厳の声~
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第70話 クエスト受注

「うひゃ~、いっぱいあるなぁ」


 リストを見て驚くシムル。アスター城下町にあるこの掲示板は、半径10メートル以内まで近づいてステータスウィンドウを開くと、"クエスト情報"の項目が出現して閲覧えつらんできるようになる仕様だ。現在の新着案件はざっと50件ほどあり、総数はなんと数千件にもおよんでいる。


「この一つ一つに、ご依頼(ぬし)がいるわけですわね」


「なんか途方もねぇな」


「さて皆様。先にけるべき内容についていくつか例を挙げておきますので、ご参考になさってください」


 零子がまず最初に言及したのは「好きになった人が既婚者だったから、ぜひとも破局させて欲しい」という依頼。なんでも、自分以外になびく存在がいるのがそもそも許せないらしい。


「おいおい……こんなのもあんのか」


「この依頼ですが、仮にその意中のかたが悪い人に騙されているとか、嫌がっていたところを無理やり結婚させられたとか、何か客観的な理由や証拠があるなら一考の余地もあるでしょう。しかし詳細を読むかぎり、依頼主は相手方あいてかたの関係を壊したいだけみたいですので……当然、論外です」


「けっこん……はきょく……?」


「あ、あああおれが説明するぞ! たとえばお前と兄ちゃんたちを引き離そうってやつがいたとするだろ? そんなやつに協力するのってどう思うよ?」


「……それはイヤ」


「だろ~?」


(シムル、知識面でもヴェリスを守っているんだね……)


 楓也が苦笑するなか、零子は次に「課題のレポートを代わりに書いて欲しい」という旨の依頼に言及した。これはおそらく大学生プレイヤーによる投稿だろう。


「おー、わざわざ遠回り(・・・)するなんて見上げた根性だね~」


「ウーちゃん、これは怠惰たいだなだけですから感心するところではありません!」


「ふむむ?」


「本来自分でやるべきことを放棄して他力本願に走っているのに、それをとしてしまっては依頼主の糧になりませんから。"レポートを書くための取材に付き合え"とかならまだわかりますけどね」


「なるほど~。でもレイちゃん、この人が怠――もががっ!?」


「うふふ。ウーちゃんは純粋で愛らしいですわね! それで、他にも何か例はあるのでしょうか」


(……アーリアさん?)


「ん~そうですねぇ……ああ、こういうのもダメです」


 彼女が最後に挙げた例は、けない商品に対して「依頼主が用意した肯定的なレビューをつけてくれ」というもの。いわゆるサクラ行為だ。


「これは明確にズルですもんね」


「ええ。……とまあ、皆様の感性ならばおよそ間違うこともないと思いますが、滝のほうで説明した"支援"を念頭に、良さそうな依頼を選んでみてください」



 それから約10分後。それぞれ気になった案件を持ち寄って議論を行なったところ、最終的に残ったのは至ってシンプルな依頼内容だった。零子があごに手を当てて吟味している。


「強力なモンスターに襲われて困っている農村への救援、ですか」


「どうやら王国軍でも手こずってるみたいだぜ」


「人的被害は少ないものの、食料の略奪が相次いでいて実質的に生活がおびやかされているとも書いてありますね」


「達成期限は本日の24時……緊急性が高い案件といえますし、わたくしたちは全員それなりに武の心得こころえもあります。適任だと思いますわ」


「……おなかすくのは、とても苦しいことだから。わたしも力になってあげたいな」


(ヴェリス……)


 ラムス滞在時に彼女と交わした、過去について話すという約束。それはともに過ごした日々のなかで既に果たされており、シムルには今ヴェリスがどのような気持ちでいるのか、少しわかるような気がした。


「零子姉ちゃん、おれもこの依頼がいいと思う」


「吾輩はみんなの決定を尊重するよ~」


「……満場一致のようですね。あたしも案件自体はふさわしいものだと判断します。問題はこの"セパーラ"という村がとても遠いところにある点ですが……」


「ヴァルムの逆サイドってなると、こっからだいたい三時間くらいだな。今は17時だから……のんきに移動してたら、残り四時間程度でクリアしねぇといけなくなるのか」


「うーん、ちょっと厳しいかもね……」


「それなら吾輩に乗っていけばいいさ」


 そう言って、ウーが巨大な鳥に姿を変えた。

お読みいただきありがとうございます。

珍しくゲームっぽい展開になりました。


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