第65話 内なる声
(ぽ~)
エレブナの町はずれで虚空を見つめるヴェリス。彼女が練習しているこの"超感覚"の全解放は、まだまだ佳果の集中状態を介さねば到達することも、制御することも叶わない。しかし初回と比べれば持続時間はわずかに伸びているようで、佳果の集中が途切れても、ヴェリスの瞳は宇宙のままだった。
(数回の練習で成長するなんて、さすがはヴェリスだな。おれも早いとこ兄ちゃんから免許皆伝もらわないと……)
「佳果さん、お疲れ様でした!」
「おう。とりあえず、これでエリアⅦへ移動するための手がかりが掴めりゃいいんだが」
フルーカの助言どおり、ヴェリスは超感覚と並行して魂の鑑定を行っている。視るべきは、これから自分たちが向かうべき場所についてだ。
(わたしが黄色、佳果が緑。楓也は赤と青で、シムルはオレンジだね。みんな水みたいな感じだけど……どうやったら、アーリアみたいにきらきらになれるのかな)
エリアⅨにいるアーリアは、ほんのりと紫色に輝く光の魂をもっていた。おそらくⅦ、Ⅷと移動してゆくにつれ、あの状態に近づくことになるのだろう。
(……前と同じように、光をたべてみよう)
世界の光とつながり、ヴェリスが各々の魂を照らしてみる。浮かび上がった黒いモヤのさらに奥――不純物のごとく濁りが発生している部分をさぐると、内なる声が木霊した。
認められたい。与えたい。これは自分の魂。
辿り着きたい。救いたい。これは佳果の魂。
気づかせたい。教えたい。これは楓也の魂。
成し遂げたい。支えたい。これはシムルの魂。
差し出したい。導きたい。これはアーリアの魂。
「ぷはっ」
超感覚が解け、ヴェリスが息を吐く。
深呼吸する彼女の背中をさすって、アーリアは心配そうに言った。
「大丈夫ですか? わたくしにはあなたと同じものを見ることはできませんが……暗い部分を覗くということは、おそらく相応の黒にも触れているのでしょう?」
「……ヴェリス自身が、それはこわいものだって言ってましたもんね」
「えへへ、へいきへいき。おばあちゃんに何も教わらず触ってたら、大変だったかもしれないけど」
(黒か……やっぱ俺たちが京都で遭遇した、あのやべぇ存在も関係あんのかな。チャロは『邪魔そのもの』だとか言っていたが)
「しっかし、超感覚ってのは夕鈴っていう姉ちゃんが持ってた力なんだろ? そもそもの話、どうしてヴェリスにも発現したんだ?」
「そりゃ未だに謎の部分だな。ただ……夕鈴が目覚めた理由なら知ってるぜ。もしかすると、同じなのかもしれねぇけど」
「そういえばまだ聞いたことなかったね、押垂さんに超感覚がそなわっていた理由」
「……佳果さん、無理に話す必要はありませんのよ?」
「いや、ちょうどいい機会だ。ヴェリスから鑑定結果を聞く前に、休憩がてら話しておくとするぜ。あいつが目覚めたのは……俺が原因だったんだよ」
お読みいただきありがとうございます。
キリの良いところで区切った結果
今回は短めになってしまいました。
次回、超感覚について少し掘り下げます。
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